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山村彩恵8年ぶり予選通過の舞台裏 隣でかけた言葉は「逃げてスコアを作るな」【辻にぃ見聞】

今年から4日間大会となった「リゾートトラストレディス」は勝みなみの優勝で幕を閉じた。一方で山村彩恵が8年ぶりに予選通過を果たしたことも注目を集めた。その山村のキャディを務めていた辻村明志氏の目にはどう映ったのか。

■8年ぶりの予選通過 かけた言葉は「逃げてスコアを作るな」

山村は2012年にプロテストを合格して同年の「富士通レディース」で7位タイ、13年には「日医工女子オープン」で9位に入る活躍を見せた。だが、その後は長い不調に苦しみ成績を残せずにいた。

2年前から山村のコーチをしている辻村氏は今大会キャディを務めていた。「教え始めたときは、技術のスランプ、心のスランプの両方に苦しんでいました」。今でも思い出すのは家を訪ねてきて言われた言葉。「私はイップスですか?」。辻村氏は「そうだよ、と言いました。逃げる必要はない。隠す方がよくない。受け入れて立ち直っていこう」と言ったという。

ここまで戻ってくるのには3段階のステップが必要だった。「まずは練習場でできるようになること。次にコースでできるようになること。そして試合でできるようになること」。技術的な問題以上に心の問題が深刻だった。ひとつ前の段階ではできても、次の段階に行くとできなくなってしまう。「普通の選手ならやめていたと思います」と辻村氏は言う。「それでもやめなかったのは、好きで始めたゴルフをスランプで終わらせたくないという思い。それのみだったように見えました」。

まだ、すべての段階を完璧にクリアできているとは言えないなかで迎えた今大会。第一ラウンドの7番パー3で「+4」を叩いてしまった。また、いつものようにズルズル行ってしまうかもしれない。辻村氏はこう声をかけた。

「逃げてスコアを作ったら前には進まないよ」

ミスを恐れる気持ちがクラブを振れなくさせる。このままではそのときに戻ってしまう。「逃げて推薦してくれた人たちに恩は返せない。チャレンジしている姿を望んでいると思うよ」と鼓舞し続けた。コーチだからこそ一打ごとに丁寧に話し合った。その結果、第二ラウンドで「69」を出しぎりぎりで予選通過を果たした。

「まだまだ予選通過ですが、試合で自分らしいゴルフができたというのは自信になったと思います。これは試合でしか感じられないことです。これで今後がすこし楽になったのではないでしょうか。これからもう一山も二山もあると思います。でも、今のゴルフに対する姿勢があれば乗り越えていけると思います」

山村は苦しんでいた時期を振り返り、「悪かった時に3歩下がって客観的になることができていれていれば今のような状況はなかったと思う。どうすればクリアできるのかと突き進もうとしてしまっていました。一番調子が悪い時期に球を打ち続けてしまっていました」と言ったという。辻村氏も「練習で悪い方向に行ってしまうことは誰にでも起こりうること。がむしゃらにやることは悪いことではありませんが、見極めはすごく大事です」と同調する。

■技術的に変わったのはテークバック 再現性が向上

そんな山村が技術的に変わった部分として辻村氏が挙げたのがテークバック。辻村氏の大学の先輩でもある丸山茂樹と米倉知良が共同開発したシステムが置いてあるインドア新橋にあるAIGIAに行ったことがきっかけだった。スイング軸、移動幅、前傾角などいろいろなデータをとる中であることに気付いた。

「山村さんだけスイング軸のスウェーが大きかったんです。一緒に行ったほかの選手の倍近くありました。後ろに下がって前に行くからタイミングがまちまちになりやすく、10球打った時に小祝さんの数値はほぼ同じだったのですが、山村さんはバラバラでした。以前から後ろに引きすぎないようにすることは話していたのですが、実際に数字を見ると明確で感覚と数値を照らし合わせながら適性のテークバックを作りました」

タイミングがまちまちとなっていた原因が明確となったことが大きかった。「テークバックがずれていれば当然ボールに入っていくタイミングも悪くなりますが、それはダウンスイングだけで直そうとしても無理なこと。原因の根本が分かったことで修正しやすくなった。これが一番かもしれません」。今大会の山村のフェアウェイキープは56回中39回。上位とはいかないが、優勝した勝よりも上であり、戦えるようになってきた証拠でもある。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈、小祝さくら、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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