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アドレスの瞬間に勝負は決まっている! 「息を吐く」だけでパッティングが変わる理由

「プレッシャーで手が動かない」「パットが安定しない」……その原因は“呼吸”にあるかもしれない。数々のプロを指導するティーチングプロの大本研太郎と、呼吸の専門家・大貫崇が、パッティングと呼吸の深い関係を語り尽くす。

【画像】しっかり吐くことが大事! 寝ながらできる呼吸トレーニング

■アスリートの9割ができていない? パットミスの元凶は「横隔膜のサボり」大本:普段のレッスンでもお伝えしているのですが、僕は「姿勢筋と呼吸筋は一緒」だと考えているんです。姿勢が良い選手、つまりアドレスで首が垂れずに脳へ酸素がしっかり回る状態を作れている選手は、スムーズでプレッシャーに強いパッティングができます。結局アドレスで体の関節運動はほぼ決まってしまうので、呼吸のしやすさはストロークの再現性に直結するんですよね。大貫:まさにその通りで、呼吸と姿勢は完全にイコールなんですよ。本来、呼吸で中心となって働くべきなのは「横隔膜」です。ただ、日本人アスリート1900人を対象にしたデータだと、約9割に呼吸動作不全があることが分かりました。横隔膜を正しく使えないと、代わりに首や肩などの「姿勢維持筋」を無理に使って呼吸をするので、アドレスに入った段階ですでに身体的なロス(損)が生じているんです。大本:それは面白いデータですね。実際、ジュニア時代に大人から頻繁に怒られた経験がある選手ほど、怯えから肩をすくめる「呼吸補助筋」で呼吸する癖が抜けていないことが多いんです。メンタル的な過去の体験と現在の呼吸、そしてアドレスの姿勢は本当に深く結びついていますよね。大貫:そうなんです。精神的な部分と呼吸は切り離せません。メンタル面で言うと、1分間の呼吸数を「6回」まで落とすと不安感や鬱症状が軽減するという研究結果があるんです。現代人は息を「吸いすぎ」ていて、それが体の力みやアドレスの崩れにつながっています。だからこそ、ゴルフ場へ向かう車中などプレー前の移動中から、息を長く吐いて呼吸数を下げるコンディショニングが欠かせません。大本:なるほど。ちなみに僕自身は毎朝、息を1吸って4吐く「1対4の呼吸法」を実践しているのですが、この呼吸法は専門家目線でどうですか?大貫:それは素晴らしい取り組みですね! 長く息を吐くことで自律神経が整い、脳にリラックス信号が届きます。一番のポイントは「二酸化炭素への耐性」がつくことです。体内に十分な酸素があっても、二酸化炭素がないと赤血球から細胞へ酸素をスムーズに渡せません。息を長く吐くトレーニングで耐性を高めると、緊迫した場面でもプレッシャーに飲まれなくなると考えています。大本:ちなみに、一般的に呼吸というと胸式や腹式を意識する人が多いですが、どちらを意識するのが正解でしょうか?大貫:実はどちらも〇〇式と付くぐらい特殊な呼吸法なので、基本的におすすめしていません。腹式でお腹だけを前に出すと腹圧が抜けて体幹が使えなくなり、腰にも負担がかかります。理想は吸った時に胸とお腹が同時に膨らみ、吐いた時に同時に縮む「基本の呼吸」です。しっかり息を吐き切って「肋骨を下げる(格納する)」ことで体幹がシリンダー状に安定し、地に足がついた強いアドレスが完成します。大本:肋骨の高さがポイントなんですね。お昼を食べ過ぎた後の午後のラウンドでパッティングの再現性がガクッと落ちるのも、その肋骨や横隔膜の位置が関係しているのでしょうか?大貫:まさにそれです(笑)。満腹になると胃に圧迫されて肋骨が上がり、横隔膜が平らになって機能しなくなります。結果として体の重心が高くなり、ストロークが浮ついて、ばらつきが出てしまうわけですね。大本:腑に落ちました。僕はスイングやパッティングの本質は「下半身リード」ではなく、「胸椎の分離(上半身の動き)」にあると考えているんです。みぞおち付近の胸椎7?9番あたりから力をスーッと「抜く」アドレスを提唱しているのですが、この意識によって胸椎が分離し、連動性が生まれます。大貫:「抜く」という表現は生理学的に見ても非常に理にかなっています。空気や水がパンパンに詰まったペットボトルって真ん中で捻れませんよね? でも中身を少し抜くと簡単にしなって回ります。体も同じで、アドレスでしっかり息を吐いて空気を抜き、肋骨を収めることで、初めて3次元的なスムーズな「回旋」運動が可能になるんです。■思考を捨てて右脳で打つ! ゾーンに入る秘訣は「アホ顔」?大本:あと、アプローチやパッティングは、フルショットと違って「脳が揺れない動き」だからこそ、過去のミスや「カップに入れたい」という雑念が浮かんできやすいんです。だからこそ思考や言語を司る左脳を捨て、感覚やイメージを司る右脳で打つフォーカストレーニングが不可欠なんです。そもそも、1メートルのパットはフェースが3度ズレていても入ります。ですので、技術指導より「カップの概念」をなくし、「構えた場所に打つ」ことだけに意識を絞るという右脳的な整理を徹底させています。大貫:脳のメカニズムを踏まえた素晴らしいアプローチですね。実際に深呼吸で呼吸数を下げると認知機能や集中力が上がり、それが頭の中の余計な左脳的雑念を静めると考えられます。体を落ち着いた状態に置くことで、自然と右脳的なターゲットや打感だけにフォーカスできるようになるのでしょう。大本:ゾーンに入る感覚ですね。僕が藤田さいきプロを指導し始めた時、最初にお伝えしたのが「アホ顔を作ってヨダレを垂らすくらいのボーッとした状態を作ろう」ということでした(笑)。一見冗談のようですが、この「アホ顔(無心状態)」こそが究極の右脳状態に引き込むスイッチだと考えています。大貫:いやあ、それは最高のアドバイスですよ! プレッシャーで奥歯を噛み締めると交感神経が優位になり、腹直筋に力が入って体が前後動作しかできなくなります。これがパットのダフリの大きな原因なんです。でも、緊張した時は少し顎を上げて前に出す「アイーン」の姿勢をとると、噛み合わせが解けて首のカーブが保たれ、一気にリラックスモードに入れます。大本:アマチュアの方は、プレッシャーがかかる場面ほど一回ゴルフから意識を外し、ご自身の「呼吸数」にフォーカスしてみてほしいです。数えることに意識を向けるだけで過度な緊張や雑念が消え、本来のスムーズなストロークを取り戻せます。脳は21日間続けると習熟・習慣化されるので、毎朝1分間、自分の呼吸数を数えることからチャレンジしてほしいですね。大貫:自分の平熱を知るように、まずは仰向けで1分間の呼吸数を測り、ご自身のスタート地点を知ることが大切ですね。アドレスに入る前に息をしっかり吐き切り、肋骨の状態を整える。それだけでパッティングのパフォーマンスは劇的に変わりますので、ぜひ普段の練習から取り入れてみてください。大本研太郎おおもと・けんたろう/研修生、ミニツアーを経験後、PGAティーチングプロA級を取得。スイング解析などの実践的なレッスンを中心に行う。ツアープロコーチとしても活躍。「GPC恵比寿」のヘッドコーチ。大貫崇おおぬき・たかし/呼吸コンサルタント。アスレティックトレーナー。BP&CO.代表であり、呼吸専門サロン「ぶりーずぷりーず」店主。呼吸関連の企業研究や商品開発など、呼吸コンサルティング事業を展開。

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