山下美夢有はルーキーシーズンの昨季、21年の「KKT杯バンテリンレディス」での初優勝を含めトップ10に16回入る活躍で、年間獲得賞金は1億円を突破。メルセデス・ランキングでも12位にランクインした。賞金女王・稲見萌寧の2学年下の20歳とまだ若く、3月に開幕する今シーズンはさらなる活躍が期待される。フェアウェイキープ率76.26%(全体9位)を誇る山下の正確なドライバースイングを、堀琴音らを指導する“モリモリさん”こと森守洋氏に解説してもらおう。
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まず彼女の印象は『日本一美しいアドレスのプレーヤー』です。
構えたときの上体の前傾角度が浅く、どこにも無駄な力みがなく、肩甲骨がスッと下がり、腕とグリップで作る二等辺三角形が非常にきれいです。左手はセミストロング(ややフック)で握り、クラブの重心をとらえている。左手がクラブの重心を握るというのは、クラブを体の正面で胸の前に上げたときに、シャフトの真上にヘッドの重心が乗った状態でスクエアに握っているということ。クラブのフェースをスクエアに戻すと、左手がかぶったフックグリップとなるのです。
下半身もしっかりと踏ん張っている感じがないのに地面にスッとしっかり立っている。まるで戦国時代を生き抜いた武士のような隙のない自然体なアドレスですね。
スイング中にイレギュラーな動きが入る方が難しいと感じさせる美しいアドレスで、予想通りフィニッシュまで、どこにも代償動作の入らない滑らかなお手本のようなスイングです。『代償動作』というのは、すくい打ちのゴルファーが右にスッポ抜けないように、手首を返したり、上体の前傾角度が起きるゴルファーが、ボールに届かせるために早く手首の角度をほどくといった動きです。
バックスイングでは腕を持ち上げる動きがほとんどないため、フラットなスイングプレーンとなります。山下プロは身長150センチと小柄なプレーヤー。本来、小柄な選手は小さいときから「大きく振れ」と指導されるために、アップライトに腕を上下に使いたがる傾向があるのですが、山下プロの場合はそれが皆無。弾道計測器のトラックマンを駆使してデータを大切にしながらスイングを作ってきたのが、スイングにもよく表れていると思います。
おそらく無意識にだと思いますが、フラットなトップからダウンスイングで沈み込み、インパクトに向かって地面をしっかり踏みつけ、ジャンプのような下半身の動きでカラダ全体を回転動作に導いています。床反力を使って飛ばしているのです。フラットで静かなクラブの使い方ができる上に、効率的なカラダの使い方。「そりゃショットメーカーですよね」というスイングです。
多くのアマチュアゴルファーにとって、山下プロのスイングはお手本になる要素がたくさんあります。そのなかで真似してほしい動きを1つ取り上げるなら、美しいアドレスからのバックスイング。タオルを両ワキに挟んでスイングするだけでも、山下プロの体の正面から腕が外れない無駄のないトップを、身に付けることができると思います。
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