<リシャール・ミル チャリティトーナメント 最終日◇3日◇能登カントリークラブ(石川県)◇7142ヤード・パー72>首位と3打差の3位タイからで迎えた池村寛世が1イーグル・6バーディ・ボギーなしの「64」で回り、トータル24アンダー。2位に2打差をつける逆転で今季初優勝。2022年の「ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント」以来のツアー通算3勝目を挙げた。
最終組の1つ前で回っていた池村のスイッチが入ったのは13番だった。「(河本)力一人が(22アンダーまで)伸びている状況。僕と(同組の)米澤(蓮)が19アンダーで、どっちかが(力を)脅かせたらいいなと話していました」。12番を終え、リーダーボードで戦況を確認した。そこから怒涛の追い込みを見せた。13番パー4は4メートルを沈めてバーディ。14番パー5はピン手前の13メートルほどに2オンすると、きれいな転がりを見せたボールはカップに吸い込まれてイーグル。この直前で河本が13番でボギーをたたき、池村が単独首位に踊り出た。攻勢は緩めず15番パー4は2打目をグリーン奥に外したが、チップインバーディ。16番パー4は手前7メートルからのバーディパットを流し込み、気がつけば後続に2打のリードをつけていた。最終18番パー5は、ティショットを右の林に打ち込んだが、テーラーメイドのミニドライバー「R7 Quad MiniDriver」でスライスを“かけすぎて”ピンまで125ヤードの右ラフに運ぶ。3打目は「ちょいフライヤー」でグリーン左奥に外した。グリーンは、ピンに向かって下り傾斜でやさしくないアプローチだったが、きっちり1メートルに寄せてパーでしのぎ、勝利を決定づけた。今年に入って意識していることが2つある。1つは最終日に強くなる体力強化。「昨年の日本オープンで勝ち切れなかった。昨年から最終日までいい位置にいて伸ばせずに終わるというのが課題だった」。昨年の日本オープンは初日から3日目まで首位を守ったが、最終日に「78」を叩いて8位タイに終わった。24年の部門別データを見ても、予選ラウンド、第3ラウンドの平均スコアは69台なのに対して、最終ラウンドは70.933と1打以上悪くなっていた。最終日に強くなるために「筋力アップよりも体力アップを課題にして、心拍数を上げてから長く走れるように」と取り組んできた。体力が上がれば筋力アップもさらに追い込めるため、来年以降の下地になる。もう1つはメンタルを平常心に保つこと。「自分にプレッシャーをかけないために、あまりガッツポーズをしないように心がけています」と明かした。13番からの4ホールもたしかに喜びを見せるしぐさはほぼなかった。カメラを向ければ“サービス”をしてくれる選手だが、バーディを奪ってもゲームづくりに集中している。「けっこう僕はスコアを落としたときにへこんだり、怒っちゃう場面が多くて、引きずるとハーフや1日がダメになってしまうと(キャディの)奥さんに『もったいない』と言われていました」。スコアの喜怒哀楽で心が動くともったいないミスにつながる。米ツアーを見ても、バーディを取っても淡々とプレーしていることが目についた。平常心の保ち方は、2022年の賞金王で同級生の比嘉一貴にも聞いた。「1年間で300個バーディを取るうちの1個。ダボも1年で10のうちの1つがたまたま、きょう来たと思うようにしていると。その話を聞いて気持ちが楽になりました」。連続バーディが来ようが、心が揺れてプレッシャーをかけることなく、普段通りのプレーができるようになった。今大会、キャディを務めた琴音さんは5年前から公私ともに“相棒”で昨年5月に入籍をした。過去2勝も琴音さんがバッグを担いでおり、今回は結婚後初優勝となった。コース内でのサポートや“精神安定剤”だけでなく、ゴルフ場を離れても食事面のサポートにも徹してくれている。「僕は恵まれているなと思っています。結果で返すのがそれしかできないので、今年は絶対に勝ちたいと思っていました」と日ごろの感謝を結果で恩返しできた。今季は日本のみならず、アジアンツアーにも活躍の場を広げている。「今年は日本とアジアでの優勝が目標です。日本では1つ勝てたので、この後は2勝、3勝と初めての複数回優勝も狙いたい。そしてアジアでも…」。平常心を保てない指摘だけでなく、最終日にいい位置から落とすことも二人で話し合ってきた。国内での複数回V、アジアでの優勝争いもこれからも二人三脚で追及していく。(文・小高拓)
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