<日本オープン 最終日◇23日◇三甲ゴルフ倶楽部 ジャパンコース(兵庫県)◇7178ヤード・パー70>
9月の「パナソニックオープン」に続いて、「日本オープン」にまで勝ってしまった規格外のアマチュア、蝉川泰果(東北福祉大4年)。JGAナショナルチームのヘッドスピードを上げる練習では56m/sをマークするなど、世界にも通用する飛距離を武器とする。そんなハードヒッター、蝉川の“半端ない”クラブセッティングを見ていこう。
■ドライバーはHS52m/s以上ないとつかまらない!?
パナソニックオープンから換わったのはドライバーのヘッドのみ。以前はピンの『G425 LST』を使っていたが、日本オープンから最新の『G430 LST』を実戦投入した。「前のドライバーは弾きすぎて滑っていたけど、このドライバーはボールをしっかりキャッチして、球筋と手応えが一致してきた。あれにしてからだいぶ曲がり幅が少なくなった印象が強いです」と気に入っている。
日本オープンのデータを見ると、4日間のドライビングディスタンスは309.125ヤードで河本力に次いで2位、フェアウェイキープ率は73.214%で4位。飛ばしと正確性を見事に両立した驚異的なパフォーマンスをみせた。
ピンでアマチュアを担当している塩谷竜太氏によると「彼はもともとスピン量が少ないタイプで、前のドライバーはスピン量が1700〜1900回転くらい。ときどき横滑りしてドロップ系のシュートボールが出ていたんです。新しいドライバーにして、いまは2000回転ちょっと。スピン量が増えたことで方向性が安定しました。彼の場合、クラブには飛びよりも正確性を求めて、飛距離は自分で出していく」という。
ドライバーのキャリーはトラックマンの計測で310ヤードという蝉川のコンセプトは、「左に行かないドライバーを自分でしっかり振って真っすぐ飛ばす」。9度のヘッドのロフトを1度立てて8度にし、ライ角は3度フラットにして逃げ顔に。通常のヘッドスピードが52〜53m/sの蝉川がしっかり振らないと、つかまらない仕様になっている。
ヘッドスピード49m/sの塩谷氏にして「私も打ちましたが、右にスッポ抜けてよくわらかない球が出ました」というハードすぎるスペック。シャフトのフレックスもTX(ダブルエックス相当)と硬いため、ヘッドスピード40m/s前後の一般ゴルファーではまず球は上がらないし、真っすぐ飛ばすこともできないだろう。
■飛び重視の3番アイアンはグリーン周りでも使う
アイアンに目を移すと、3番アイアンは中空構造の『i525』、4番からPWはマッスルバックの『BLUEPRINT』(ブループリント)を入れている。「基本的にはアイアンが得意。彼の場合はドライバーと3番ウッドが飛ぶので、3番アイアンは飛距離を求めています。キャリーで250〜260ヤードくらい出ますね」と塩谷氏はいう。
その3番アイアンは飛ばすだけでなく、グリーン周りでも活躍する。大会を通して平均スコアが4.746と最も難しかった距離の長い12番パー4。最終日に蝉川はセカンドショットをグリーン奥にこぼしたが、3番アイアンで50センチに寄せ、パーでしのいでいる。
「あれはジョーンズさん(JGAナショナルチームヘッドコーチ)に教わった打ち方で、パターよりもロフトがある3番アイアンのほうが、出だしの傾斜を少し消せるという意図があります」と蝉川は説明する。グリーン周りでは状況によって、56度、60度のウェッジ、そして「ペタペタなフェアウェイからカップを狙うときに使う」というロフト18度の3番アイアンの3本を使い分けている。
また、「あれは6セット目か7セット目。めちゃくちゃ自分にフィットして打感も顔も良いですね」と気に入って長く使い続けているアイアンは、マッスルバックの『BLUEPRINT』。日本オープンでは切れ味鋭いアイアンショットを連発し、プロたちが手を焼く硬いグリーンでも多くのバーディチャンスを作り出した。
塩谷氏は「彼はピンしか狙っていかないので、球の高さとタテ距離を重要視しています。以前は中空の『i500』を使っていたのですが、スピンが少なくて試合になると飛びすぎてしまっていた。『BLUEPRINT』にしてからスピンが入って、タテ距離をシビアにコントロールできるようになりましたね」と話す。
■パターは浅めのミーリングで硬めの打感に
そしてグリーン上では、ピン型のノンインサートの削り出しパター、『PLDミルド ANSER』を使う。「硬めの打感が好きなので、(フェースの)ミーリングを浅めにしています。なおかつ両サイドにタングステンを入れることで、芯を外したときにも真っすぐいくパターを作ってもらいました」。ノンインサートのパターは、フェースのミーリングを深くするとソフトな打感になる。市販品のミーリングは深めだが、蝉川はあえて浅くして、硬い打感にしているのだ。
「音と打感がしっかりするようにミーリングを浅めにしています。その方が出球のスピードとタッチがしっくりくるようです」と塩谷氏。続けて「シャフトはスチールより少し軽いカーボンを挿しています。カーボンのほうがフィーリングが良いみたいで、人によってはスチールよりも硬いと感じる人もいるかもしれません」という。ピンの直営店では、市販品とは違うカスタムも可能。蝉川のドライバーを使いこなすのは無理でも、パターの硬めの打感は手に入れることができる。(文・下村耕平)
【蝉川泰果の優勝クラブセッティング】
1W:ピン G430 LST(8度/テンセイ プロ オレンジ 1K 60TX、44.75インチ)
3W:テーラーメイド ステルス(15度/テンセイ プロ オレンジ 1K 70TX)
3I:ピン i525(18度/N.S.PRO モーダス3 HYBRID G.O.S.T X)
4I〜PW:ピン BLUEPRINT(N.S.PRO モーダス3 プロトタイプ X)
50,56,60度:ピン GLIDE 4.0(N.S.PRO モーダス3 システム3 TOUR125 X)
PT:ピン PLDミルド ANSER
BALL:タイトリスト PRO V1x
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