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笑顔なき73試合ぶり首位発進 31歳・渡邉彩香の深い悩み「気持ちとティショットを...」

<ミネベアミツミ レディス 北海道新聞カップ 初日◇10日◇真駒内カントリークラブ 空沼コース(北海道)◇6688ヤード・パー72>9月に32歳となる渡辺彩香が、2023年の開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」以来、73試合ぶりとなる初日首位で滑り出した。

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インから出た初日は後半の2番から3連続など6バーディを奪い、さらに5月の「ブリヂストンレディス」3日目以来となるボギーなしラウンド。意気揚々のホールアウトと思ったが、なぜか表情は今ひとつ冴えなかった。「セカンド以降のアイアンショットとかがすごくよくて、チャンスをしっかり決められた。ティショットは正直そんなになんですが…」制御が効かないドライバーショットが、笑顔になれない理由の1つだ。今季フェアウェイキープ率は前週まで52.33%で、ツアー全体95位。この日も21.42%(3/14)と苦しみながらも、洋芝のラフからの2打目をピンに絡めて、バーディを重ねた。昨季フェアウェイキープ率は57.14%で79位、23年は42.51%で90位。13年のプロデビュー当時から誰もが認めるツアー屈指の飛ばし屋だったが、飛ぶがゆえに曲がる諸刃の剣の克服は長年の課題だった。曲がることはある程度は織り込み済み。飛んで、曲がらないドライバーショットを手にすることは、モチベーションにもなっていた。だが、9月で32歳。「ずっと苦しんできた。どうして、こんなに苦しい思いをしなくちゃいけないのかな…って考えてしまうんですよね」。23年はメルセデス・ランキング(MR)71位に沈み、シードを失った。「本当は次の年に何試合か出て、ゴルフをやめようかなとも考えていました」。21年2月に埼玉栄高時代の同級生で柔道家の小林悠輔さんと結婚。ツアープロの生活に一区切りをつけ、プライベートを重視する気持ちにもなっていたが、ゴルフを続けた。24年にはMR47位でシード復活。しかし、尊敬してやまなかった上田桃子が、そのシーズンを最後に第一線を退いた。さらに、同じ1993年生まれで、2012年のプロテストで一緒に合格した同期で親友の比嘉真美子も、今年4月にツアーの舞台を去った。心にぽっかりと穴があき、一生懸命に頑張る理由が分からなくなった。「桃子さんがいなくなって、仲良くしていた真美子もいない。すごく寂しい。自分は何のためにやっているのかって…。漠然とした大きな目標はありますよ。優勝とか。でも、勝ちたい理由が見つからない。ショットが曲がるから、そういうことを考えたりするのかな」。22年の「ほけんの窓口レディース」でツアー5勝目を挙げて以降、優勝から遠ざかっている。3年ぶりの優勝に向けて、絶好のスタートを切ったが、心のモヤモヤは消えてくれない。取材で「明日からが楽しみですね」と声を掛けられても、「どうですかね」としか答えられなかった。「ドライバーショット次第ですね。自分の気持ちとティショットをコントロールできれば、おもしろいかなと思います」。ゴルフはまだやめない。その気持ちに今は揺るぎはない。ならば、前に進むだけ。気持ちが真っすぐになれば、ボールも真っすぐに飛ぶはず。「そうかもしれないですね」。悩めるベテランは最後に少しだけ、ほほ笑んでくれた。(文・臼杵孝志)

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