このエントリーをはてなブックマークに追加

自炊や団体行動も強さのヒミツ ナショナルチームが取り組む異文化に慣れる“人間力”の成長【合宿潜入】

JGA(日本ゴルフ協会)ナショナルチームはアマチュアとして実績を残すだけでなく、その後、プロとしても日本のトップを走り、世界で戦う選手を数多く輩出してきた。選手たちはそこで何を学び、成長しているのか? 2月上旬のオーストラリア合宿に潜入し、その秘密を探った。その強みは競技力の向上だけではないことも見えてきた。

【写真】美味しそう! 男子選手が作った鶏肉のトマト煮

「ナショナルチームに入って成長したことは?」プロのツアーでも活躍する岩永杏奈(大阪桐蔭高2年)にこう質問を投げかけると、意外な答えが返ってきた。「チームで動くことが多いので、他の選手やいろんな人たちと協力する場面がたくさんあります。そのなかで、人と協力して何かをするという力が身に付いたのは、成長できたところかなと思っています」。技術やフィジカル、あるいはメンタル面など、ゴルフに直接的に結びつくことではなく、真っ先に挙がったのがこれだった。岩永や後藤あいらは「アジア女子アマ」に出場するため、途中でチームを離れたが、オーストラリアで行われた合宿では、朝食を各部屋のメンバーで協力して準備している。「最初は廣吉優梨菜ちゃんと同じ部屋でパスタを作ったりしていました。部屋が変わったので、途中からは小田祐夕ちゃんと佐藤涼音ちゃんと一緒にフレンチトーストも作りましたね」。ナショナルチームに入るまで料理はほぼ未経験。それでも「フレンチトーストは昨年の合宿でも作ったし、パスタは初めてだったけど、ちゃんと作れました」と誇らしげだった。同じ質問に佐藤涼音(ルネサンス大阪高1年)は「自分から発言する力がついたと思います」と答えた。何かを質問したり、相談することが苦手だったが、初参加の今回の合宿でそれが変化していったのだという。「何かを聞いても『自分で考えて』なんて言われそうで、なかなか口にできなかったんですけど、(テクニカルコーチの)岩本(砂織)さんに『分からないことがあれば、遠慮しないで何でも聞いて。ちゃんと答えるから』って言ってもらって質問できるようになりました」。今ではクレイグ・ビショップ氏らコーチ陣が説明をしている時から、質問したいことが湧いてくるようになったという。人としての成長というのはJGAナショナルチームが長年、取り組んできた課題であり、ユニクロや一般財団法人ファーストリテイリング財団が共感した部分。選手たちの言葉からその思いが確実に実っていることが分かる。前任のガレス・ジョーンズ氏、現在のビショップ氏と外国人がヘッドコーチを務めていることもあり、選手たちは英語でのコミュニケーションにも積極的だ。ナショナルチーム3年目の佐藤快斗(東北福祉大2年)は「最初は全然聞き取れなかったのがだんだん聞き取れるようになって、単語を並べるだけですけど、言いたいことが伝えられるようになってきました。机に向かって勉強とはいかないですけど、MLBの中継とかを見ていて、気になる言葉があったら調べたりして、少しずつ新しい単語を覚えています」。海外での活躍を目指す選手たちにとって英語は重要な要素。それを自然と学ぼうとする姿勢が身についている。ナショナルチームには「海外に来たら日本製品禁止」という意外なルールもあるようだ。「スーパーに行ったらヤクルトがあったんで、カゴに入れようとしたら『ダメ』って言われました。次の日もこっそりカゴに入れようとしたんですけど、やっぱり日本製のものはダメだって」と笑いながら明かしたのは田村軍馬(東北福祉大3年)だった。その場で理由をはっきり説明されたわけではないようだが、「海外に来たんだからなるべくその国の文化に触れようという方針だと思います。試合によっては日本のものが手に入らないかもしれないし、その環境に慣れておく必要もありますよね」と自分なりにその意図を理解している。プロゴルファーが海外の試合に出場したときに食事面で苦労するという話は何度も聞いたことがある。世界で活躍するために必要なのは技術だけではない。選手たちの話を聞いていると、そんなナショナルチームの考えが彼らをよりたくましく成長させていることがひしひしと伝わってきた。(文・田中宏治)

<ゴルフ情報ALBA Net>

【関連記事】