<Sansan KBCオーガスタ 最終日◇31日◇芥屋ゴルフ倶楽部(福岡県)◇7293ヤード・パー72>プロ10年目、27歳の小斉平優和が昨年のリベンジを果たして、初優勝を手にした。昨年大会のプレーオフでは悪夢の3連続OBで敗退。優勝が決まると小平智、平田憲聖ら、その悔しさを知る先輩、後輩らから手荒い祝福を受けた。
悪夢を払拭するため、小斉平はしっかり戦略を立てて臨んでいた。昨年まで18番パー5のティショットはドローで右サイドのバンカー越えを狙っていた。「ミスをすると右にすっぽ抜けちゃうんで…」。それが続けざまに出たのがプレーオフでの3連続OBだった。今年は一転してティショットにフェードを選択。「4日間トータルでいいスコアで回るにはそれがいいと思いました」。首位で迎えた最終日はしっかりフェアウエーを捕らえて見せた。さらにメンタル面も強化を図ってきた。メンタルトレーナーのアドバイスを受け、折に触れ自身が優勝する場面を思い浮かべてきた。「優勝してみんなに喜んでもらうところをイメージするんですけど、その時は感情的になって泣けてくるんで。でも、今日は泣きそうになったぐらいで涙はこぼれませんでした。スピーチもイメージではもっと喋れるはずだったんですけどね(笑)」。さらに開幕前日の水曜日にとある本との出会いがあった。「何かないかなと書店に立ち寄ったら、今の自分が求めている言葉が載っている本があったんです。メンタルの本なんですけどタイトルは…。ダメだと思わずに、切り替えて、大丈夫と念じる。本で読んだ通りにやったらあまり緊張しませんでした」。そんな偶然も加わり、大きく心が揺れることはなかった。それでも試練が訪れるのがゴルフというスポーツ。最終18番、残り270ヤードの2打目はグリーン手前のバンカーで目玉となった。「5Wでいい当たりをすれば乗る距離。当たりが悪かったけど目玉は想定外でした」。実際には2打のリードがあったが、小斉平が16番で確認した時点では1打差だった。バーディが欲しいという思いがピンチを招いた。それでも、最後は状況を把握したうえで2メートルのパーパットを沈めて何度もガッツポーズ。「イーグルで追いつかれる可能性もあると思っていたので、勝ったと思ったわけではないんですけど、勝手に体が動きました。最後のパットは打った感触も、どうやって入ったかも覚えていません」。それだけ大事なパットに集中していたのだろう。高校3年で「関西アマ」「日本ジュニア」などを制覇。世代のトップランナーとしてプロに転向した。「プロになって2〜3年で優勝できると甘く考えていたけど、技術もメンタルも全然足りていませんでした。10年は長いかもしれないけど、もっと努力が必要だと気づいて、それに取り組んでから5年ぐらいで優勝できたのは良かったなと思います」。シード落ちから這い上がるなど、苦しい時期も乗り越えてきた。2020年には米下部ツアーでプレー。米国で戦いたいという思いは強い。「今年は米国のQTを1次から受けようかなと思っていたんですけど、この優勝で2次から(国内賞金ランク5位以内)というのもちょっと見えてきたんで悩みますね」。5年分の成長を次は世界の舞台にぶつけるつもりだ。(文・田中宏治)
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