パターで定番の形状と言えば「アンサー型」、「ピン型」と呼ばれるブレード形状のものがまず思い浮かぶだろう。その証拠に、アンサー型の元祖PINGだけでなく、ほとんどのメーカーがブレード型を商品としてラインナップしている。
一方で、奇抜な形状でありながら、多くのメーカーから発売され、パターの新たな定番となりつつあるのが「ツノ型」だ。ヘッド後方に2本のツノがついたいわゆるマレット型パターで、オデッセイの「#7」が原型となっている。
「ツノ型」はプロゴルファーの使用者も多く、かつてタイガー・ウッズもテーラーメイドの『アードモア』というモデルを使っていた。これだけでも「ツノ型」という形状に大きなメリットがあることが分かるだろう。
他のクラブに比べて、設計自由度の高いパターではしばしば奇抜で独特な形状のモデルがリリースされる。しかし、その多くは定着することなく消えていくのだが、なぜ「ツノ型」はここまで定着し、多くのゴルファーに受け入れられたのか。
それは、「ツノ型」が、パターに求められる性能をバランスよく持たせられる合理的な形状であることが大きな理由だろう。
パターでは、狙った方向に真っすぐ打てて、イメージした距離感を出せるのが理想だ。しかし、多くのパターにはどうしても得意・不得意がある。たとえばブレード型はイメージした距離感を出せる高いフィーリング性能が備わっているものの、狙った方向に真っすぐ打つという意味ではマレット型に劣ってしまう。
一方、「ツノ型」はどうだろう。
ヘッドのトゥとヒール側から後方に伸びた2本のツノによって、慣性モーメントが高まるので、当然ながら、真っすぐ打つという性能は高いレベルにある。その上で、重心がフェース側にあるため、ブレード型のようなフィーリング性能も備わっている。ジャンル的にはマレット型となる「ツノ型」だが、実はブレード型とマレット型の良いとこ取りをしたパターなのだ。
しかも、2本のツノがあることで、目標に対して真っすぐ構えやすくもなる。また、地味ではあるが、ヘッドをトゥ側から見ると、後方にかけて反り上がるような形状になっていて、理想的なアッパー軌道でインパクトしやすいこともメリットだと言えるだろう。パターとして欠点らしい欠点がないのが「ツノ型」の大きな特徴であり、パターの定番となった理由なのだ。
このように、万能的な性能を持つ「ツノ型」だが、自分に合ったモデルを選ぶにはネック形状に注目してほしい。最近では、よりブレードパターに近い感覚でストロークできる「ショートスラントネック」を採用するモデルも増えており、同じ「ツノ型」のヘッドだとしても振り心地に明確な違いが出るのだ。
簡易的に性能を見分けるには、シャフト部分を指などに乗せて、フェースの傾きをチェックするのがおすすめだ。いわゆるヘッドの「重心角」を見分ける方法だが、フェースが真上に近い方向を向いている(フェースバランス)なら、オートマ感が強くマレット的に使えるし、角度がついている(トゥヒールバランス)ならブレード的にストロークすることができるだろう。(文・田辺直喜)
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