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「優勝して行きたかった」藤田さいきはV逃すも、初の海外メジャー切符獲得

<宮里藍サントリーレディスオープン 最終日◇12日◇六甲国際ゴルフ倶楽部(兵庫県)◇6527ヤード・パー72>

トータル12アンダーで山下美夢有と首位に並んで迎えた最終18番。決めればプレーオフに進める。藤田さいきの3メートルのパーパットはラインに乗ったが、カップの左側を抜けた。その瞬間、藤田は膝から崩れ落ちた。

「足に来てたんでしょうね。気が抜けて、『あー終わったー』って(笑)」。18年4月「KKT杯バンテリンレディス」以来の最終日最終組。そして2011年「富士通レディース」以来となる10年239日ぶりの優勝がかかっていた。「緊張していた」といままで明かさなかった胸の内を話した。

2位と3打差で最終日を迎えた。前半で1つ伸ばして、折り返した10番でもカラーからの15メートルを沈めて、後続の追随を許さなかった。だが、11番をボギーとすると、13番で手前のバンカーから寄らず、続く14番ではティショットを左に曲げて連続ボギー。ここでこの日4つ伸ばしていた、ひとつ前を回る山下にかわされた。

だが、17番で4メートルを沈めて追いついた。「(18番は)獲りにいきました。ピンの左につけるつもりで」。左足下がりでグリーン手前にはバンカー、左には池があるという状況のなか、左から4ヤードのピンを狙った残り120ヤードからの第2打。「ギリギリの番手」というピッチングウェッジで打った球は、池の岩に当たって大きく右に跳ねて、グリーンを“横断”。右サイドのバンカーに入った。

「(前の組は)見えてなかったです」。実はこの2打目。前を回る山下らがホールアウトして、グリーンサイドで挨拶をしているなか、すぐに放たれたものだった。周りが見えなくなるくらい集中していた。だからこそ、パーパットが外れた途端、ぷつんと緊張の糸が切れたのかもしれない。そう語る目も、少しうるんでいた。

「まだ6月ですし、後半もチャンスがあると思うので前向きに頑張りたい。西郷(真央)さんのパターンのように、2位を続けて優勝というのもありますし」。これで今季3回目の2位。“また優勝することができなかった”という悔しさもあるが、今回は違う。8月に行われる海外メジャー「AIG女子オープン」(全英)の出場権を手に入れたからだ。

プロ17年目。ツアー通算5勝という実力がありながら、実は「初めてなんですよ。メジャーに行ったことがない」。過去には予選会に挑戦したこともあったが、これまで出場は叶わなかった夢舞台。「優勝して全英に行きたかった」と素直な気持ちも話したが、そのなかでも自ら初めてつかんだ切符には笑顔をみせる。

36歳にして初めて経験する海外メジャー。「この歳で全英に行けるとは正直思っていなかった。なかなかないチャンス。楽しみです」。うるんでいた瞳は、すでに海の向こうを見据えていた。(文・笠井あかり)

<ゴルフ情報ALBA.Net>