米国女子ツアー唯一のダブルス戦「ダウ選手権」は、イ・ソミ&イム・ジンヒの韓国ペアがプレーオフを制し、ツアー初優勝を果たした。日本勢は11人が出場。そのうち渋野日向子&勝みなみ、岩井明愛&千怜姉妹ら4組が日本ペアを結成した。
米国男子ツアーでも「チューリッヒクラシック」がダブルス戦として行われるが、日本ツアーでは開催されていない。男女ペアの「サトウ食品インビテーショナル チャリティ ゴルフ ペアマッチ」や「PGM × ACCORDIAチャリティゴルフ」、30歳以上の女子プロゴルファーを対象にした「LADY GO CUP」などは、いずれもツアー外競技だ。筆者自身、今回はダブルス戦を初めて取材した。事前に聞いていた通り、れっきとした公式競技でありながら、独特のお祭り感があった。実際に取材して、『こんな大会が日本でもあればいいのに』と心から思った。もちろん、選手たちは真剣だが、フェアウェイを歩く姿は普段よりも会話が多い。竹田麗央は昨年16回を含む、通算20回同組でプレーした山下美夢有とペアを結成。昨年は女王争いの最終日最終組で回ることも多く、お互いのプレーに集中する姿が印象的だっただけに、今回は並んで笑顔で歩く姿がとても新鮮だった。「こんなに喋ったのは初めて。気が合うことも多かった」と振り返り、「2人とも食べること好き」と食事の話などで盛り上がったという。そして、お気に入りの焼肉屋さんが同じであることも判明。さらに、常にクールな印象の竹田が、バーディパットを外してうなだれる様子も見られた。ダブルス戦だからこそ、喜びは2倍に、悔しさも2倍になるのかもしれない。吉田優利は、5歳年下の馬場咲希をペアに誘った。馬場は吉田を姉のように慕い、吉田も馬場を妹のようにかわいがった。吉田は馬場を宿泊先に招き、マネージャーの手作りディナーを3日間ご馳走した。コース上では馬場が吉田を追いかけ、常に隣をキープ。互いのショットやパットを称え合い、最後まで明るい会話が途切れることはなかった。日本ツアーでの吉田は“後輩キャラ”という印象が強かったが、今回は家族の長女らしい“姉御肌”を見せていた。渋野日向子と勝みなみは、今年もペアを組み、同じ家で1週間を過ごした。毎晩一緒に食卓を囲み、披露予定だったダンスを練習した。勝は「すごく楽しかった。あまり試合でも回ることもないので。Airbnb(宿)もシェアしているので、合宿みたいで楽しかった」と話すと、渋野も「ハハハ!」とシブコスマイルで反応。結果は予選落ちに終わったものの、表情は普段よりずっと明るかった。吉田は「誰とでも組める試合。シード選手という縛りもなければ、いろんなカテゴリーや国の選手と組むことができる」と、その魅力を語る。だからこそ、日本ツアーでの開催も「楽しいと思います。盛り上がる大会になる」と感じている。竹田も「(年に)1試合くらいはあってもいい。楽しかったし、新たな発見もあった。(日本に)あったら出たいなと思います」と話す。米女子ツアーは今季、33試合(非公式を除く)が行われる。36試合が予定されている日本ツアーでも、少しだけ肩の力を抜き、リラックスできる公式戦があってもいいのではないか。勝は日本でのダブルス戦はもちろん、米国と欧州の対抗戦「ソルハイムカップ」のようなイベントを開催してほしいと話す。「アレめっちゃ面白そう。日本は東西で。私、作ろうかな…(笑)」とニヤリ。鹿児島出身の勝は西のリーダーとして、東のリーダーは北海道出身の「小祝さくらちゃん」。数分の立ち話だけでも、あの選手、この選手…と想像は膨らんでいく。仲間がバーディを獲ったりナイスセーブをすれば、拍手してハイタッチ。ボギーを叩いても肩を抱いて励ます。その姿はロープ外に伝染して、観客も楽しくてほっこりした気持ちになる。いつもは真剣な選手たちが、少しだけ表情を和らげてプレーする4日間を取材し、新たな魅力を感じてとても心地良かった。(文・笠井あかり)
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