日本のゴルフトーナメント会場で、とても鮮やかな景色を見ることができた。今年もアジアで唯一開催される米国男子ツアー「ベイカレントクラシック」が日本で開催され、10月11日に閉幕。筆者は月曜日から会場で取材を続けたが、そこで連日、目にしてきた光景は胸が高鳴るものばかりだった。
今大会は、プロアマ戦が行われた水曜日を除き、月曜日から日曜日までの6日間が有観客で開催された。月曜日の練習日から会場には多くのギャラリーが訪れ、松山英樹だけでなく、昨年覇者のザンダー・シャウフェレや、人気選手のジョーダン・スピース(ともに米国)らの練習ラウンドに帯同する姿も見られた。普段はなかなか目にすることのできないスターたちの練習風景を、スマートフォンに収めるファンも多い。
なかでも印象的だったのが、初日から最終日までの4日間、松山の組を大勢のファンが追いかける光景だ。18ホールを通して、コースには多くのギャラリーが帯同。筆者も毎日その様子を見ていたが、松山の一打、一打に、見ている側も一体になっているかのような声を上げ、体を動かす。惜しくもパットを外して松山が悔しがれば、ファンも悔しがる。バーディやイーグルを決めれば、ライブ会場さながらの大歓声が沸き起こった。こうした光景は、今回に限らず、これまで日本で開催された米ツアーでも見られてきたものだ。
松山自身も、この大会を「楽しい」と感じている。そこには、日本のファンの前でプレーできる喜びがある。「たくさんの方の前で、特に日本人の方が来てくれて、そのなかでできるのはうれしいです。(海外開催の米ツアーでは)僕の組が一番多いことはまずあり得ない。そのなかで、ここは特別なので、うれしいなと思います」。ホールアウト後には、大行列をつくるファンに、サインなどの対応を惜しまなかった。その姿からは、声援を送ってくれる人たちへの感謝も伝わってくる。
そして、日本のファンへの敬意を示したのは松山だけではない。海外から参戦した選手たちも、ギャラリーの熱気や温かさに触れ、その魅力を口にした。今大会で優勝した24歳のマイケル・ブレナン(米国)は、初めて訪れた日本の印象をこう語った。「ギャラリーは最高で、とても温かく応援してくれた。初めての日本だけど、とても歓迎されていると感じている。ギャラリーのゴルフへの理解度が非常に高く、良いショットを打つと拍手してくれる。グリーンが見えないところからショットを打った時でも、拍手の大きさでどれだけ良いショットだったかが分かった。いつもそうとは限らないけど、そうなったときに反応してくれるのはうれしいことだ」
優勝争いを演じたアダム・スコット(オーストラリア)も、日本のファンへの思いを口にしていた。「何年も日本でプレーしているが、一番印象的なのは熱意を持ったファンのみんな。感謝しているし、毎回とても楽しみ。日本の文化に触れることも満喫している。普段のツアーとは少し違う部分もあるので、この1週間が楽しみ」。日本の文化を満喫していたのは、スピースも同じだ。開催前の日曜日に来日し、火曜日には「すでに2キロくらい太ってしまった。食べるのを止められない」と笑う。「ゴルフ場の外でもみなさん優しいし、食事も美味しいし、とてもキレイ」と敬意を口にする。米ツアー通算6勝のマックス・ホーマ(米国)も、「(日本は)本当に素晴らしい。妻も話していたが、コースを歩いているだけでもそれを感じる。これだけ多くのファンが会場に足を運んでくれ、まるでメジャー大会のような雰囲気で、最高だ」と驚きを表現した。
選手たちの言葉から浮かび上がるのは、単に観客が多いということだけではない。ゴルフを深く理解し、良いプレーには惜しみない拍手を送り、選手を温かく迎える。そうした日本のファンの姿勢が、海外選手たちにも確かに伝わっていた。
大会を盛り上げたのは、コース上の熱戦だけではない。来場者がゴルフ観戦以外でも楽しめる企画が数多く用意されていたことも、今大会の特徴だった。その一つが、2日目の午後5時30分から行われた、神奈川県出身の4人組レゲエグループ『湘南乃風』によるライブだ。ゴルフ好きとして知られるRED RICE(レッドライス)は、ライブ中にこう語った。「こんな素晴らしい大会で(ライブを)やるだけでもすごいのに、最後に俺らみたいなもんに音楽を添えさせていただいて、常に新たな挑戦をし続けるその姿勢に、本当にゴルフへの愛、リスペクトを感じてます」。これは、ゴルフファンだけでなく、これまでゴルフに触れる機会がなかった人にも大会を知ってもらい、会場に足を運んでもらうための仕掛けでもあった。PGAツアーのアジア太平洋地域社長を務めるクリス・リー氏は、今回のようなイベントを企画した理由について、次のように説明した。「スポンサーのベイカレントと協議し、熱心なコアファンだけでなく、これまでゴルフに触れる機会のなかった層を会場に呼び込み、ゴルフの素晴らしさに触れてもらう戦略をとった」。さらに3日目は、花火大会も開催された。
大会から公式なギャラリー数の発表はなかったものの、3日目終了時点で、リー氏からは「ファンの皆様の熱いご支援に深く感謝する。すでに昨年の動員実績を上回っている」という話があった。世界トップクラスの選手たちが集う舞台があり、その魅力を存分に味わおうとコースに足を運ぶギャラリーがいる。そして大会側はゴルフの裾野を広げようと新たな企画に挑戦した。さまざまな人たちの思いが重なり、この1週間は熱気に包まれた。天候にも恵まれた大会だったが、何よりも印象に残ったのは、選手のプレーに沸き立つギャラリーの姿と、国や言葉の違いを越えてゴルフを通じて気持ちがつながる瞬間だった。最終18番グリーン周辺に広がった、あの鮮やかな景色は、忘れられない。(文・高木彩音)
<ゴルフ情報ALBA Net>




