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やっぱり「ゴルフは気持ち」だ!【舩越園子コラム】

ワールドワイド・テクノロジー選手権・アット・マヤコバを連覇し、「ミスター・マヤコバ!」と呼ばれて「アハハ」と照れ笑いするノルウェー出身の24歳、ビクトル・ホブランの表情がなんとも可愛らしかった。

昨年大会は72ホール目にバーディパットをねじ込み、1打差で辛勝。今年は2位に4打差をつけ、大会記録を更新するトータル23アンダーの圧勝だった。

しかし、その圧勝がアクシンデントによる大ピンチから生まれたことを思うと、ゴルフは本当に面白いスポーツだと感じずにはいられない。

大会開幕前日の水曜日の昼下がり。ホブランは練習場でダニー・リーとドライバーで「飛ばしっこ」をしながら練習していた。

「僕のドライバーで打ったら、もっと飛ぶんじゃない?」

そう感じたホブランは、自分のドライバーをリーに手渡し、競争心をあおられたリーはホブランのドライバーを思い切り振った。すると、ホブランのドライバーは「いくつかのピースになって大破した」という。

予備のヘッドは持っていたが、予備のシャフトは持っていなかったホブランは、たまたま練習場に居合わせた同じピン契約のジェームス・ハーンのバックアップ・シャフトを借り、ツアーレップたちの多大なる努力とヘルプを得て、なんとか翌日からの試合に間に合わせることができたそうだ。

しかし、応急処置で作られたそのドライバーは、ホブランの本来のドライバーより少しばかり短かく、「飛距離は10ヤードほど落ちた。でも、逆にフェアウェイ・キープ率は上がってくれて良かった」。

初日は首位から6打差の20位タイ発進。飛ばなくても正確だったドライバーショットへの安心感が、アイアンショットの精度をも高め、ショートゲームの冴えも日に日に向上。2日目は首位から3打差の3位タイへ、3日目は2位に2打差をつけて単独首位へ浮上。そして最終日は2位を4打も引き離し、堂々連覇を成し遂げた。

どんなときも前向きなホブラン。その姿勢は、彼自身の成長のプロセスと大いに関係がありそうだ。

はじめてゴルフクラブを握ったのは11歳のとき。エンジニアとして米国に単身赴任していた父親が母国に持ち帰ったクラブを使った。雪深いノルウェーでは屋外でゴルフができる時期はきわめて短く、ホブランがゴルフを覚えた大半はインドア練習場の中だった。

英語はホブランにとっては外国語だが、映画やドラマを観て覚え、オクラホマ州立大学に留学していた時期に磨きをかけた。

大学在学中の2018年、ノルウェー人としては初の全米アマ覇者となり、翌春、やはりノルウェー人としては初のマスターズ出場を果たして母国に新たな歴史を作った。

そうやって「ない」ものを「ある」に変えてきた経験と実績があるからこそ、ホブランは何かが起こったときもポジティブでい続けることができるのだと私は思う。

ショットメーカーと呼ばれる一方で、「弱点はショートゲーム」と言われ、ホブラン自身もそう感じていた。今週は「練習を積んできたショートゲームを試す」と弱点克服を心に誓って挑んでいた。

最終日は6バーディ、2ボギー。12番は寄らず入らずのボギー、15番はパーパットがカップに蹴られた。

「いくつかミスもあったけど、いくつも寄せワンでパーを拾うことができた。今週の僕のゴルフは、決してベストなゴルフではなかったけど、今週はベスト・ウィークだったと言うべきだよね」

ベストなゴルフではなくてもベスト・ウィークにできる。始まりはピンチでも、終わってみれば「ミスター・マヤコバ」と呼ばれて照れ笑い。

いつも前向きなホブランらしい、「いい勝ち方」だった。つまるところ、やっぱり「ゴルフは気持ち」である。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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