<マイナビABCチャンピオンシップ 最終日◇6日◇ABCゴルフ倶楽部(兵庫県)◇7217ヤード・パー72>
昨年大会ではトップタイからスタートしながら、浅地洋佑に終盤逆転されて2位に終わった堀川未来夢。今年はその浅地の優勝スコアであるトータル16アンダーを1打上回るトータル17アンダーまで伸ばして雪辱を果たした。そこには“0.2打”にこだわる徹底したマネジメントがあった。
「去年の悔しさを晴らすためにも、今週は練習ラウンドからパッティングの距離感だったり、マネジメントをしっかりして、自分のプラン通りに4日間進んだ。優勝できてうれしいですね」
確かに4日間のスコアを見ると、昨年と酷似している。トータル4アンダーで予選を通過し、3日目に大きく伸ばして優勝争いに食い込むところまで同じ。昨年は最終日に伸ばしきれずに逆転を許したが、今年は「目指していた5アンダーで回ることができて、納得のゴルフでした」という。
練習ラウンドから心がけたのは、3日目と最終日にスティンプメーターで13.5フィートと、今年最速となったABC名物の高速グリーン対策だ。
「ABCは2段グリーンが極端に多いので、段越えのパッティングを練習ラウンドのときから重点的にやりました。やっぱり同じ段に乗せようと思うと、奥にかまをほって(グリーンオーバー)しまったりする。すべてピンを狙うのではなく、セーフティなほうにターゲットをとることができたし、ロングパットの距離感がすごく合っていたので、そういったマネジメントがいい方向につながった」
顕著だったのは終盤の15番パー5。ティショットをドライバーで打ち、セカンドは3番ウッドでギリギリの距離だった。「右のバンカーなら問題ないと思っていた」と、そのバンカーに入れた。ピンまでは35ヤードほど。距離の長いバンカーはプロでも難しいが、52度でグリーン面に乗せて転がし、80センチに寄せてバーディ。ここでトータル16アンダーとして単独首位に抜け出した。
「右のバンカーは距離があるけど、足が使えて5ヤードくらい先に落とせば自然に寄ってくれる。難易度は10段階で2とか3。ワンピン以内のバーディパットが打てる感覚があった」とマネジメント通りの最善策でバーディを奪ったのだった。
そして、もう一つマネジメントで徹底したのが、3番ウッドで低く打つスティンガーショット。堀川が昔から武器にしているショットで、3日目も最終日もドライバーを握ったのは2回だけ。「ティショットでドライバーを持つ回数はかなり減りましたね。去年の半分以下にはなっています」 と、4つのパー5のうち、3回は3番ウッドのスティンガーを打っていたのだ。
「ABCはティショットが両サイド狭いとか両サイド広いというよりかは、どちらかにプレッシャーがあるホールが多い。セーフティなほうに曲がったとしても、行きすぎると逆に危険になってしまったりする」
堀川が例に挙げたのは、右ドッグレッグの6番パー5。ドライバーでフェアウェイに打てても、2オンを狙うには右の斜面が効いているため、スライスをかけないといけないホールだ。左には崖があるため、右のラフに外す選手が多い。ここで堀川は2オンを狙わず3番ウッドでティショットを打ち、2打目は5番ウッドでレイアップ。残り102ヤードの3打目を52度で3メートルにつけてバーディを奪った。
「ドライバーを持って右に逃げる選手は、セカンドショットのレイアップでいいところまで持っていけず、結局100ヤード前後ではなくて、170ヤード前後の3打目とかになってくる。(その距離の差は)1打とか2打まではいかないけど、毎ホール0.2打が積み重なると、数字になるのかなと思って。もう届かないのであれば、少しでも自分のなかでティショットに嫌な雰囲気があったらすべて刻みました」
普通の選手なら、「バーディが獲れた」もしくは「獲れなかった」で終わるところを、堀川は0.2打にこだわってマネジメント。最終的に2打差の勝利につなげたのだ。
最終18番パー5もセカンドは池越えの手前に切ってあるピンまで残り215ヤードだったが、7番ウッドでグリーンの奥の面に打ってラフまでオーバー。これも「ほぼほぼ90点くらい」と計算通りだった。「フォローの風が止まったとしても、グリーン面にキャリーできるように。何があっても池を越えることだけは意識してクラブをチョイスしました」と話す。
奥からの3打目のアプローチは逆目の下りで簡単ではなかったが、「アプローチのバリエーションがいくつかあったので。最善の強く飛ばない打ち方を選んで、下の段の同じ面に乗せられる自信があった」とフワッと上げて転がし、約1.5メートルに寄せた。最後は上りのバーディパットをきっちり沈めて逃げ切った。
グリーンサイドにいた大勢の仲間たちが、祝福のウォーターシャワーのために待機していたが、誰ひとり堀川の勝利を疑わず、安心した表情を浮かべていた。ギャラリーには少しピンチに見えた場面も、仲間たちは堀川の卓越したマネジメントをみんな知っている。3日目を終えたとき、最終日に向け「ピンチなく18ホール回りたい」と言っていた通りの結果となった。(文・下村耕平)
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