<JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ 最終日◇28日◇宮崎カントリークラブ(宮崎県)◇6543ヤード・パー72>
かつて隣で支えていた男は、初優勝をかけて首位からスタートする姿を陰ながら見守っていた。「娘には俺が来るのを言っとらんけん」。福岡弁交じりに話すのは、かつて三ヶ島かなのキャディとしてともに戦った父・直(すなお)さんだった。
16年にツアーに参戦してからは、常に親子鷹として二人三脚。ケンカも一切せず、とやかく口出しすることはない。娘が思うようにやらせてあげながら、仲良く各地を転戦した。直さんの明るい人柄は、キャディ仲間からも愛されていた。
苦しい思いをともにしてきた。初めてと言っていい優勝争いを演じた2017年の「アース・モンダミンカップ」では、最終日の最終ホールで11メートルのバーディパットを沈めて首位に追いつくも、6メートルを入れ返されて敗れた。相手は鈴木愛。その年の賞金女王にあと一歩のところで阻まれた。それからも初シード獲得の喜びや、優勝にあと一歩届かない悔しさなど、様々な感情を共有してきた。
それから4年。次第に、キャディを務める回数が減っていった。仲が悪くなったわけではない。三ヶ島かなというプロゴルファーの成長を思ってのこと。そうして今年の「ほけんの窓口レディース」を最後にキャディバッグは担いでいない。それどころか会場にも来なくなっていた。娘も来てほしいとは言わず、「これまでたくさん助けてもらったからゆっくりしてほしい」と言う。
久々の優勝争いとなった前週の「大王製紙エリエールレディス」。最終日を前に激励のメッセージを送った。だが、左の鎖骨を痛めていたこともあって結果は5位タイ。またしても優勝には手が届かなかった。
妨げになるようなことはしないでおこう。だから、今回はそっと見守ろうと思っていた。だが、中学時代の同級生の誘いもあってコースに来ることに。それでも余計なプレッシャーをかけたくないと、内緒にしていた。大柄な男はできる限り“バレない”ようにプレーを見続けた。
娘は4番ホールで「すごく似ている人がいるな」と感じた。だが、「でも、ここに来るかなぁ」といったんは気にするのをやめたが、4打差をつけて迎えた18番グリーンで父の姿をハッキリと確認した。「(グリーンに)上がった時に“幻じゃなかったんだ!”って思いました(笑)」と見守っていてくれたことを理解した。
来てくれて本当にうれしかった。「お父さんが見守ってくれたおかげで勝てたと思う。優勝を目の前で見せられてよかった」。二人でトロフィーを持って写真に納まる。夢がかなった瞬間だった。
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