ルノーのスポーツモデルブランド、アルピーヌ。往年のモデルが復活したA110は誰でも気軽に走りが楽しめるスポーツカーとして人気を博した。そのA110をさらに過激に仕上げたのがA110 Rで、最新モデルはR 70のサブネームが与えられている。果たして、ゴルファーズカーとして使えるのか!? 無類のクルマ好きとして知られる松任谷正隆氏と編集部員との掛け合いで紹介。
編集部(以下、編):ははーん、これで来ましたか。松任谷(以下、松):どうかね。編:ゴルファーズカーとしては最悪に近いですね。松:まあ、そうとも言えるよね。編:松任谷さん、これでゴルフに行けますか? ゴルフバッグは助手席として、帰りも一人で運転するんですよ。松:だから、ゴルフバッグは宅急便だよ。で、帰りの運転は誰かに代わってもらう。楽しいぜ。編:まあね。でもそれって万人向けのアイディアではないですよね。松:知ってると思うけど、これ6月で生産終了だって。だから受注は3月まで。それもオーダーがいっぱいになった時点で受け付けられなくなるから、長くて1月までじゃないかな。編:僕、知ってますよ。松任谷さん、これ買おうとしてましたよね?松:いや、欲しいなとは思っていたんだけどさ。編:いやいや、広報車両をなんとか手に入れようと画策してたって話、知ってるもん。松:ああ、最初のA110 Rね。無理だとはわかっていたけどさ。編:松任谷さん、歳の割に過激なクルマが好きですよね。だってRなんてカーボンパネルのはめ殺しでリアウィンドウがないんですよ。都内でどうやって運転するの?松:これを見たまえ。最新型はオプションでカメラを通してバックミラーが見えるんだぜ。こういう手があったんだよ。編:まあ、その時点でそのオプションがあったかどうか……。松:そんなことどうでもいいくらい、あのクルマには魅力があったんだよ。ただでさえ、ノーマルのA110は良かったろ?編:僕、乗ったことないんですよ。松:えっ、うそだろ? あんな名車に乗ったことないの? かわいそうなやつ。編:そんな、敵の首を取ったような言い方しなくてもいいじゃないですか。
松:A110は、発表された時から話題の的だったからね。でも、当然昔のオリジナルA110よりは大きいし、重いし、期待はそんなにしていなかったんだよ。ところが……。編:そうですよね。最初は800万円程度だったんですよね。しかも運転して軽い、というところは昔のイメージを壊さなかったんでしょ?松:まあ、もちろんオリジナルとは別物だけれど、運転した時のあの羽根のような軽やかさは今だにお尻に染みついてるよ。編:おむつが必要ですね。松:なんだと? でもとにかく、誰にでも、恐怖を感じることなく飛ばすことのできるクルマだったんだよ。編:危ないじゃないですか。恐怖を感じなかったらいきなりスピンとか起こるでしょ。松:そういう意味じゃない。だから乗らないとわからないんだよね。編:今日乗るからいいです。松:まあな。君にもきっとわかると思う。編:松任谷さんがわかるものは僕にもわかります。松:まずノーマルが出て、次にサスペンション硬めのSが出て、ちょっとマイナーチェンジのようなものが出て、そしてついにRが出たんだよな。編:当時でもRはノーマルの倍くらいの値段はしてましたよね。松:そうなんだよね。びっくりだよ。馬力だってちょっとしか上がってないし。編:でもカーボン素材がふんだんに使ってあったわけだから。松:一番びっくりしたのはホイールだよね。あのカーボンホイールは1本100万円とかって言われていたからね。当時は前後違うデザインでさ。後ろのホイールは空力のためのフィンが付いていて、縁石とかにガリッとかやりそうだったんだよね。編:ガリッで100万円は泣きますね。松:まあね。でサスペンションも別物、っていう触れ込みだったから、どうせサーキット用にガチガチに違いない、と思い込んでいたんだよね。そしたら……。編:ふむふむ。松:ものの見事に裏切られてさ。スポーツカーとしては100点満点だったんじゃないかな。編:どういうことですか?松:路面の追従性が抜群にいいわけ。ということは、ボディは常にフラットで、ノーマルよりさらに怖さがないんだよね。編:だから、それは危ないって事じゃないんですか?松:違うんだよ。どこまでもコントロールできる感じかな。そして最終的にはこれ以上行くな、と教えてくれる感じ。恐怖を感じさせることなく、ね。編:そんなクルマってあるんですかね。松:それがこのクルマの魅力さ。ポルシェにもロータスにも、もちろんフェラーリにもランボルギーニにもないぜ。こういう感じ。自分が羽根を手に入れたような感じだよ。
■穴倉感!? 乗り込むだけで気分はアップ
編:では、さっそく味見をさせてください。おっと、これ4点式シートベルトですか……参るなあ。松:まあ、スカートで乗る訳ではないから大丈夫。編:ふうん、こういう感じなんだ……。松:あのさ、ちゃんと言語化してよ。編:穴倉感、ですかね。松:まあ、後ろが窓じゃないからね、暗いと言えば暗いな。編:それにシートも低いし、ダッシュボードはずいぶんシンプルでクラシックですね。松:まあでも、ナビをはじめ必要なものは付いてるよ。編:えっ、このドアノブ、ポルシェのRSみたいに紐を引っ張るんですか?松:そう見えるけど、ドアノブは普通にある。これは引っ張るための把手だな。編:なんだか紛らわしいなあ。エンジン掛けます。松:どうぞ。
編:なかなかいい感じの音じゃないですか。ライトウェイトスポーツ感が音からも感じられます。松:そうだね。1.6リッターで300馬力は今では控えめな数字だからね。それよりも、エンジンの振動の伝わり方がライトウェイト感というか、カーボン感というか、いい素材感が伝わってくるよね。編:ふうん、これがA110 Rかあ。なんだか気持ちは上がりますね。松:道具感としてもいいよね。変に高級でもなく、さりとて安っぽくもなく、走ることに特化しているぞ、という感覚かねえ。編:でも日本にもそういうクルマあるじゃないですか。それとはムードが違うのはなぜだろう。松:歴史なのかねえ。歴史が持つ本物感だよね。あとはオリジナルがあったという強みね。これは潜在的に来るよね。編:走りますよ。松:さあて、どう思うかな。編:なるほど。松:どうなの?編:ちょっと黙っててもらえますか?松:なんだよ。黙ってちゃ話にならないだろ。編:何だろ、この感じ。何にも似てないですね。松:そうだよね。編:軽やか、の一言に尽きますかね。松:充分に速いよね。編:暴力的ではないですよね。松:確かにそうだ。編:自然体だ。松:そうねえ。編:ミズスマシのようですかね。松:安定してるだろ?編:ノーマルはどうなんですか?松:これに乗った後だと、柔らかいけど揺れ残りがあったり、無駄な動きがあったと感じるだろうね。それに高速ではこちらのほうが乗り心地がいいからびっくりすると思うよ。編:マジックですね。松:やはりいいサスペンションを使うといいってウルゴンさんが言っていたらしい。編:それ誰ですか?松:開発ドライバー。編:なるほど。松:俺、彼の運転でクローズドコースを何周かしてもらったけど、コーナリング中のバランスが一番大事みたいなことを言っていたよ。編:へえ、こんなクルマがもう終わっちゃうのか。これは残念です。松:そうだな。厳しくなる排気ガス対策に勝てなかったって事だね。編:クラシックな味を残した最後のスポーツカーかもしれませんね。松:そういう意味ではポルシェ911より上だよね。
ALPINE A110 R 70◆全長_全幅_全高:4255×1800×1240mm ◆車両重量:1090kg ◆エンジン形式:直4DOHCターボ ◆総排気量:1798cc ◆最高出力:221kW(300ps)/6300rpm ◆最大トルク:340N・m(34.6kg-m)/2400rpm ◆ミッション:7速DCT ◆WLTCモード燃費:─km/? ◆定員:2人 ◆価格:1790万円取材・写真/松任谷正隆◇ ◇ ◇2025年の日本・カー・オブ・ザ・イヤー大賞を獲得!→関連記事で【爽快な走りが最高に気持ちいい! スバル初のストロングハイブリッド「フォレスター」に感動】を掲載中
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