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なぜプロは「モデル違い」のユーティリティを使うのか?【ギア豆知識】

プロを含め、「ユーティリティ」(以下、UT)をクラブセッティングに組み込むゴルファーは多い。アイアンよりもやさしく打てて、フェアウェイウッドよりも短くて振りやすい…その名前の通り、ゴルファーにとって非常に「有益」なクラブであることがその理由だろう。

UTは、ヘッド形状を基に、アイアン型とウッド型の大きく2つに分けられる。今、市場にあるUTの多くはウッド型で、飛距離性能を重視したものから、アイアンに近い操作性を持ったものまで、実に多種多様なモデルが揃っている。自分に合ったUTを手に入れれば、間違いなくスコアアップの助けになるだろうが、その豊富さゆえにUTは「選ぶのが難しい」クラブにもなっている。

そこで今回はプロのセッティングを例に、UTの選び方について考えていこう。

今季から米国女子ツアーに参戦する古江彩佳は、ブリヂストンの『TOUR B JGR HY』(4番・ロフト22度)とテーラーメイドの『SIM2 MAXレスキュー』(6番・ロフト28度)という2本のUTを使用している。契約するブリヂストンのクラブがセッティングの大半を占める中、あえてモデルの違う他メーカーのUTを入れているのが面白い点だ。

シンプルに考えるなら、複数のUTをセッティングに組み込む場合、同じモデル、シリーズで揃えたほうが良さそうに見える。しかし、プロの中には古江のように「モデル違い」のUTを組み合わせる選手が少なくない。そこには、UTというクラブならではの理由がある。

そもそもUTは、非常に幅広いロフトをカバーするクラブだ。かつては3、4番アイアンの代わりに使う21〜23度のモデルが主流だったが、最近では5番ウッドに代わる18度や6番アイアンに相当する30度のモデルまでラインナップされるようになった。

これだけロフトに違いがあると、番手によって特性の差が出やすくなる。なぜなら、ロフトが寝るほど、クラブの重心は自然に深くなり、重心角も大きくなっていくからだ。もし、同じヘッド形状でロフトだけを変えるような設計をしてしまうと、スイング中、シャフトにかかる負荷やつかまりが番手ごとに異なってしまい、「4番は振りやすいけど、5番は引っかける」といった現象が起こる可能性がある。

そのため、下の番手にはつかまりを抑えた叩けるUTを、上の番手にはやさしくつかまる飛距離重視のUTを選ぶといった具合に「モデル違い」でセッティングをしている選手が多くいるのだ。「グリーンを狙う」、「飛距離を稼ぐ」とロフト帯によって求める性能も変わってくるため、番手ごとに違ったモデルを組み込むのはある種、合理的なのだ。

ただし、最新UTの中には、同じモデルで複数本揃えても、使い勝手の良いものが増えていることを付け加えておこう。先ほど述べたロフトによって起こる変化を踏まえた上で、番手別にヘッド形状を最適化したUTが増えているのだ。

たとえば、テーラーメイドの『SIMグローレ レスキュー』はロフトが立つほど重心角が大きくなるよう設計され、番手ごとのつかまりを揃える工夫がなされている。一方、PINGの『G425 ハイブリッド』は、各番手の重心角を同じくらいの大きさに揃えることで、振り心地に統一感を出している。

こういった番手ごとの性能フローがマッチしているなら、同じモデルのUTで複数本揃えるのもありだろう。もし購入を検討しているUTがあるなら、さまざまな番手を試打してみるのがおすすめだ。(文・田辺直喜)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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