<日本女子オープン 最終日◇5日◇チェリーヒルズゴルフクラブ(兵庫県)◇6616ヤード・パー72>優勝を決めた瞬間、堀琴音の目に、その戦いを見守っていてくれた最愛の人の姿が目に飛び込んできた。グリーンサイドにいたのは、昨年12月25日に結婚した夫の高坂佳祐さんだ。日本一になると、抱擁し、喜びを分かち合うことができた。「優勝した時には絶対に自分がいて、ちゃんと優勝カップと一緒に2ショット写真を撮りたいと主人に言われていました」。会見の席では、穏やかな表情でそんな“夫婦の約束”も明かした。
2人は知人の紹介で知り合い、2021年のクリスマスに交際がスタート。その3年後の記念日に婚姻届を提出した。お互いを“こっちゃん”、“けいちゃん”と呼び合っている。「すごく応援してくれている。私はいつも、日曜日や月曜日くらいしか家にいない。普通の仕事ではないと思うけど、それを納得したうえで、結婚してくれた。実際にしっかり応援してくれて、本当にありがたい存在ですし、心強いなと思います」。佳祐さんは、堀との交際後にゴルフも始め、腕前は現在ベスト130ほど。妻の仕事を理解しようという思いも強い。ただ一般の会社員のため、頻繁に応援に訪れることはできない。それでも妻が最終日を首位で迎え、日本一に王手をかけた日は、朝、新幹線に乗りこみ、自宅のある都内から兵庫県にかけつけた。「ドキドキしていました。楽しく4日間できればいいと思っていました。お疲れ様と言いたいですね」とは佳祐さん。一緒にラウンドについて、声援を送った。堀は応援にかけつけることは聞いていたが、多くのギャラリーがついた最終日最終組ということもあり、その姿を見つけることができなかったという。「正直どこにいたのか分からなくて…来るって言ってたから、来たのかなって。まぁ、でもいるのかな、いるんだろうなと思いながら」。そしてようやく見つけたのが、最後の18番ホールだった。優勝会見で、堀がひときわドギマギとした場面がある。夫が「ミスしたり、嫌なことは家には持ち込まない。やさしいし、すごくいい奥さんです」と話していたことを、記者から聞いた時だ。これには「ほんとですか?」と身を乗り出し“逆質問”。「日曜日に帰ってきても疲れて何もできないことがある。正直、奥さんらしいことを何もしてあげられてないなと思う。だから『いい奥さん』と言われて…心は動揺しております」。それでも最後は「うれしいですね」と言って、満面の笑みを見せた。結婚した時、堀は「私の誕生日が3月3日で、交際3年で結婚。自分にとって3は縁がある数字だと思っているので、絶対にあと1つは勝ちたい」と話してもいた。通算3勝目は、かつて悲劇も味わった“因縁”の日本女子オープンになった。ちなみにこれが2022年3月の「Tポイント×ENEOSゴルフ」以来、実に3年ぶりの勝利でもあった。やはり最終日を単独首位で迎えた今年4月の「KKT杯バンテリンレディス」(熊本県)でも、佳祐さんは飛行機で日曜日に観戦に訪れたが、この時は優勝はできなかった。「主人も『結婚して成績が下がった』とか言われたくないと思ったはず。それを言われたことはないけど、なんか少しだけ感じたこともあったので。なので、きょうこそ絶対に勝ちたいと思いました」。最後は女子オープン優勝者の証しである紺色のブレザーを着て、夫と念願のツーショット写真におさまることができた。「新しい家族が私にもできた」。佳祐さんだけではなく、母・貴久恵さん、前日まで、栃木県でツアー外競技の「エイジェック Lady Goカップ」に出場していた姉の奈津佳、そしてコーチの森守洋氏も優勝を見届けた。「日本女子オープンで優勝して、他のメジャーも獲りたいと思いました」。温かい“家族”たちに支えられながら、これからも歩みを進めていく。
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