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ルーキー・六車日那乃もやっていた! 刀素振りは「ゴルフの技術向上にも大いに役立ちます」

ルーキーの六車日那乃もやっていたという模造刀を使った素振り。六車を教えるプロコーチの辻村明志は「ゴルフの技術向上にも大いに役立ちます」という。一体どんな効果があるのか?

【写真】“真剣”な素振りで作り上げた六車日那乃のドライバースイング

◇ ◇ ◇プロテスト合格前に、六車日那乃に刀を振らせる練習をさせていたことがあります。さすがに真剣は扱えませんから、模造刀を振らせています。とかく武道の稽古は精神力の鍛錬と見られがちです。もちろん、その効果も大きいのですが、ボクはゴルフの技術向上にも大いに役立つと感じています。具体的に模造刀を振ることがどのようにゴルフのスイングにつながるのか考えてみましょう。まず約1kgもある模造刀を、腕や手だけで振ることはできません。最初は誰もが力任せに振るのですが、100回振るだけで翌日は腕がパンパン。お行儀の悪い話ですが、翌朝、顔を洗うとき、手が動かずに顔の方を動かすしかありませんでした。では、手や腕ではなくどこで振るのでしょうか。重心を低くしてどっしりと構え、ブレない軸を意識したら、体幹を使って体全体で振るのです。そのためには、何より姿勢が良くなければなりません。地面にあるボールを打つゴルフでは、ややもすると猫背になったり、ボールを打つことばかりを意識して上半身がリキみがちです。しかし模造刀を握ると背筋が伸び、上半身が股関節にしっかり乗って、上体のリキみがなくなります。それによって刀の重さがいい意味で分かるようになります。刀に限らず道具を使いこなし、性能を十二分に引き出す第一歩は道具の重さを感じることです。道具の重さを知り、力任せに振ることがなくなると、体の近くを最短距離で刀を振り下ろすことが覚えられます。かつて真剣を使って、王貞治さんらを指導したのが故・荒川博先生でした。その自宅は荒川道場と呼ばれ、天井から吊るした新聞紙や藁の束を斬らせたと言います。読者の皆さんの中にも雜誌や新聞などで、そうした練習風景の写真を見たことがあるのではないでしょうか。生前の荒川先生の話によれば、王さんや広岡達朗さん(後のヤクルト、西武監督)ら門下生が、次々新聞紙や藁の束が斬れるようになる中、なかなか斬れずに苦しんでいたのが須藤豊さん(後の巨人ヘッドコーチや大洋監督)でした。その須藤さんは最後の最後、「一か八か自分の耳を削ぎ落とすつもり」のひと振りで、ようやく藁の束が真っ二つに斬れたそうです。剣を最短距離で体の近くで振り抜いた結果でした。ゴルフに例えるなら、インから下ろしてスクエアに捉える動きです。力任せに振れば振るほど、ワキが開いてヘッドは遠回りし、カット打ちになります。それでは藁は斬れないのです。いずれにせよ刀を振ることで、道具を最短距離に下ろすことを覚えられました。さて、刀を振るには、それを止める技術も求められます。ただ力いっぱい振り下ろしてしまうと、自分の足や体を斬ることがあるからです。実際、剣道の素振りのように上から下に振らせたときは、危なっかしくて見ていられないほどでした。剣道を思い浮かべてください。剣道では踏み込むと同時に、すでに打ち込んでいます。打ち込むと同時に、おへその前で刀を止めてもいるのです。これを“手足一体の間”と呼びます。これも荒川先生から教わりました。手足一体の間は、ゴルフとは無関係に思えるかも知れません。しかし一瞬にしてエネルギーを出すタイミングは、ボクは剣道もゴルフも同じだと感じています。ゴルフで一瞬にしてエネルギーを出す瞬間とはインパクト。剣道の打ち込みながらも、剣先を止めるタイミングである“手足一体の間”を、ゴルフは剣術にて学ぶべきでしょう。六車に初めて模造刀を振らせたとき、危なっかしくて見ていられなかったと書きました。腕や手の力で振るために、振り下ろした刀が止まらないからです。では、どのように止めるかといえば、手足が出ると同時に発せられる声なのです。具体的には声を出すことで手元が止まり、その瞬間に剣先は走りますが、ある程度のところで止まります。荒川先生はよく“インパクトはヘソで決めろ”と言いましたが、声を出して高まる腹圧で、一瞬にしてエネルギーを放出させるのです。声を出して息を短く吐く呼吸法を上手く使って振るコツを覚えました。実際、刀をクラブに持ち替えても、インパクトでタイミングよく声を出せない人が多いのには驚かされます。しかし、声を出して刀を振ることで、次第にこのタイミングが合うようになってきました。声を出す瞬間に手元が止まる。手元が止まるということは、スイングではヘッドが走り、クラブはあるべきフィニッシュの場所に収まるのです。さて、何よりこの練習の最大の成果は、振るのは模造刀ですが、“真剣”な素振りを知ったことだと思います。■六車日那乃むぐるま・ひなの/2002年生まれ、埼玉県出身。アマチュアの頃から活躍していたが、初めてのプロテストは不合格。21年9月から辻村に師事し、24年に5度目のプロテストで合格。ニトリ所属。■辻村明志つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子、六車日那乃らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。※『アルバトロス・ビュー』853号より抜粋し、加筆・修正しています◇ ◇ ◇ ●1位〜10位にランクインしたのは? 関連記事【女子プロの”スイング完成度”ランキング 岩井姉妹、小祝さくら、竹田麗央……No.1は一体誰?】をチェック!

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