2024年限りでツアーから撤退した上田桃子や、2025年のプロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花らが所属する「チーム辻村」。そのチームを率いるプロコーチ・辻村明志氏に、アイアンショットでややダウンブローに打つコツについて、じっくり話を聞いた。
【連続写真】理想的なU字軌道を描く 藤本愛菜のアイアンショット
◇ ◇ ◇私が教えるルーキー・藤本愛菜プロは、まだ優勝こそありませんが、出場23試合でメルセデス・ランキング14位(9月4日現在)と、プロで戦っていける自信とともに、本人なりに初優勝への手応えも感じているようです。その中で、ボクが注目しているスタッツがパーオン率です。現時点で72.76%を記録し、2位。春先は硬いグリーンでタフなセッティングが多い中、前半戦は難しいコンディションが続きました。その状況での数字だけに、このスタッツは見事と言うしかありません。さて、ボクの最後の師匠である故・荒川博先生の口癖の一つに、「(野球のように)ボールが上でも(ゴルフのように)下でも振り下ろし方は一緒」というものがありました。そして、その振り下ろし方とは?大根切り”だと言うのです。タテへの変化球が増えた最近の野球界では否定的な意見もあります。しかし、これは先生独特の極端な表現であり、最近になってボクはその真意が少し理解できた気がしています。まして、地面にあるボールを打つアイアンショットでは、真の意味での?大根切り”こそが究極の打撃ではないでしょうか。そのことは、この2年間の藤本プロの成長が如実に証明しています。ボクが指導を始めた高校時代の藤本プロは、ダウンスイングで体が先に回ってシャフトが寝て入り、クラブが振り遅れる、典型的なジュニアのスイングでした。まだ体ができていないジュニアが、飛距離を求めるあまり、あおり打ちになることは珍しくありません。ただ、それではプロテストには合格できませんし、ましてプロとして結果を残すことはできません。そこでボクが徹底して伝えてきたのが、「ボールに対してクラブは上から、内から、最短に」ということでした。いわゆるダウンブローであり、荒川先生が極端な表現で語った”大根切り”です。だからこそ、自分の後方に板を立てて、クラブが寝て下りて当たるミスが起こらないようによく練習します。実は、生前に荒川先生が上田桃子プロにも伝えた極意で、これによって上田プロのアイアンショットのスピン量は飛躍的に向上しました。物理的には、クラブを上から入れられるようになったことで、ボールがホップするような弾道になりました。ここでダウンブロー、もっと言えば?大根切り”という言葉を聞くと、多くのアマチュアは「ボールを上から打ち込もう」と考えてしまいます。その結果、上体から打ちに行く?ぶっつけスライス”のような球になるのです。しかし、本当の意味でのダウンブロー、?大根切り”とは、クラブをやや上から入れることです。アマチュアの多くは、手だけでボールを直接叩きにいくため、ボールに当てようと余計な力みも生まれます。それがアウトサイド・イン軌道の大きな原因です。一方、真のダウンブローは、スムーズな体の回転を伴います。ボクは「インパクトは低く長く」と教えています。安定した太い軸を中心に体が回転すれば、インパクトゾーンは自然と低く長くなります。上体から打ちにいった”大根切り”のインパクトゾーンがV字なら、正しいダウンブローはU字になります。ダウンスイングで沈み込みながら左へ回転するとタメが生まれ、ヘッドは緩やかにボールへ入っていきます。これこそが極意なのです。アマチュアの方には、自分から見てボールの右上10〜15センチほど離れた位置に、もう一つボールを置いて練習することをおすすめします。間違った?大根切り”のカット打ちでは、そのボールに当たってしまいます。緩やかに内側からヘッドを入れるためには、そのボールに当てないようにスイングする必要があります。また、パーオン率を上げるために、ラウンド中は二つのことを意識してください。一つ目は、グリーンをタテに3分割して狙うことです。一般的なグリーンはヨコ約20ヤード、タテ約30ヤードあります。そこで手前から10ヤード、20ヤード、30ヤードのラインを頭の中でイメージし、どのエリアに落として止めるのかを決めてください。例えば、奥ピンでもランが出やすいショットなら、手前エリアを狙うなど、この3分割のラインは、どこに止めるのかのイメージを描きやすくしてくれます。そして二つ目は、自分のピッチマークを必ず直すことです。これは単なるエチケットではありません。往々にして多くのアマチュアは、トータル距離しか把握していません。ボールがどこに落ち、どれだけコロがったかを確認できるため、自分のショットの特徴や課題だけでなく、グリーンの硬さや傾斜まで知ることができる貴重な情報源になるのです。■辻村明志つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも指導。2025年は千田萌花、藤本愛菜をプロテスト合格へ導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフ指導に取り入れている。元ビルコート所属。※『アルバトロス・ビュー』943号より抜粋し、加筆・修正しています
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