<全英オープン 最終日◇18日◇ロイヤル・セントジョージズGC(イングランド)◇7211ヤード・パー70>
今年最後のメジャートーナメント「全英オープン」は24歳のコリン・モリカワ(米国)の優勝で幕を閉じた。モリカワはこれで昨年の『全米プロゴルフ選手権』につづきメジャー2勝目。世界最古のメジャー、全英オープンで初出場初優勝を達成した背景には、直前のアイアン変更があった。
前週にスコットランドで行われた全英オープン前哨戦「アバディーン・スコットランドオープン」では71位タイに終わったモリカワ。「スイングはいい感じだったのに、アイアンが芯に当たらなかった」と本人は振り返っている。
飛距離が出るほうではないモリカワにとって、アイアンショットがスコアの生命線。グリーンを狙うショットのスコアへの貢献度を表す『ストローク・ゲインド:ティ・トゥ・グリーン』では、2位を大きく引き離す2.044で1位。全英オープンが始まるまでは2位だったパーオン率も、大会後に72.05%で首位に立っている。
アイアンショットを立て直したいモリカワは、スコットランドオープンの練習場からテーラーメイドのツアー担当者とやりとりを重ね、翌週の全英オープンでは7〜9番アイアンを、それまで使っていたマッスルバックのテーラーメイド『P730』から、より寛容性のあるセミマッスルバックのテーラーメイド『P7MC』にチェンジした。
もともとモリカワは、今年2月の「ジェネシス招待」までは4〜9番アイアンまでセミマッスルの『P7MC』、PWのみマッスルの『P730』を使っていた。その翌週の「WGC-ワークデイ選手権アット・ザ・コンセッション」では、7〜9番アイアンをPWと同じ『P730』に変更し、見事ツアー4勝目を飾っている。その後の試合では、4番アイアンのみコースによって中空構造の『P770』を入れたり入れなかったりしていたが、5・6番アイアンはセミマッスルの『P7MC』、7〜9番アイアン・PWはマッスルの『P730』といわゆる“コンボアイアン”を使い続けてきた。ショットが生命線だからこそ、セッティングには人一倍こだわりが強い。
ただ、スコットランドオープンではリンクス特有の地面の硬い芝の上から、『P730』の7番アイアンで風の影響を受けにくい低いドローを打ったとき、6,200〜6,300rpmとモリカワにとって十分なスピン量が得られなかった(普通に打ったときの打ち出し角は14〜15度で、スピン量は約7,000rpm)。スピンが足りないため、今までと同じ距離感で打つとショートしてしまう。一方で『P7MC』の7番アイアンで同じ低いドローを打つと、6,600rpmとスピンが増えたため、7〜9番に関しては『P7MC』ほうがいいと判断したのだ。
実はマッスルバックの『P730』よりもセミマッスルバックの『P7MC』のほうがソール幅は気持ち狭い。リンクスの硬い地面では、広いソールが邪魔で抜けが悪くなり、芯を喰った澄んだ音が出なかった。また、アイアン変更でスピンが増えたために低い球でも、グリーンに止まりやすくなり、大会4日間を通じて78.78%という高いパーオン率をマーク。スイング自体は変えることなく、うまく道具で芝に対応し、初出場初優勝につなげた。そんなモリカワは東京五輪には米国代表として出場する。日本代表の大きな壁となって立ち塞がりそうだ。
【コリン・モリカワの全英オープン優勝セッティング】
1W:SIM 8.0度 Diamana D+ Limited 60 TX
3W:SIM 14.0度 Diamana D+ Limited 80 TX
5W:SIM2 19.0度 Diamana D+ Limited 80 TX
4I:P770 DG Tour issue X100
5I〜9I:P7MC DG Tour issue X100
PW:P730 DG Tour issue X100
50度:MG2 DG Tour issue S400
56度:Vokey Design SM8(56-14F) DG Tour issue S400
60度:MG2 Hi-Toe DG Tour issue S400
PT:TP Juno
Ball:TP5(2021)
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