50歳を過ぎてもレギュラーツアーにこだわり続けてきた藤田寛之。昨季は、23季連続で守ってきた賞金シードから陥落し、今季は生涯獲得賞金25位以内の資格でレギュラーツアーに参戦したが、賞金ランキング109位でシード返り咲きを逃した。一方、賞金ランキング2位で終えた国内シニアツアーに関しては、複数の出場権を持つために、来季以降も出るには困らない。
今年53歳を迎えた藤田は、それでも来季のレギュラーツアー出場を目指して、今月26年ぶりにファイナルQTに出場。そこで57位と上位に入れなかったため、レギュラーに関しては推薦での出場がメインとなる。来年のシニアメジャー3戦の出場権を獲得して、23年シーズンはいよいよシニア中心の転戦スケジュールが予想されたが、本人は下部のABEMAツアー出場も視野に入れている。改めて藤田に本心を聞いた。
■今シーズンはレギュラーとシニアを掛け持ちしてきて、来年はもう少しスッキリするのかなと思っていたら、下部ツアーも出るとなるとさらに複雑になりますね。
「ABEMAからレギュラーに上がる階段は考えてないですよ」
■QTのあとに権利があるから出るという話をしていましたね。
「そうそう。軸となるのはシニアの階段です。だけど推薦で出るレギュラーの階段も上りたいわけです。だからファイナルQTにも行きました。それもABEMAの理屈と一緒ですよ。『いまさらファイナルに行かなくてもいいでしょ?』という意見もあるかと思いますけど」
■ツアー通算18勝していて、12年には賞金王も獲得した藤田プロが、ファイナルQTに出て、下部ツアーにも出る。なぜそこまでするのかと、違和感を抱く人はいると思います。
「何度も言うけど、自分は“王道”にいる人間です。シードを落ちた人間が普通は何をするのかって考えたら、ファイナルQTに行くでしょうって話です。歴代賞金王とか、生涯獲得賞金6位とか肩書きがあるかもしれないけど、自分はセオリー通りに行動したわけです」
■昨シーズン、シードを落としたときは、生涯獲得賞金の権利よりもツアー出場の優先順位が高いQTに出るかどうか迷っていて、結局行かなかったですよね。
「自分も半信半疑の部分はちょっとあったんですけど(笑)、手嶋(多一)さんに、来年推薦で(レギュラーに)出る気があるんだったら、ファイナルに行くべきだって言われたんです。出る意思を表現しないで推薦だけもらうのは都合がいいだろって話です」
■では、ファイナルQTの順位に関しては一喜一憂していない?
「ないです。変な話かもしれないけど、20位以内に入って1年間出られたらどうしよう? っていう自分もいました。もちろん、20位以内に入りたい気持ちでは行っているんですよ。各部門で記録更新が続いたあの怖ろしいレギュラーツアーで、(ツアー対抗戦の)3ツアーズに出場した6人の平均年齢は24歳。自分もメンバーに入っていたシニアは54歳で、30歳差って口で言うほど楽なものではない。頑張れって言うのは簡単かもしれないけど、やる側はなかなか厳しいんです」
■ABEMAからレギュラーに上がることを考えていないなら、どうしてABEMAに出るんですか?
「それも同じ考えで、ファイナルQTで57位の選手はABEMAに出るのが普通です。来年はシニアツアーが主軸で、推薦がもらえればレギュラーツアーにも出たい。その2つで組み立てていったときに、空き週にABEMAがあったとしますよね。貴重な1試合があるなら出たいということです」
■しつこいかもしれませんけど、ABEMAに何があるんですか?
「そこにはチームセリザワの高柳直人とか、最近教えている黒木紀至(くろぎ・のりゆき)っていうのがいるんですよ。彼らと一緒に試合に行きたいっていうのと、あとは試合をやることによってプロは何かを発見できる可能性がある。もちろんABEMAもちゃんとした試合ですし、練習だけでは(発見は)無理なんです」
■1個年上でツアー通算8勝の手嶋多一プロも同じような境遇だと思いますが、手嶋プロからもABEMAツアーに誘われたりしているんですか?
「手嶋さんからも『ABEMA行こうぜ』って言われていますよ。あの人はすごいですよ。サードQTに出られないならセカンドQTから行くって言うんですから。来年も普通にサードから行こうぜって。それはプロとしてかっこいいですよね。名前の通った人はわざわざそんなことをしないけど、当たり前のことを当たり前にやっている」
■今季、国内シニアツアーで賞金ランキング2位に入った権利で、来年は「全米プロシニア」、「全米シニアオープン」、「全英シニアオープン」と3つの海外シニアメジャーに出られますね。
「そのために頑張りました。でも全英シニアと日本プロは日程が重なっているから(どちらも7月27〜30日)どうしようかなと思っています」
■日本プロの出場権はまだ持ってないですよね?
「そうそう。もうそういう立場じゃないからね…。予選会からだから、まだわからない(笑)」
今季はレギュラーのシード権と、国内シニアツアーで賞金ランキング上位に入って海外メジャー出場権の間で揺れながら1年を戦った藤田。来年は海外シニアメジャーと国内ツアーの間で悩める日々が続きそうだ。
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