世界のトッププロたちが死に物狂いで勝利を争うグローバルツアー。そこで常に高い使用率と圧倒的な勝利数で“ツアーパターの王者”として君臨してきたのが、スコッティ・キャメロンだ。が、その「勝者の足跡」を過去10年強にわたって遡ると、静かな地殻変動が起きていたことが分かる。
2016年には勝利数の8割を占めたブレード型が、今年はここまで2割強と逆転。代わってツアーの主役になったのがマレット型の『ファントム』シリーズだ。タイガー・ウッズが築いた“ブレード絶対信仰”の時代から、絶対王者スコッティ・シェフラーらが牽引する現在の“ハイテクマレット”時代へ。2016-26のキャメロンパター「全世界ツアー826勝」のデータから、移り変わる「優勝パター」の十年史を読み解く。 ■十年で完全逆転! 形状別・勝利数の驚異的な推移 まずは、2016年から2026年にかけて、世界中の主要ツアーでスコッティ・キャメロンを使用して優勝した選手たちの「パター形状比率」の推移を見てみよう。数字はあまりにも顕著なトレンドを示している。
約10年前の2016年?2017年、ツアーパターの景色は今と全く違っていた。キャメロンパター勝数の実に7?8割が『ニューポート』やツアープロトタイプの『009』『タイムレス』といったブレード型だった。当時はタイガー・ウッズの代名詞である『ニューポート2 GSS』信仰が根強く残り「優れたフィーリングを持つ選手=ブレード型で繊細にタッチを合わせるもの」が主流派だった。
しかし、直近の2025?2026年を見ると、その比率は完全に逆転し、マレット型が全体勝数の7割以上を占めるに至った。今年のブレード型の勝率は前述の通り2割台まで落ちており、一部のツアーでは少数派扱いを受けがちに。この10年で選手たちの意識が「感性」から「徹底的なミス許容と直進性」へとシフトしたことが分かる。 ■ブレードから『5』への移行で、ファントム爆増 この形状の逆転劇をモデル別の推移で見ると、転換点が浮かび上がってくる。キャメロンの代名詞である『ニューポート』シリーズは、2016年に年間32勝、18年に35勝を叩き出す絶対的エースだったが、2025、26年には7勝にまで落ちた。
GSS製をはじめとする最高峰プロトタイプ『タイムレス』の勝利数も、22-23年の10勝以上から直近では2?3勝へと減少した。選手たちが次々と「入るマレット」へと移行した影響か、勝数が寂しくなる一方に見える。 ■22年に転換点。『ファントム』が新たな王者に 代わって玉座に就いたのが、マレット型の『ファントム(ファントムX含む)』だ。当初は異形とも言われた異素材複合ヘッドの数々だが、2020-21シーズンに24勝を挙げて巨大な存在『ニューポート』を逆転すると、22年には全体でもマレットの勝数がブレードを上回る転換点を迎え、以後も勝利を量産。
2025年には35勝、2026年は現時点でも31勝と、今や「キャメロンの勝利の3本に2本以上がファントム」という存在になり、かつてマレット市場を支えた『フューチュラ』も飲み込んで勢力図を塗り替えた。選手はファントムのどの形で勝ってきたのか。ここにも興味深いデータがある。 『ファントム』モデル別、累計勝利数(2019?2026)1位:5系(5 / 5S / 5.5 / 5.2)―――52勝2位:7系(7 / 7.2 / 7.5) ―――――22勝3位:9系(9 / 9R / 9.2 / 9.5)―――20勝
勝ち頭は小ぶりなウイングバック形状で、10年近く前から愛用者の多い「5系」だ。理由は「ブレード型から移行が最もスムーズだから」になるだろう。ウイングによる高MOI化の安心感もありつつ“トップライン型”で顔つきはシャープ、そして適度な操作性もある。過去4年間で毎年10勝以上をマークし続ける「ブレード要素が溶け込むマレット」になる。 ■今年は「9」、新形状「3」も勝ちまくり 一方で、近年は「オートマ」ニーズが急加速。2025年にはツノ型のウイングマレット「7系」が11勝して5系の勝数を逆転し、2026年はより高MOIな「9系」が11勝して現状はトップに立っている。芯を外してもブレづらく、高速グリーンを「直線的にスクエアに打つ」のに適したモノが好まれる一方に見える。
さらに今年は小ぶりで“ブリッヂ型”のコンパクトな新形状「3系」が突如として8勝。25日に市販されたばかりの『ファントム3.2』も魅力だが、特に女子ツアー(LPGAやLET)を中心に、操作性と直進性を両立する新形状として使用者を増やし、男子でもルドビグ・オーバーグやライアン・ジェラルドらがSG:Puttingを良化させた。 ■時代は「感性」から「確実性」へ ここ十年のパタートレンドの変遷は、そのまま勝者のプレースタイルの変化とも繋がっている。2010年代はタイガー・ウッズやジョーダン・スピースのように「卓越した感性を研ぎ澄ませて、ブレード型で開閉とタッチを魔法のように操る」姿に憧憬を抱いたもの。
しかし現在、PGAツアーで異次元の強さを見せる世界ランク1位のスコッティ・シェフラー(Spider Tour X)を筆頭とする、モダンゴルフの覇者たちは異なる。彼らが求めるのは再現性の高いスイングと、それを寸分の狂いもなく結果に直結させる「徹底した確実性の向上」にある。 開閉をネックで最適化し、打点ブレをカバーする『ファントム』や『Spider Tour X』が牽引するハイテクマレットは、コース攻略に「必須の武器」となった。伝統のブレードが持つ美しさや繊細さも依然魅力だが、勝者十年分のデータはあまりに冷徹かつ、説得力に満ちている。ツアーではマレットの新形状の供給も見られるが、次の10年でキャメロンパターがどう変わっていくのか、つぶさに見守りたい。
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