きょう26日に、千葉県にある新君津ベルグリーンCCで、日本一の障害者ゴルファーを決める「日本障害者オープンゴルフ選手権」が開幕した。大会は、あす27日(火)まで2日間の日程で行われるが、その初日の会場では、障害を抱える選手たちをサポートする企業の姿を見ることができた。
時折、強い雨も降ったあいにくの空模様の一日。最終的にはサスペンデッドになるほどで、ホールアウトした選手たちの疲労感も普段以上だったはずだが、ラウンド後の練習場は笑顔と活気に満ちあふれていた。自分のスイングを分析してもらう選手もいれば、真新しいクラブを振って驚きの表情を浮かべる選手もいる。また、レッスンを受けレベルアップへの真剣な表情を見ることもできた。この練習場で選手たちを待っていたのは、ブリヂストンのスタッフたち。その目的は、スイング診断やクラブフィッティングなどを行う『ブリヂストンゴルファーズドック』と、ブリヂストンゴルフアカデミーインストラクターによる『ワンポイントレッスン会』を実施することだ。もともと同社は、2022年から2年間行われた国内男子ツアー「ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント」のプロアマで、障害者ゴルファーたちがプレーする姿を見て感銘を受けたことをきっかけに、そのサポートに乗り出した。24年から、この日本障害者オープンゴルフ選手権の会場で同様のイベントを実施している。開幕前日の25日には、同社と契約を結ぶツアー通算2勝の堀奈津佳や、佐藤千紘、星野杏奈の3人の協力も得て、プロアマ形式の練習ラウンドを企画。さまざまな切り口を用意し、障害者ゴルファーたちの底上げに向けた草の根活動に尽力している。では、この取り組みは障害を抱えるゴルファーたちにとって、どのような意義をもたらすのか? 2024年から同社と契約を結び、この日本障害者オープンを4度制している吉田隼人は、「レッスンもあるし、きょうダメだったところや、普段から悩んでいるところをすぐに聞けるのはありがたいですね」と話す。それに加え、障害を抱える選手たちだからこそ感じるものもある。現在43歳の吉田は、24歳の時にバイク事故で右大腿を切断。障害者ゴルフの世界ランキングでは日本勢最上位の32位につけており、義足をつけ世界で活躍するプロゴルファーだ。30歳からゴルフを始めたが、「僕自身、義足になった時にプロから教えてもらいたいと思ったけど、最初は『義足の人に教えたことがないから、どう教えればいいか分からない』と言われた。そうだなって思い、独自でいろいろとやってきました」と当時を振り返る。「障害がある人に教えられる人はそんなに多くないから、みんなうれしいと思いますよ」。クラブフィッティングも、障害があることで消極的になってしまうというのは、参加者からよく聞くことができた話だ。それゆえ、ありがたさも身に染みる。この日、吉田は新クラブの試打を行い、同社の2026年モデル『BX1 LS』を初めて打ち、快音を連発していた。同社のスタッフのアドバイスで、シャフトやウェイトなどを調整しながらのテストは、「今のドライバーは雨が降るとボールが滑るけど、BX1はそれを感じさせない。わざと濡れたボールも打ったんですけど」など収穫も多かった。もちろん、この喜びは他の出場者も同じ。宮本晃輔さん(上肢障害)の姿は印象的だった。練習場でボールを打ち始めた時、エースドライバーがなかなか当たらずにいたが、ヘッドを現在、桑木志帆らも使用する『BX TOUR MAX』に替え、クラブフィッターが選んだシャフトを挿して打つと、不思議なまでにまっすぐでキレイなボールが打ち出し続けられた。これには本人も「これめっちゃいい」と言い、目を丸くするほど。「シャフトもメーカーによって、同じフレックスや調子によってこれだけ変わるんだなというのは気づきでした。障害があると、見て欲しいとか言いづらいけど、こういう場があると相談しやすい」。普段は「お小遣いゴルファー」と笑うが、真剣に購入を検討するほどの衝撃を覚えた。クラブフィッティングを担当した同社の五十嵐俊昭氏は、「宮本さんのように、より自分に合ったクラブ選びができるのでぜひ積極的に、相談に来て欲しいですね」と、願いを話す。五十嵐氏は今回のイベントに参加するのは初めてだが、「障害がある方という見方ではなく、ゴルファーとしてセッティングは一緒だと思う。選び方やスペックなどは障害によって変わると思うので、そういった点で気をつける部分はありますね」と、参加者と向き合った。レッスンを担当した、同社のゴルフスクール事業部部長の北島幸治氏は、「我々の仕事はとにかくゴルフを楽しんでもらうこと。人それぞれ楽しみ方も違うので、しっかり問診して、その方のゴルフスタイルを支援したい」と想いを語った。障害という部分については「無理をさせてケガをさせないように」という注意は払うが、考え方の根底にあるのは五十嵐氏と同じ。「その方が持っているパワーを最大限に発揮できるように、我々はスイングで補うことをやるだけ」。真摯に参加者の声に耳を傾け、短時間でその長所や短所をつかむことに全力を注ぐ。大会を主催する日本障害者ゴルフ協会専務理事の石塚義将氏は、「これまで障害者ゴルファーに対するフィッティングというのは行われてこなかった。ブリヂストンの方にも、毎年、障害者ゴルフについて知っていただき、そのレベルもアップグレードしていただけて協会として感謝しています」と語る。そして、こんな話も。「レッスンも非常に好評で、きょうは大雨でサスペンデッドになったんですけど、『イベントは続行しますよね?』という声が選手から集まったほど。ありがたいですね」。着実に選手レベルの底上げにつながっていることを、協会も実感している。吉田は「ここに出る人は向上心がすごいんです」と話す。イベントが行われた練習場での光景も、選手たちが新しいクラブに興味を示し、仲間同士でその感想を話し合ったり、アドバイスを送りあったりと、ゴルフ談義に花が咲き続けた。冗談も飛ばしながら、どの選手の表情も笑顔でいっぱい。純粋にゴルフがうまくなりたい。障害者ゴルファーの日本一を決める舞台は、選手たちのその想いと、それを支えようと尽力する企業の姿も強く印象に残る大会だ。(文・間宮輝憲)
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