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苦しんだ女王に戻った“一筋” 佐久間朱莉、6.5メートルに見えた完全復調【現地記者コラム】

最終日の15番パー5。2位の神谷そらに2打差をつけていた佐久間朱莉は、ラフから果敢に2オンを狙った。追われる立場でも攻めの姿勢を崩さなかったが、ボールは無情にも池へ。それでも、打ち直しの4打目をピンから約6.5メートルにつけると、やや長いパーパットをカップの真ん中から沈めた。パットに苦戦していた中盤戦を感じさせない鮮やかなパーセーブ。復調ぶりを印象づける象徴的な一打となった。

【写真】上から見たら“B” 佐久間を支える愛用パター

今季は開幕戦で勝利すると、続く2戦も2位に入り、2年連続女王への道を盤石なものにしているように見えた。ところが、中盤戦で思わぬ足踏み。その大きな要因となったのがパッティングだった。6月の「ニチレイレディス」で約9カ月ぶりの予選落ちを喫すると、その3戦後の「北海道meijiカップ」でも予選落ち。女王に“異常事態”が起きていた。北海道meijiカップの戦いを終えた直後に取材した際には、「1つでも2つでも入ってくれれば流れは変わってくる。ほぼメンタルだと思います」と明かしていた。そん状況を何とか打開しようと、試行錯誤を重ねた。練習時間の多くをパッティングに費やし、本人が「5円玉をつけてブラブラするやつ」と表現する、糸の先にワッシャーを付けた器具をパターシャフトに取り付け、ストロークを整えた。パットの距離の測り方も変えた。これまではおおよその距離を「○メートル」と記していたが、現在は歩測して「○ヤード」と記録。どの距離を、どんなラインで打ったのかを後から振り返りやすくするための工夫だった。さらに、2021年にプロテストに合格した際に使用していたというピンの“B型”を再びバッグイン。「タッチが出しやすいクラブなので、信頼している」と、原点に立ち返るような選択もした。こうした試行錯誤が結果につながったのが「ニトリレディス」だった。19試合ぶり、自身最長のブランクを経て優勝し、再び頂点に立った。そして今大会でも、その復調ぶりを印象づける場面が待っていた。

冒頭の15番に話を戻そう。神谷とは2打差がついていたにもかかわらず、ラフから3番ウッドを握った。刻んでもいい場面だったが、「(神谷)そらがやっぱりいいショットを打ってイーグル取れる所っていうのもあったので」と、キャディに狙ってもいいかと直談判しての判断だった。打ち直しの4打目で残した距離は約6.5メートル。この日は何度もその距離を沈めていたとはいえ、首位の座を明け渡しかねない状況。パーセーブは簡単ではないだろうと筆者は見ていた。ところが、そんな予想を吹き飛ばすようなきれいな転がりで、パーパットをカップの真ん中からねじ込んだ。さらに、プレーオフで残した約1.5メートルのパーパットも、危なげなく沈めた。クラブをゆっくり振り上げてからのキレのあるダウンスイングは、飛んで、そしてピンに向かっていく。ショットは申し分ない。あとはカップへ向かう“一筋”が課題だった。「ショット自体は本当に優勝争いができるくらいの調子」と北海道meijiカップ後に話していたが、その言葉通り、ショットの状態は高い水準を保っていた。「年内にもう1回勝てたらいいな」。中盤戦では、そんなことも頭によぎったという。それでも、佐久間は自らの手で不調を抜け出した。うまくいかない理由を探し、試して、また変える。その積み重ねが、ニトリレディスでの優勝につながり、今大会でも再び勝利を引き寄せた。思わぬ足踏みをしている間に、海外メジャー「AIG女子オープン」(全英)を制した桑木志帆にメルセデス・ランキングで大きくリードを許した。その差を詰めるのは簡単なことではない。それでも、中盤戦に苦しんだ女王が、もう一度勝てるところまで戻ってきたことは間違いない。15番で沈めた6.5メートルのパーパットは、その復活を象徴する一打だった。苦しみながらも、自分で探し続けた“一筋”を、今度はしっかりカップの中へと通してみせた。残りのシーズン、どこまで追い上げるのか。再び女王争いを面白くするだけの強さをはっきりと示した。(文・齊藤啓介)

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