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定規で引いたようなライン出し 稲見萌寧の球が真っすぐ飛ぶ2つの理由【辻にぃ見聞】

終わってみれば9打差圧勝。「伊藤園レディス」は賞金ランキング1位の稲見萌寧の勝利で幕を閉じた。腰痛をかかえるなか、なぜ圧倒的な成績を収めることができたのか。上田桃子らを指導し、今大会では上田のキャディを務めて稲見と最終組で回ったプロコーチの辻村明志氏が実際に見た強さを語る。

■ティショットからウェッジショットまですべてが完璧

グリーンのコンパクション(硬さ)こそそこまでないものの、アンジュレーションがきつく、ピンも前後左右に振られるため、狙いどころが狭く、ピンへのショットの正確性が求められたグレートアイランド倶楽部。ショットメーカーが有利、という下馬評通りの上位勢となった。

そのなかでも唯一2桁アンダーに乗せたのが稲見。それどころか2位に9打もの差をつけた。同じ組で見ていた辻村氏も「すべてのショットが定規で線を引いたようにきれいにラインが出て飛んでいく。強い風の中でもアイアンショットでは乾いた音でボールを打ち抜けてました」と精度の高さに舌を巻いた。

「彼女はフェードヒッターですが、8番、12番のような左ピンに対しても苦にしない。例えば左が池で左ピンに切られた17番のパー3では、風が左から吹くなかキャディに“左を消していきます”と池の縁のラインに出していきましたからね。状態がいいということにほかなりません」

なぜ稲見の球は真っすぐ飛んでいくのか。辻村氏は2つの理由を挙げる。

まずはインパクトゾーンの管理。これがずば抜けているという。「どの番手でもヘッドが低く、長くキープされていてフェースローテーションが非常に少ない。つまりインパクトゾーンでフェースがスクエアな時間が長いということです。さらにフェースを返し過ぎて飛ぶことがない。さらにボールに対してインパクトする強さがほとんど一定。だから真っすぐ出るし、縦の距離にも計算がたつ」。だから、長い番手を持ったコントロールショットでも正確性を失わない。

もう一つがインパクト際で体が止まらないこと。稲見自身が腰痛を抱えながらのプレーでも「手で微調整はなるべくしたくない」と話したように、しっかりと痛みを抱えながらも体の回転を使ったスイングができているということだ。辻村氏が補足する。

「体が止まってしまえば手打ちとなり、フェードヒッターが一番嫌がる、左へのひっかけが出てしまいます。それが最終日は一度もありませんでした。普通は頭では分かっていても優勝争いの緊張感、女王争いの重圧、ロケーション…、様々な理由から手で合わせようとしてしまうもの。それだけ今のショットに自信があるということでしょう」

その“真っすぐ”飛んでいくショットに、磨き抜かれたアイアン、ウェッジショットの縦の距離感も合わさった結果3日間での20個ものバーディにつながった。

■パッティングにも見えたリズムの良さ

ショットに表れた自信、プレッシャーへの不安のなさはグリーン上でも表れていた。賞金女王争いをしているとは思えないほど、しびれているようには見えなかったという。

「不安がある人、苦手な人特有のパッティングの嫌な間は一切ありません。グリップしたら『スゥッ』っとテークバックに入る間が一定していました。1でパターに指先が収まり、もう次の2ではテークバックに入っている。そして3で打つ。この1、2、3のいいリズムが生まれていて、ヘッドがスムーズに動いていましたね」

一緒に回っていた辻村氏を「一切のスキがなかった」とうならせた稲見。このまま今週賞金女王を決めてしまうのか。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、小祝さくら、吉田優利、阿部未悠などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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