1年半前までアマチュアだった青年は、一昨年の10月にプロ転向すると「前年最終週の世界ゴルフランキング50位以内」の資格で今年の「マスターズ」出場を決めた。この2022年に24歳の年男となる金谷拓実である。そんな金谷がハワイで行われる米国男子ツアー「ソニー・オープン・イン・ハワイ」で新年初戦を迎える。20年と21年が統合されたロングシーズンの振り返りと、今季にかける意気込みを改めて金谷に聞いた。
■昨シーズンは賞金ランキング2位も、最初の目標は達成できず
金谷の昨年末時点での世界ランキングは50位。ギリギリ滑り込んでマスターズの切符を手にした。これ以上ないくらい順調に思えるプロ生活のスタートに思えるが、金谷のなかでは悔しさが残っていた。
「最初はやっぱり海外の試合で結果を出して、ツアーカード(出場権)を獲ってというのをイメージしていました。最後のほうは『賞金王は?』とよく聞かれましたけど、目標を切り替えるのが難しかったですね」
昨年、金谷が出場した海外メジャー、「全米プロゴルフ選手権」、「全英オープン」はともに予選落ち。その2試合を除く、欧州男子ツアーには4試合に出場して予選落ちはなく、「オメガ・ドバイデザートクラシック」では9位タイ。米国男子ツアーには3試合に出場して予選落ち2回、日本開催の「ZOZOチャンピオンシップ」では7位タイと気を吐いた。しかし、金谷が一番の目標としていた海外ツアーの出場権には手が届かなかったのだ。
それでも日本では、『最優秀新人賞 島田トロフィ』、『平均ストローク賞』、『パーキープ率賞』、『ゴルフ記者賞』の4冠を手にし、賞金ランキング2位でシーズンを終えている。
「自分としては頭にはなかったですけど、『賞金王』という目標があるのなら狙おうかなみたいな感じです。賞金王よりも1試合1試合優勝を目指していたので、(海外ツアー転戦を終えて)夏場に帰ってきてから、一回も勝てなかったのは残念だった」。日本ではシーズン2勝を挙げ、誰もがうらやむ輝かしいシーズンを送ったが、本人から満足する言葉はあまり出てこない。
■金谷は『複数年シードで海外に挑戦』に違和感
日本では「複数年シードを獲ったら海外に挑戦」というイメージがある。海外でダメでも日本に帰ってくることができるからだ。ここに金谷は違和感を覚えていた。「シーズン終盤は『賞金王獲ったら5年シードが…』って何度も言われたけど、そういうのは関係ないんだよって思っていました。それが保険だと思うから、ダメなんですよと思う。行きたいんだったら行けばいいじゃんという話です」と金谷は海外への思いを熱く語るのだ。
そんな金谷はトレーナーからの言葉にハッとなった。「『前のトビラを開けるためには、後ろのトビラを閉めないといけない』と言われたんです。“挑戦”って前のトビラを開けるイメージなんですけど、同時に退路を断たないといけない」。
金谷は言葉を選びながら続ける。「去年だって結果的に退路があったから戻ってくることができた。それはそれでいいんですけど、何て言えばいいだろう…言い方が難しいんですけど、『帰れる』っていう安心感があるから100%コミットできてない。退路を断つことが大事だと思います。あまり『退路』って言いたくないんですけどね」と胸の内を話す。
金谷がイメージする先には尊敬してやまない大学の先輩、松山英樹の姿がある。「松山さんだって(日本のシード権を)持っていないわけだから、いらないんですよ。そっち(海外)にフォーカスすれば帰ってくるつもりはない」とやはり思いは熱い。
今季の目標については、「世界ランキングトップ50に入ることで、メジャーもそうだし、WGC(世界ゴルフ選手権)にも出るチャンスが増えていく。チャンスをもらったところでチャレンジする資格があるんだから、今年こそはそこで結果を出したい。自分次第で変えられるはずだから」と覚悟を決めて初戦を戦う。
(取材/文・下村耕平)
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