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PINGの開発者に聞いて衝撃「高MOIだと遅れる・垂れる・開く」と感じるのは日本人だけだった!

先週末の「ゴルフフェア」で来日していたPING開発者にインタビューする貴重な機会を得て、最新ドライバー『G440K』について改めて話を聞くことができた。すると「超高MOIヘッド」に関して、日本人の試打での感じ方と、それ以外の国での興味深い差が存在することが判明した。

【画像】前作より大きい!?『G440K』ドライバーを構えた顔

最新作『G440K』は、2年前の前作『G430 MAX 10K』よりも後方のウェイトが重くなってMOIが上がったにもかかわらず、巷で「振りやすくなった」と評判だ。他にも「前作より振り遅れない」「前作よりつかまる」「10Kなのにヘッドが途中で垂れたり、開いたりしない」との日本人の試打感想を伝えると、エヴァン・グリアー氏(PINGプロダクトエンジニア兼デザインエンジニア)にみるみる困惑の表情が浮かんでいく。

「結論から言うと、エンジニアの視点では【ヘッドが大きいから、MOIが高いから垂れる・開く】というのは科学的にはあり得ません。これはゴルファーの一種の先入観だと考えていて、日本人の独特な表現だと感じています。アメリカや世界でそういった因果関係は聞きませんし、我々は重心位置や空力、重量配分をミリ単位でアップデートしており、振りやすさを損なわずに真っすぐ飛ばす設計をこれまでもしてきました」(エヴァン) ■高MOIだから「垂れる・開く」はあり得ない なんと「高MOIドライバーだと、垂れる・開く・振り遅れやすい」といった因果関係を語るのは【日本人だけ】だと即座に否定するエヴァン。ただ「G440Kが前作より振りやすく、つかまりやすくなった」点については狙い通りだと言う。エンジニアという生き物は「因果関係の間違い」は、僅かなことでも許せないよう。

「他社の一部では10K達成のために平均的なゴルファーに最適と言えないほどヘッド重量が重く、バランスも大きくするケースが見られます。対して我々は『G440K』で逆にヘッド重量をわずかに『軽く』設計しました。アメリカでは3g、日本ではそれと同じかもう少し軽くなっているかもしれません。つまり、我々の10Kは他社よりも軽いのです。そして質問の答えですが、つかまりが良いのは意図的で、10Kの寛容性に加えて平均的なゴルファーを助けるためにそう設計しました。 つかまり(方向性)を左右する最大の要因は、重心位置のヒール・トウ方向の配置で、これがボールの行方に最も影響を与えます。我々は、僅かにつかまるようにこのドライバーの重心位置をそう設計しました。つまり、【ヘッド重量と重心位置の絶妙な組み合わせ】こそが、ご質問への答えになりますね。この最適なバランスを見つけ出すのは非常に困難なことでした。また、ボールスピードのために『フォースライン(力の伝達線)』の近くに重心を配置しています」(エヴァン) やり取りを通訳してくれたのは、ピンゴルフジャパンでプロダクト担当を長年務めてきた安斎伸広氏で、彼も記者と同様の問いをこれまで何度もアメリカの開発陣にぶつけ、その度に「跳ね返されてきた」と明かす。

「ピンゴルフジャパンでも日本のゴルファーの方々からよく聞かれてきた『遅れる・開く』などの声を、アメリカの開発陣にフィードバックし続けてきたのですが、これまですべて同じ回答で『あり得ない』に近い反応でした。英語ではダウンスイング途中に『垂れる・開く・振り遅れる』などの表現が、【トウダウン】という言葉一つに集約されがちです。たしか、重ヘッドを掲げた『G20』(2012年発売)の頃から『振り遅れ』の声が出始めたという個人的な記憶がありますが、当時もアメリカの開発陣は同じ回答をしていましたね……」(安斎氏) ■ハードヒッターでも使えるのが答えでは? 記者はエヴァンの言い分に納得できず、こう食い下がった。「前作の10KではPGAツアーの使用選手が少なかったが、今回の『G440K』はビクトル・ホブランを例に10Kなのにハードヒッターの使用者がかなり増えた。これは日本人の【高MOIなのに振り遅れなくなった】という試打感想の正しさを表しているのではないか?」。が、エヴァンはもちろん譲らない。

「ツアー選手たちが“良い”と感じるのは、数値上、上下のMOIが上がったことで打点のミスに強くなり、スピンが安定して飛距離が伸びるからです。日本人が感じてきた『高MOIが遅れるとか、開くとかの違和感』の類は、シャフトやヘッドなど【スペックが合っていない時の記憶がレッテルとして残っている】可能性が高いと感じています。ですから、ぜひ先入観を捨てて試してほしいですね」(エヴァン) たしかに、昨年ベン・グリフィンがPGAツアーで2勝するなど、ハードヒッターでも少数が前作で結果を出したのも事実。そして、「スペックが合わない時の記憶がレッテルになっている可能性」の指摘通り、日本ではフィッティングせずに「試打・購入」が行われることも多い。

合わないシャフトで重ヘッドを振れば、どんなクラブでも「振り遅れる」のは当然。その体験を「シャフトが合わなかった」ではなく「高MOIだから振り遅れた」と因果関係を結びつけるのは、たしかに早計だし間違いだ。事実、エヴァンも記者も試打した多くのゴルファーも認める通り、『G440K』が前作よりつかまるのは明らか。 ■「高MOI≒遅れる」固定概念は崩壊 「ヘッドが垂れる・振り遅れるなどと、あなたが何のことを言おうとしているかが完全には分かりかねますが……、我々は角速度の変化のことを『クロージャーレート(フェースの開閉率)』と呼びますが、それが一番近い表現でしょうか。あるいはフェースがスクエアに戻らない状態を『フェース・トゥ・パス(スイング軌道に対するフェース向き)』の問題として捉えたりはしますが……」(エヴァン)

そう、人によってスイングのどの時点で、どんなヘッドやシャフトの状態のことを「垂れる」「開く」「振り遅れる」と表現したのか?は、これまで具体的に状態が詳細に語られてきた訳ではない。あくまで個人的な感想で、その人の感覚論が万人に当てはまる訳でもない。エヴァンはPINGのエンジニア視点の具体例を明かし、どの状態を指すのか明示してほしそう。 ■PING開発陣に「フェースの状態」は明らか 「我々は初心者からツアー選手まで、色んなタイプのゴルファーを『Focalシステム』でテストしてきました。ここでは3Dカメラを複数備え、ダウンスイング時にフェースがどのように動いていくかを可視化できます。そのデータはシャフト設計やヘッド設計に役立てていて、具体的にデータセットの平均を取り、それぞれの方向におけるクラブの空気力学をモデル化することで、ヘッドのタービュレーターを最適化したりします。これほんの一例なのですが……」(エヴァン)

もしかすると、これまで我々メディア側が合わないシャフトで試打した打ち手の言葉を“そのまま”垂れ流してきたことが「間違った因果関係の固定化」を促してきたのかもしれない。『G440K』の誕生で「高MOI≒振り遅れる」という固定概念は、PINGに関してだけは「完全に崩壊した」と断言しても良さそうだ。(編集部M・K)

<ゴルフ情報ALBA Net>

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