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石川遼優勝プレーバック 衝撃の初Vに池田勇太、梶川剛奨による名勝負【国内男子ツアー丸わかり】

国内男子ツアーが来週の「東建ホームメイトカップ」からいよいよ開幕する。そこで、ツアーを彩る選手たちのデータを様々な観点からチェック。今回は石川遼が挙げた優勝を振り返る。【1勝目〜6勝目】

石川遼 伝説のウォーターショットはここから生まれた【写真】

2007年 マンシングウェアオープンKSBカップ2007年5月20日、東児が丘マリンヒルズGCで行われた国内男子ツアー第5戦の「マンシングウェアオープンKSBカップ」。初日が強風のため中止となり、予選を通過した上位41人が最終日に決勝2ラウンド、計36ホールを回った。ツアー初出場の石川遼は、7打差の23位からコースを出ると、第3ラウンドで3つスコアを伸ばし9位タイに浮上。そして続けて行われた最終ラウンドではさらに勢いに乗り、17番ではチップインバーディも披露してギャラリーを沸かせた。最後まで攻めの姿勢を崩さない石川は、最終18番パー5も果敢にフェアウェイウッドでグリーンを狙った。グリーン手前のバンカーにつかまるもパーセーブ。7バーディ・1ボギーとスコアを6つ伸ばし、2位に1打差のトータル12アンダー。15歳245日という若さでアマチュア優勝を果たした。この優勝で世界最年少記録としてギネス・ワールド・レコードに認定されたこともあり、一気に知名度を上げた石川。「ハニカミ王子」と名付けられ、連日メディアで取り上げられる存在となり、スター階段を駆け上がっていくことになる。

2008年 マイナビABCチャンピオンシップ2008年に行われた「マイナビABCチャンピオンシップ」。この年の大会では、今も語り草となる劇的なシーンが生まれた。それがプロ転向後初優勝を手繰り寄せた最終18番のウォーターショットだ。「手に伝わってくる感触は覚えていないけど、どういうイメージで打ったかは覚えています」。32歳になった今も、石川の頭のなかにはそのシーンが色濃く残っている。最終日を3位で迎えた石川は、スタート時にあった首位・深堀圭一郎との3打差をひっくり返し、逆に2打差をつけるトップで最終18番パー5を迎えた。優勝を目前にし、グリーン前に大きな池が配置されたABCゴルフ倶楽部の名物ホールに足を踏み入れた石川は、「ティアップするときに手が震えた」という緊張状態。それもあってか、ティショットは左斜面のラフへと入っていった。「自分の感覚ではバンカーの目玉と変わらないなと思っていたので、ウォーターショットはリスキーという印象はなかった」。セカンドショットはあえて刻まずに7番アイアンを握り、積極果敢に池を越えてのグリーンオンを狙った。結果的にグリーンには届かず、球は斜面を転がり池に落ちたが、大きな水しぶきをあげながらのウォーターショットはピン3メートルの位置にピタリ。その後これを2パットで沈めて歓喜のガッツポーズを見せた。

2009年 〜全英への道〜 ミズノオープンよみうりクラシック兵庫県西宮市のよみうりCCで行われた「〜全英への道〜 ミズノオープンよみうりクラシック」。2位に3打差をつけて単独首位から出た石川は全身真っ赤なコーデで登場。晴天に恵まれた最終日に赤がよく映えた。一時は2位に5打のリードをつけ逃げ切り間違いなしと思われたが、12番パー4ではで2発OBを打って+5の「9」。キム・ヒョンソン(韓国)、デービッド・スメイル(ニュージーランド)に並ばれてしまった。それでも16番パー5でグリーン右奥のラフからチップインイーグルを奪うと、最終ホールもバーディを奪い、千両役者っぷりを見せつけた。終わってみれば2位に3打差をつけての逃げ切りV。この勝利により「全英オープン」出場の切符を手にした石川は、予選ラウンドで憧れのタイガー・ウッズ(米国)と同組でプレーすることとなる。

2009年 サン・クロレラ クラシック小樽カントリー倶楽部(北海道)で行われた「サン・クロレラ クラシック」。初日から首位を譲らず、完全V達成に王手をかけて臨んだ最終日はブレンダン・ジョーンズ(オーストラリア)との一騎打ちとなった。石川がバーディを奪えば、ブレンダンも負けじとスコアを伸ばし、背後にピタリとついてプレッシャーをかけ続けた。次第に石川のショットも乱れ、15番でボギーを叩き並ばれた。そして両者同点で迎えた18番で石川はバーディパットをねじ込み、ブレンダンに競り勝った。ここ一番でプレッシャーをはね除けた石川の粘り勝ちであったが、ホールアウト後は涙を流しブレンダンに駆け寄り、健闘をたたえ合った。

2009年 フジサンケイクラシック富士桜CCで開催された国内男子ツアー「フジサンケイクラシック」。2位に2打差の単独首位からスタートした石川は、上位勢が全体的に伸び悩む展開で独走態勢を築き、2位に5打差をつける圧勝劇を披露した。グリーン端に切られたピンポジションにより富士桜の難易度はぐっと上がり、前半こそスコアを1つ落とし苦戦するも、後半は4つのバーディを奪ってみせた。4バーディ・3ボギーの「70」で難コースをくぐり抜けた石川は、真っ白なチャンピオンブレザーをはおって笑顔を見せた。この勝利で海外ツアーを含んだ獲得賞金でも初めてトップに浮上した。

2009年 コカ・コーラ東海クラシックゴルフ史に刻まれる名勝負が生まれた。愛知県にある三好カントリー倶楽部で開催された「コカ・コーラ東海クラシック」。首位からスタートした石川が息が詰まるような白熱の展開を制し、ホスト大会で圧巻の勝利を挙げた。このドラマの出演者は最終組の3人。石川遼、池田勇太、梶川剛奨(現・梶川武志)だ。首位スタートの石川は出だしからアクセル全開。1番でいきなりチップインバーディを奪う最高のスタートを切ると、続く2番パー5もバーディ。同組の2人が足踏みをする間にどんどん差を広げていく。しかし池田、梶川も食い下がり、前半を終えた時点で差は2ストローク。そして、最高のエンディングへ向けて、バックナインでドラマが一気に加速する。ハーフターン直後の10番だ。「9番で曲げていたし予感はあった」。石川はティショットを右に曲げOB。このホールダブルボギーを叩き、たった1ホールで前半の貯金を吐き出し、2人に並ばれてしまう。直後の11番でバーディを奪い首位の座を取り戻したが、14番で入れにいったパーパットを外すと、返しのパットも外してまさかの2つ目のダブルボギー。応援に訪れた大ギャラリーに落胆の雰囲気が流れる中、「優勝がなくなったとは全く思わなかった」。石川だけが自分の勝利を誰よりも信じていた。続く15番ロングではダブルボギーのショックを引きずるどころか、約340ヤードをかっ飛ばす会心のドライバーショット。フェアウェイベストポジションからのセカンドはピンに向かって一直線に放物線を描くと、手前1メートルにピタリ。ダボを帳消しにする圧巻のイーグルで13アンダーに復帰してみせる。難関の16番でボギーを叩き再び一歩後退したが、本当の見せ場は上がり2ホールだった。17番でセカンドをピン奥50センチにつけるスーパーショットでバーディ。同じくチャンスにつけた梶川は短いバーディパットを外し、なんと13アンダーで最終組3人が並んで最終ホールに突入した。石川の最終ホールティショットは右のラフ。池田は大きく左に曲げ林の中に打ち込み、事実上優勝争いからここで脱落。勝負は梶川との一騎打ちとなった。フェアウェイからセカンドを打った梶川はグリーンを先にとらえる。そして、石川の残り約188ヤードのセカンドショット。フライヤーとアゲインストを計算して7番アイアンで放たれたボールは、グリーン中央方向へ真っ直ぐ打ち出された。「ギャラリーの気持ちがあそこに運んでくれた」と右サイドに切ってあったカップへ向かいフェードして、ピン30センチに着弾。18番グリーンに轟音のような歓声がこだました。梶川の最後のバーディパットは強気で打つも入らずパー。この出来すぎたドラマに幕を下ろすバーディパットを決めた瞬間、主役の石川は力強く何度もガッツポーズを作った。

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