「高反発ドライバー」は、名前の通り反発性能が高くて、競技では使えない違反クラブである。数字で説明すると、一般的に広く発売されているドライバーの反発係数(COR)は0.830以下。0.830を超えるとルール違反になる。
【画像】ルール違反の「488cm?」なのに、こんなに締まった顔なの!?
今年5月の「全米プロ」ではローリー・マキロイのエースドライバーが経年使用でCT値を越えたと判断され使用不可になり話題に。しかし、高反発は規制をはなから無視して反発係数を0.830以上に。理論上では反発係数が0.005大きくなると飛距離は5ヤード伸びると言われているが、本当に飛ぶのだろうか。 今回はJPDA(日本プロドラコン協会)所属のドラコン系女子・川村李咲選手に3モデルの高反発ドライバーを検証してもらった。 最初に打ったのは昔から高反発ドライバーを発売しているカタナゴルフの『ボルティオ ニンジャ プレミアム カーボンU Hi ドライバー』。高反発フェースになっているだけでなく、長さも47インチとルール上限の46インチをオーバーしている。
データを計測するとたしかにボールスピードは上がって、ミート率は驚異の1.51を記録。しかし、バックスピンが3000回転近くに増えてしまい、トータル飛距離は45.5インチのマイドライバーとほぼ変わらない結果だった。 「ゴルフ人生で初めて高反発ドライバーを打ちました。たしかに出球の弾き方にすごくスピード感はありますね。ただし、クラブ全体が軽いのでインパクトでの厚み、強さがちょっと物足りない。私はボールを長く押し込んで(くっつけて)ドローで飛ばしていくタイプなのですが、球離れが速すぎて押し込む感覚を出せませんでした」 『ボルティオ ニンジャ プレミアム カーボンU Hi ドライバー』はクラブ総重量が270g(SR)と超軽量設計になっており、飛距離の落ちたシニアゴルファー向きと言えため、ヘッドスピード42m/s前後の川村選手にはかなりアンダースペックだった。 【マイドライバー】ヘッドスピード 42m/sボールスピード 61m/sミート率 1.46打ち出し角 13.1度バックスピン 2282rpmキャリー飛距離 231ヤードトータル飛距離 252ヤード 【高反発 ボルティオ ニンジャ プレミアム カーボンU Hi ドライバー】ヘッドスピード 42m/sボールスピード 63m/sミート率 1.51打ち出し角 12.4度バックスピン 2938rpmキャリー飛距離 233ヤードトータル飛距離 253ヤード
高反発&長尺ではまだ足りなかったのか。続いて打ったのはムツミホンマの『488X 鳳凰チタン』。これは高反発にくわえて、長さも46.5インチ、ヘッド体積が488?という“トリプル違反”のドライバー。こちらはトータル飛距離が3ヤードほど伸びたが、トリプル違反級の期待通りとはいかなかった。やはり、川村選手の「押し込んで飛ばす」スタイルに、球離れの速い高反発は合わないのか。 「決して飛ばないわけではありませんし、インパクトの手応えと打球音の大きさも室内だと飛んでる感がすごいです。ただ、ヘッド体積が大きいのにゲンコツみたいな締まった見た目だし、ロフトもすごく大きく超ディープなので構え慣れません。上下に打点を外す人には安心感がすごくありそうです。でも、シャフトのしなり戻り方が私に合わないというか……。インパクトでロフトが寝てしまって押し込めないというか、球が上がり過ぎてロスする感じでしたね」 【高反発 488X 鳳凰チタン】ヘッドスピード 42m/sボールスピード 62m/sミート率 1.47打ち出し角 16.1度バックスピン 2169rpmキャリー飛距離 233ヤードトータル飛距離 255ヤード
ちなみに『488X 鳳凰チタン』もクラブ総重量は270g(SR)と超軽量設計になっており、川村選手にとっては明らかにアンダースペックと言えそう。 最後に打ったのが珍しいレディスモデルの高反発ドライバーで、7月15日発売予定のダイナゴルフ『ダイナミクス フェミーナ プレステージ』。こちらは反発係数が0.837と反発性能はトップクラス。ただし、レディスモデルなので長さは44インチだった。 結果はやはり短かったことが影響したのか、マイドライバーよりも飛距離がダウン。しかし、川村選手からは高評価だった。 「レディスモデルなのですごく軽くて、シャフトもかなり柔らかいのですが、短いこともあって一番振りやすかったです。このフェースは高反発ですけどしっかり押し込める感じがあったので、一般女性が打ったらたしかに飛びそう。あとデザインが千鳥格子な所とか、ちょっとレトロでカワイイ感じなのも新鮮に感じていいですね」 【高反発 ダイナミクス フェミーナ プレステージ】ヘッドスピード 42m/sボールスピード 60m/sミート率 1.44打ち出し角 14.0度バックスピン 2795rpmキャリー飛距離 220ヤードトータル飛距離 241ヤード
高反発ドライバーは、理論的には絶対に飛ぶはずであり、だからこそR&AもUSGAもルールで反発性能を厳しく規制している。しかし、今回打った高反発ドライバーはメンズモデルで270グラム台、レディスモデルは250グラム台のモデルが多いため、実はスペック的な対象者がかなり狭かったと言えそう。 ヘッドスピード42m/sの川村選手は「私は普段カスタムシャフトの6Sを使っているので、高反発は素振りの時からかなり軽いし、シャフトが大きくしなりすぎる感じがしたので、私のヘッドスピードだとタイミングを合わせるのが難しいなと感じていました。いい数字を出せなくてごめんなさい」と、申し訳なさそうに話していた。 今回テストした高反発ドライバーのスペックを考えると、男性だとヘッドスピード38m/s以下、女性だと35m/s以下のゴルファーが最も恩恵を受けられそうだ。(文・野中真一) ?川村李咲?かわむら・りさ/1999年生まれ、沖縄県出身。8歳からゴルフをはじめて、高校卒業後はヨネックスCCの研修生に。2019年頃からティーチングに興味を持ちはじめ、ジュニアゴルファーの指導をはじめる。2021年にはJPDAドラコンプロのライセンスを取得。現在はK’s Island Golfのコーチとして活躍している。@ralisa_golf
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