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9年目の歓喜 保坂真由が圧巻初V、女王からの金言でショートゲーム開眼

<ラシンク・ニンジニア/RKBレディース 最終日◇30日◇ザ・クラシックゴルフ倶楽部(福岡県)◇6577ヤード・パー72>

プロ転向は2014年。9年目でプロ初優勝を飾った保坂真由が、照れくさそうに勝利を喜んだ。首位タイから出た最終日。一時は逆転を許したが、最終ホールで50センチにつけるベタピンバーディで追いつくと、プレーオフ1ホール目でもバーディを奪い、ぎこちないガッツポーズで勝利を祝った。

初優勝まで長い道のりだった。名門の埼玉栄高を卒業しプロテストに合格。アマチュア時代にはJGAナショナルチームにも在籍した。将来を期待されていたが、レギュラーツアーにフル出場した16年以外は目立った成績を残せずに、ステップ・アップ・ツアーが主戦場となっていった。

この9年間は、悔しい思いを重ねてきた。「すべてが足りなかった。ショットの精度もバラバラだったし、パターも下手くそ。体力もぜんぜんなくて、まったくダメでした」と振り返る。昨年のステップではパーオン率1位の成績を残したが、ショートゲームがショットの上達に追いつかなかった。

コーチとも相談し、さまざまなクラブでアプローチをすることに挑戦。「いままではうまくいかなかったけど、今週はチップインが3回ありました」と、目に見えてレベルアップした。「9番アイアンで転がしたり。前までは58度一辺倒でした」と、引き出しが増えたのが自信にもつながる。

20年の2月には鈴木愛に合宿を申し込んだ。「『こういうときはこう打った方がいい』とか、『ボール位置はこうしたほうがいい』など、教えていただきました」と、女王の門を叩いたこともあった。試合の練習ラウンドでも鈴木と回り、屈指のショートゲームを目でも盗んできた。そんな努力がようやく実り、歓喜の勝利とあいなった。

正規の最終18番ホールでは、168ヤードから6番ユーティリティを握って50センチ。プレーオフ1ホール目はピン奥7メートルにつけて、下りのパットを見事に流し込んだ。この2ホールだけを見れば、すべてが強者のゴルフ。ここまで見守ってきてくれたスポンサーに「今年は勝ちます」と言って出てきた初戦で、強い姿をもってその公約を果たした。

今年の11月で27歳。「きのうもきょうも組のなかでいちばん年上」と、すでにツアー界では“お姉さん”を実感する。いつもニコニコ、ほんわか系。最近怒ったことは? の質問には「うーん…」と考え込んでしまうほど、いつも優しげなオーラをまとう。そんな保坂が殻を破り、念願の1勝。「今年はステップの賞金ランキング1位を目指したいです」と、笑顔で宣言した。初戦Vで勢いづいたその先には、明るいシーズンが待っている。(文・高桑均)

<ゴルフ情報ALBA.Net>