ゴルフの調子が「最悪」「絶不調」と言いながら、いざ蓋を開けてみれば、まるでゾーンに入っていると思えるほどの見事なゴルフを披露するケースは、頻繁ではないが、ときどき起こる。
10月の「ZOZOチャンピオンシップ」を制したときの松山英樹が、まさにそうだった。あのときの松山は、開幕前は「ゴルフはかなり悪い状態」、「10のうち1、2ぐらいしかない」と言っていたが、初日から好発進。2日目に単独首位に立つと、終わってみれば2位に5打差の圧勝だった。
今週、米シニアのチャンピオンズツアー最終戦では、64歳のベルンハルト・ランガーが3日目に年齢より1つベターな「63」をマークし、エージシュートを達成。ランガーは水曜日のプロアマ戦で腰痛を発症し、「棄権しようかどうか迷っていた」が、いざ出場したら、素晴らしいエージシュートで周囲を驚かせた。
そして先週のPGAツアー「ヒューレット・パッカード・エンタープライズ・ヒューストン・オープン」ではジェイソン・コクラックが優勝。彼もまた開幕前の練習ラウンドで「あまりにも調子が悪すぎて棄権しようかどうか迷った」そうで、実際、2日目はパットがことごとく入らず苦戦し、3日目の途上では一時は首位から10打も離されていた。
だが、最終日は前半でスコアを1つ伸ばすと、後半は13番からの4連続バーディで単独首位へ浮上。そのまま2位に2打差で逃げ切り、通算3勝目を挙げた。
彼らが「最悪」の状態から「最高」の結果を導き出すことができたのは、なぜだったのかと考えたとき、見えてくる共通点がある。彼らは試合中にスイングやギアを大きく変えたりはしなかった。何かを意図的に変えようとするのではなく、「自分ならできる」と信じた気持ちが、結果的に「最悪」を「最高」に変えてくれた。
ZOZOチャンピオンシップの際の松山は、不調の中でも「水曜日の練習で、なんとなく、いけるんじゃないかなというのはあった」。微かな予感を信じたことが、技術面に好作用をもたらし、それが勝利につながった。ランガーは腰痛を抱えつつ、「できる範囲でスイングしよう」と心に決めていた。無理をせず、最善を尽くそうと決意したことが、技術面を押し上げ、快挙につながった。
そして、コクラックも同じだった。「ショットは終始、しっくり来ず、パットも入らず、今週の僕のゴルフは決してグッドではなかった。それでも僕は勝つことができた」。
優勝するためには、日ごろの鍛錬や身につけた実力が求められることは言うまでもない。しかし、勝つために最後にモノを言うのは、やっぱり「気の持ちよう」、メンタル面である。自分なら「勝てる」「できる」と思えるかどうか、信じられるかどうかだ。
コクラックはカナダ生まれの36歳の米国人で、2008年にプロ転向し、11年に下部ツアーで2勝を挙げて翌年からPGAツアーに参戦。だが昨年10月の「CJカップ」で初優勝を挙げるまで、実に9年の歳月を要した。だが、1つ勝ったら、今年5月の「チャールズ・シュワッブ・チャレンジ」で早々に2勝目を達成。そして今週、3勝目を挙げた。
初優勝はジャスティン・トーマスを下し、2勝目はジョーダン・スピースを抑え込んで勝ち、その実感がコクラックの自信を倍増させていった。
「僕はここ数年、いいゴルフができていて、それが心の拠り所になってくれていた。人々は僕のことを勝つはずがない選手だと思っていたかもしれない。でも僕は、勝つに足るゴルフをして、そして勝つことができた」
プロ転向から9年、いや10年が経とうとしている今になって、コクラックが一気に3勝を挙げたことは、突然変異ではない。
松山の7勝目、ランガーのエージシュートがそうだったように、コクラックも積み重ねてきたものを気持ちによって開花させる術を覚え、実現できたからにほかならない。たとえ状況は最悪でも、最善を尽くせば、最高になるということを、彼らのゴルフが教えてくれたように思う。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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