滋賀県の琵琶湖カントリー倶楽部が、グレッグ・ノーマン(オーストラリア)の設計思想を取り入れた新たな18ホールへと生まれ変わる。2021年に改修した琵琶湖コースに続き、三上コースの改修が完了。11月、両コースからなる日本初の「グレッグ・ノーマン・シグネチャーコース」が誕生する。
1959年、名匠・富澤誠造氏の設計によって滋賀県初のゴルフ場として開場した同クラブ。93年の「日本オープン」、99年の「日本女子プロゴルフ選手権」、2009年の「日本シニアオープン」など、数々の主要競技の舞台となってきた歴史を持つ。19年にグレッグ・ノーマン・ゴルフコースデザインを設計パートナーに迎え、コース改修プロジェクトが始動。長年培ってきた歴史と伝統を継承しながら、現代のゴルフに求められる戦略性やプレーのしやすさを追求してきた。ノーマンは、日本との縁も深い。1977年、22歳のときに「くずは国際トーナメント」でオーストラリア国外でのプロ初優勝を挙げた。今回のプロジェクトについても、「琵琶湖カントリー倶楽部が持つ本来の魅力を失うことなく、ゴルフ体験そのものをさらに向上させること」が基本的な目的だったと語る。設計で重視したのは、日本の「里山」という、人と自然環境が共生する考え方だ。「自然の中に人工的にゴルフコースを押し込むのではなく、あたかもその土地に昔から存在していたかのように、周囲の景観と自然に調和するコース」を目指したという。既存のホールレイアウトを尊重し、自然環境への影響を最小限に抑えながら、特に力を注いだのがグリーンとその周辺エリアだ。ピンポジションやアプローチの角度によって攻略方法が変わり、プレーヤーが状況に応じた判断を求められる設計を追求。バンカーや池も、単にミスショットを罰するためではなく、リスクとリターンを考えさせる戦略的な要素として配置した。「既存コースの改修では、保存と近代化の適切なバランスを見極めることが重要」とノーマン。以前のコースを知るゴルファーが親しんできた面影を残しながら、新たな発見も楽しめるコースに仕上げたかったという。琵琶湖コースと三上コースは、それぞれ異なる地形や個性を持つ。その違いを均一化するのではなく、グリーンの造形やバンカーの特徴、戦略性と自然景観の関係性に共通の設計思想を持たせることで、18ホール全体の統一感を生み出した。ノーマンが特に注目してほしいと語るのが、三上コースの最後の3ホール。新たなシグネチャーコースでは、7番パー5、8番パー3、9番パー4が、それぞれ16番、17番、18番ホールとしてプレーされる構成となる。中でも、フィニッシングホールとなる18番パー4には、ドラマチックな展開を生み出すための工夫を凝らした。ティイングエリアの延長によって距離を変化させられる一方、広いフェアウェイは積極的な攻めを可能にする。しかし、グリーンに近づくにつれてフェアウェイは絞り込まれ、ショットの正確性が重要になる。さらに、大きな3段グリーンは、琵琶湖を模した池に隣接する。池が迫る難しい状況に加え、ピンの位置やグリーンの段によってもクラブ選択が問われる。「複数の攻略ルート、リスクとリターン、そして記憶に残るドラマが生まれる可能性。これらを兼ね備えたホールこそが、素晴らしい最終ホールだと考えている」単に新しいコースを造るのではなく、その土地が持つ魅力を引き出し、長く愛される場所にする。ノーマンは、琵琶湖カントリー倶楽部のプロジェクトを通じて、その設計哲学を形にした。(文・齊藤啓介)
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