<マイナビネクストヒロインゴルフツアー◇第6戦リオン・ドールコーポレーション/ゼビオグループチャレンジカップ 事前(本戦8月5日)◇28日◇ボナリ高原ゴルフクラブ(6293ヤード・パー72)>
将来ツアーで活躍することを目指す若手女子ゴルファーが経験を積むための場を提供するトーナメントとして、2019年に始まったマイナビ ネクストヒロインゴルフツアー(以下MNGT)に今シーズンから参戦している吉村悠菜(19歳)。
高校時代は開志学園(新潟県)に通い、女子高校野球に専念していた吉村。2021年高校3年時には全国高校女子野球選抜大会で、2番レフトで先発出場して見事全国優勝を飾っている。だがゴルフは高校卒業後に本格的に取り組み始め、今シーズンのMNGT第5戦Sanrio Smile Golf Tournamentが初めての試合だったという。
「高校時代に野球に専念していたのは決してムダではなかった」という吉村だが、3年間ゴルフとは無縁の生活を送っていたため、同世代の他の選手には後れを取っているともいえる。「プロゴルファーの知り合いもいないし、コーチもいません。自分でスイングのことを勉強しながら練習をしています」と現状を明かす。
生涯初の試合だったMNGT第5戦は5オーバー77で、出場選手40人中31位タイに終わり悔しい思いをした。自分の未熟さを痛感した吉村は、知人のつてを頼った。16年日本ゴルフツアー選手権覇者の塚田陽亮に、スイングを見てもらうチャンスをもらったのだ。
2日間の日程で行われた吉村のプチ合宿。場所は塚田の地元である長野県長野市。初日は塚田が日々練習をする72犀北ゴルフセンターでスイングを見てもらった。そして2日目は長野京急カントリークラブでのラウンドだった。
初日に練習場で、「右足の蹴りが早いから、右ヒザが前に出て手元が浮いたインパクトになっている。だから球が左右に散らばる」と塚田から指摘された吉村。2日目のコースでの課題は「いかにラインを出してゆくか」だったが、「大きな収穫を得ました」とラウンド後には満足な笑顔を見せた。
ラウンド中はさまざまなアドバイスを送りつつ、「可能性は十分ある」と吉村の背中を押した塚田。そして「2日間でたくさんいろんなことを話したけど、自分の中で取捨選択をすること。自分自身で考えることが大切。コーチにいわれたことだけをやっていると、試合で困ったときに自分では何もできなくなってしまうから」と、自分自身で考え成長していくことが大事なのだと強調した。
ラウンド後に「8月は5日に次の試合があり、24日からはプロテスト第1次予選があります。今回のアドバイスを生かして頑張ってきます。ありがとうございました」と吉村が礼を言うと、塚田から次のような実戦的なアドバイスもあった。
「ティショットを打つときに入念にティを挿す場所を決めているのはいいんだけど、ルーティンに時間をかけすぎている。もっとテンポよくやれば、余裕が生まれる。ピンチになったときや緊張する場面では、もっと遅くなって余裕がなくなるからルーティンは見直したほうがいいかも」
ピンチになれば考えることが増えるし迷いも生じるからだが、ルーティンがさらに遅くなれば要らぬ体の硬化を生むことにもつながるのだという。試合ではプレーが遅くなれば、同伴競技者にせかされることもあれば、競技委員が飛んできて注意を受けることもある。そうすれば「さらに緊張は高まる。プレーしている自分をもうひとりの自分が見ているような、客観的な視線も大事」だとも塚田は言った。
緊張した場面での対処については「まずは緊張のメカニズムを知ること。例えば緊張すると呼吸が浅くなる。たいていの場合、口呼吸になっていて心拍数が早くなっている。ノドが渇いていなくてもドリンクで口を湿らすこと。水を飲んだら口を閉じるでしょ。自然に鼻呼吸になる。4秒で息を吸って8秒で息を吐く深呼吸も効果がある」とアドバイス。
塚田からの値千金のアドバイスをいかに生かすか。吉村の本格ゴルフ人生は、まだ始まったばかり。次戦は8月5日にMNGT第6戦リオン・ドールコーポレーション/ゼビオグループチャレンジカップに挑む。(文・河合昌浩)
取材協力・72犀北ゴルフセンター、長野京急カントリークラブ
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