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初めての記者会見は…驚きでビクッ! 渋野日向子、1年前の初々しい表情【現場記者の“こぼれ話”】

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国内だけでなく世界各国で中止が余儀なくされているゴルフトーナメント。なかなか試合の臨場感を伝えることができない状況が続いています。そんななか、少しでもツアーへの思いを馳せてもらおうと、ツアー取材担当記者が見た選手の意外な素顔や強さの秘訣、思い出の取材などを紹介。今回は、のちの全英女王が1年前に見せた初々しい表情のお話。

昨年の「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」は、まだ売り出し中といえた黄金世代の一人が快進撃を続けました。それが渋野日向子プロです。前年にプロテスト合格を果たしたばかりの20歳(当時)は、国内公式戦という大舞台で、結果的に大会史上最年少優勝記録を塗り替える快挙を達成。一部のゴルフファンに知られる存在から、名実ともにメジャーな選手へとステップアップした大会でした。

この後、海外メジャーを制したことで、日本中…、いや世界にその名が知れ渡るわけですが、今思い返すと1年前の茨城の会場で見た姿は、初々しさにあふれたものでした。例えば大会2日目のラウンド後。初日を1アンダーの11位タイで滑り出した渋野プロが、翌日「68」をマークし一気に2位タイにまで浮上した後の会見での話です。

この日は、渋野プロにとって初めての会見でした。それまでに、選手の周りを記者が囲み、お互いに立ちながら話をする、いわゆる“囲み取材”は何度か経験。しかし、マイク、そして大勢の記者を前にして座り、質疑に応じる会見は少しばかり厳かな雰囲気も漂います。

その会場に、ラウンド後のアテスト(スコア申告)を終え向かった渋野プロ。多くの報道陣が、その到着を待っていました。しばらくして、選手が登場する扉がガチャリ。会見場にプロが一歩足を踏み入れようとします。その時、中の様子を目にした渋野プロは、ビックリしたような表情を浮かべ、一言「すごっ」とつぶやきました。そして、そのまま少したじろぐような素振りを見せながら、おそるおそるマイクの前へ。大勢の大人たちの視線が一気に集中する非日常空間に、いきなり“放り込まれた”わけですから、驚いても無理はない話です。

しかし、ひとたび会見が始まってしまえば、冒頭一瞬見せた緊張感などウソだったかのように“らしさ全開”になったのはさすが。のちに、渋野日向子といえば…、的な話になったソフトボール愛が広く知られるきっかけになったのも、この会見での話からでした。私もその話題にひっかけて、『“大ホームラン”が飛び出すか? ルーキー・渋野日向子がイーグル締めで2位浮上』なんていうタイトルの原稿を出したのですが、まさかこの時には、ここからわずか3カ月後に海外で超特大ホームランを打つなんて、予想もしていませんでした…。

そして、最後に優勝をつかみ取るその大会では、その日から連日会見に登場。2回目以降は、もはや慣れましたとばかりに“しぶこワールド全開”で、その場を笑いに包みました。全英制覇後は特に、会見場が渋野プロの“指定席”ともいえる場所になっていただけに、小さなリアクションの話ではありますが、最初の驚きの表情を思い出すたびにギャップを感じてしまうわけです。

また、このサロンパスでの優勝会見では、記者から『これで全英女子の出場も見えてきましたが?』(アース・モンダミンカップ後の賞金ランク上位5人に出場権が与えられるため)と問われるシーンもありました。この時の渋野プロは、大きく目を見開き、「そうなんですか!? いや〜…、出たいですね! 出られるんですか?」と“初耳情報”に興味津々といった様子。人生を変えた大会について意識し始めたのも、この時からだったようです。

それからは、あれよあれよの“大出世”。私も、この原稿を書いて、改めて時の流れのはやさを実感させてもらいました…。(文・間宮輝憲)

<ゴルフ情報ALBA.Net>