<アース・モンダミンカップ 最終日◇29日◇カメリアヒルズCC(千葉県)◇6622ヤード・パー72>
普段ひょうひょうと仕事をこなす男が思わずうずくまった。苦しいときも活躍を信じてバッグを担ぎ続けた川口淳(かわぐち・あつし)キャディは、渡邉彩香の優勝を見届けたあと、しゃがみ込み涙をぬぐった。
プロキャディは選手の成績によって収入が大きく変わる。渡邉の専属キャディとなった2017年はちょうど渡邉の調子が下降線をたどっているときだった。収入面だけを考えれば難しい状況だったかもしれない。だが、川口氏には「なんとかしてあげたいとかはなく、担ぎたかった」という思いのみ。その気持ちの中には渡邉への期待感が大きかった。
「ものすごい選手ですし、今は悪いかもしれないけどすごいことになるのは分かっていました。たまたま悪いときもあったけど、また良くなるかもしれない。もちろん、これから先はどうなるか分からない。ただ、こんなものじゃないと思っていました」
当時のその思いを信じ、シード喪失する苦境でも傍らに立った。「僕は良いときも悪いときもずっとそばにいて彼女のゴルフの情熱を感じながらキャディをやりたいタイプ」と話す男は、QTに行くことになっても渡邉と離れることなく大器の復活を信じ続けた。
そんな状況だったこともあり、元々今大会では優勝を目指していたわけではなかった。オフで固まってきたスイングを確認するのが主だった。「オフにスイングを作って初めての試合だったので、感じたことをまた次につなげよう、と話していました」。試合でどうなるのか。チェックという意味合いも多分にあった。
だが、結局はこの気持ちが勝利へと結びついた。川口氏が勝因に挙げたのは無欲だった。「最後まで優勝を意識しなかったことだと思います。まだまだもがいているなかで自分のプレーに集中していたのが良かったと思います。試合展開を意識せず、黙々と自分の仕事をこなしている印象でした」。変な情報を入れることなく、迷いなくクラブを振る。そんな状況が5年ぶりの優勝を生んだ。
初めてバッグを担いでから7年、専属となって2年。ようやく2人で手にしたタイトルだったが、ここで満足はしていない。「優勝はできましたが、スタート地点に立ったばかり。優勝は苦しかった時期のご褒美だと思っています。これから苦しいこともあると思いますが、乗り越えていきたい」。強い絆で結ばれた2人の強さは、まだまだこんなものではない。
<ゴルフ情報ALBA.Net>







