<日本プロゴルフ選手権 初日◇4日◇グランフィールズカントリークラブ (静岡県)◇7219ヤード・パー71>
大会初日、石川遼はスタート時間の8時15分より1時間30分ほど前にドライビングレンジに姿を現した。手にはたくさんの“クラブ”を持っている。「これやるの結構大変なんですよ(笑)」。そう言いながらおもむろに素振りを始めた。しかも全力で。国内男子ツアーが5週間のオープンウィークの間に始めた、新しい“トレーニング”である。
スチールシャフトのドライバーのヘッド寄りに重りを付けたモノが3本、普通のクラブタイプが1本、シャフトの先に重りがついたものが2本、計6本がキャディバッグに寄りかかる。
「一番軽いモノで250グラム。一番重いモノで2キロ近くあります」。6本それぞれ重さが違う素振り棒だ。重さのあるモノで素振りを始めて、軽いモノでスピードを上げて振り、さらに重いモノを振る。「(田中剛)コーチと相談してスピードを上げるためのトレーニングで、まだ始めて1カ月ぐらいです」
通常のドライバーの重さは300グラムちょっと。重いモノ、軽いモノを交互に振ることでヘッドスピードを上げるトレーニングは数年前から取り入れる選手もいるが、石川はそれだけにとどまらない。重いクラブでアドレスからトップスイングまでで終わったり、踏み込んで素振りをしたり、助走をつけてから振るなど、多くのパターンがある。
素振りをする後ろにはヘッドスピード測定器を置いて数値をチェック。「疲れていると振れない」ことから、ヘッドスピードを可視化してその日のコンディションチェックにも役立てている。
助走をつけて素振りをするのは珍しいパターンだが、「(アドレスから)普通に始動するのはスピードが出にくいので、一番スピードが出やすい振り方をして、普通に始動したときにもそのスピードで振れるようにやっています」と説明する。最速で振れるスイングを体にしみ込ませてトレーニング効果を上げる狙いがある。
6本のクラブでさまざまな全力素振りを行った後、実際にボールを打って“振れる感覚”を体にしみ込ませて終了。トレーニングが終わると息も上がり、汗だくになっている。そして一休みしてからスタート前の練習を始める。
スタート前に行うことで、スタート時から振れる利点もあるが、「もうちょっと長い視点でスピードを上げるのが目的。試合の時に(トレーニングを)やらないと筋肉が落ちてしまいます。(連戦中でも)なるべく維持して、あわよくば上げていけるように試合中も毎日やります」。
6週ぶりの試合となったが、以前よりも振れているように見える。「だいぶスイングが落ち着いてきている証拠でもあるかな。例えば以前は6割の力感でいいショットが打てても7割、8割の力感で振ると悪いところが出る。今は10パーセントぐらい力感を増しても悪い影響が出なくなっています。自分としてはよくなっている部分を変えないようにしながら、スピードを上げていくのが、これから数年間の一つの課題でもあります。徐々にスタートしている段階です」。
今まで以上にドライバーや長いクラブに自信を持って飛距離も伸ばすのが最終的な目的地と語るが、この夏からは新たなステージに入った。(文・小高拓)
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