2024年限りでツアーから撤退した上田桃子や、2025年のプロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花らが所属する「チーム辻村」。そのチームを率いるプロコーチ・辻村明志氏に、ミート率を上げて飛距離を伸ばすコツについて、じっくり話を聞いた。
◇ ◇ ◇ボクは練習の中でも、とても素振りを重視しています。思えば、これは師匠である故・荒川博先生の教えでもありました。初めてコースで上田桃子プロと指導を受けたとき、息を止め、ひと呼吸での連続素振りを命じられたことを思い出します。最初、確か上田プロは7回、ボクは9回。それを何度繰り返したでしょうか。「筋肉痛で動けません。練習は午後からにしてもらえませんか」という翌日の上田プロからの電話が、昨日のことのように思い出されます。それは、改めて素振りの重要性を思い知った瞬間でもありました。ただ、1日に100回クラブを振ったところで、闇雲に振っているだけでは、身に付くのは体力だけです。必ずしも上達の近道ではありません。むしろ遠回りする場合もあるのです。ボクのチームに、体力もあり、強烈なヘッドスピードを持った練習生がいます。素振りも毎日欠かさない真面目な選手です。ところが、並外れた体力やヘッドスピードの割には、飛距離が出ません。時には小柄で非力な練習生に負けることもしばしばでした。この理由が何かといえば、ミート率が悪いからです。ミート率は「ボール初速(m/s)÷ヘッドスピード(m/s)」で計算され、ヘッドスピードが生むエネルギーがどれだけ効率的にボールに伝わったかを示す数値です。理想的な数値は、ドライバーの場合、プロで1.50、アマチュアで1.40とされています。0.1でも上げることを意識すると、スイングは良くなっていきます。プロを目指す前述の練習生のそれは、せいぜい1.46。この数値では、プロになれたとしても、まずツアーで勝つどころか、稼ぐことも難しいのは間違いありません。このミート率を改善するため、さまざまな視点からスイング改善を試みました。しかし、修正すべきは実はもっと単純で、当たり前のところにありました。それは「芯で打つ」という、基本中の基本です。前述の練習生の打点シールを見ると、何球か打たせましたが、打点がバラバラであることが分かりました。これでは飛距離が出るはずも、真っすぐに飛ぶはずもありません。次に特徴的なのが、ややヒールの上側に当たる傾向があることです。アマチュアの8割はヒールヒッターだとボクは考えています。そこにギア効果が加わるため、ヘッドは当たり負けして左回転、逆にボールは右回転、つまりスライスボールになるわけです。ややトゥ側に当たれば、ドロー回転して飛距離が伸びるプラス効果もあるでしょうが、ヒールに当たればマイナス効果しか見当たりません。いずれにしても、基本は芯でボールを捉えることです。芯で打てば、予測し難いギア効果は発生しないのですから。まずは打点確認用のシールを使って、自分の特徴を確認してみましょう。前述の練習生が『ある練習』をした後に打点シールで打点をチェックしてみると、まだバラつきがあるとはいえ、打痕が芯に近づいていることが分かりました。そしてトラックマンの示す数値は、理想の1.50に近づき、何球かは1.50を叩き出すこともありました。さて、その練習ですが、そんなに難しいものではありません。必要なのは空き箱一つ。ボールを入れた空き箱で構いません。これを、アドレスしたヘッドのトゥにギリギリ当たるくらいの位置にセットしましょう。この状態で、空き箱に当たらないよう素振りをするだけです。この練習では、大きな発見がもう一つありました。それは、たとえば100回素振りをすると、疲れからどんどん箱の外側を振るという事実です。疲れると体幹や体の回転ではなく、力任せの手打ちになるからでしょう。ヒール打ちの多いアマチュアは、さらにヒールに当たるようなスイングになるというわけです。数だけを意識した闇雲な素振りは、スイングを壊す危険性をはらんでいます。素振りで大事なのは、インパクトでヘッドの芯がどこを通るかを意識することです。そのためには、素振りの合間に腰から腰のシャドースイングを挟む、あるいはヘッドスピードを抑えたゆっくりの素振りも重要になります。ヘッドの上下に棒を2本置いて、インパクトゾーンを意識して素振りをするのも効果的です。荒川先生は、ボクたちにブン ブン振らせました。それは愛弟子の本塁打世界記録を樹立した 王貞治さんにも命じた素振りで す。しかし、それは常に頭の中で ボールを打つイメージを持った 素振りでした。だからこそ、いい スイングを体に染み込ませる、 一段上の高度な素振りだったの です。それが荒川先生の言うところの、「角の取れたいいスイン グ」。理想のスイングに近付く素振りだったのです。■辻村明志つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも指導。2025年は千田萌花、藤本愛菜をプロテスト合格へ導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフ指導に取り入れている。元ビルコート所属。※『アルバトロス・ビュー』944号より抜粋し、加筆・修正しています
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