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昨季の獲得賞金0円で「ゴルフをするのが嫌だった」 下部で初戦を迎える藤本佳則の苦悩と光明

<Novil Cup 事前情報◇5日◇JクラシックGC(徳島県)◇7221ヤード・パー72>

国内男子の下部にあたるABEMAツアーでシーズン初戦を迎えるのはルーキーイヤーの2012年以来、10年ぶり。ツアー通算2勝、32歳の藤本佳則の新シーズンは「Novil Cup」から始まる。

■肩が外れそうな感覚でゴルフにならなかった

東北福祉大学時代は2年後輩の松山英樹が背中を追った存在。鳴り物入りで11年末にプロ転向した藤本は、期待通りプロ転向後5試合目の「日本ゴルフツアー選手権」でツアー初優勝を遂げた。その後もトッププの地位を築いたが、コロナ禍で統合された2020-21年シーズンは21試合に出場して予選通過なし。獲得賞金0円と屈辱的な戦いが続き、賞金シードを喪失した。生涯獲得賞金5億円近い男に何が起こったのか。藤本に直撃した。

「一昨年の秋に左手親指を痛めてクラブが振れなくなり、オフのあいだに指はよくなったと思ったら、昨年の開幕直前、3月に左肩がおかしくなりました。えげつないぐらい水が溜まっていたんです」。もともと左肩には不安を抱えていて、さまざまな治療を行ってきたが昨年は「全然動かないし、スイングしても感覚がなくなっていました。肩が抜けて左腕が落ちそうになる感覚です」。今まで経験したことのない症状に、スイングの感覚もおかしくなったままシーズンが終わってしまったという。

ショットは曲がり、ピンチに陥っても得意のショートゲームで何とかパーセーブするラウンドが続いた。「5(ボギー)寄りの4(パー)ばっかり」。藤本でなければ80台が連発してもおかしくなかった。パープレー付近では回れることができても、アンダーパーを出すのは難しい。「5月、6月、7月頃はゴルフするのが嫌になっていた。試合に出てもどうせダメなんだろうなっていうマインドでしたから」。スイングも立て直せず、それでもあきらめずに大会には出場し続けた。

■流行の理論も手伝って悪癖を見抜けなかった

「今、昨年のスイング動画を見ると何が悪いか分かるけど、昨年は動画を見ても悪い原因が分かっていなかったんです」。シーズン中は自分の悪い部分を気づけなかったが、シーズンを終えるとその原因がつかめた。アドレス時の前傾角度が深すぎてバックスイングでアウトサイドに上がり、ダウンスイングでクラブが寝てくる。フェードヒッターの藤本のゴルフ人生で初めてクラブが寝る形になっていた。

本来であればすぐに気づく点だが、ここ数年シャローイングと呼ばれ、ダウンスイングでクラブが寝ることはいいという理論が多い。「いろんな人にスイングを見てもらっても、ダウンがあかんという人はいなかったし、自分もそういうマインドにはなっていなかったんです」。

先輩選手やコーチら、多くの人に話しを聞いたが「結局、自分で分からないと本当の答えにならないと思うんです」。アマチュア時代から藤本を見ている阿河徹コーチ、トレーナーと相談しながら、自分なりの答えを見つけた。以前のように棒立ち気味に構えて前傾角度を浅くするなど修正を始めた。

「いい方向に進んでいると思います。ボチボチですよ」。以前のようなキレのあるフェードボールを取り戻しつつある。今季レギュラーツアーに出場できるのは推薦のみ。「ABEMAツアーで今やっていることの自信を取り戻して、シード復活できるようにがんばります」。獲得賞金0円のシーズンから再起をかけて、今季初戦を迎える。(文・小高拓)

<ゴルフ情報ALBA.Net>