2022年の米国男子ツアー初戦「セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ」ではタイトリストの新作『ボーケイデザイン SM9』を手にしたキャメロン・スミス(オーストリア)が記録的な勝利を飾った。
この『ボーケイ』シリーズは、世界的ウェッジデザイナーのボブ・ボーケイ氏がマスタークラフトマンを務めるブランドで、プロアマ問わず絶大な人気を誇る。そんなボーケイ氏が提唱するウェッジ哲学のひとつが「バンス・イズ・フレンド」というものだ。
よく「ハイバンスのウェッジはミスに強い」といった話を聞いたことはないだろうか。今やゴルファーの間では当たり前のように語られる定説だが、そもそもウェッジの『バンス』とは何を指し、どんな効果があるのだろう?
まず、バンスとはウェッジのソールにあるふくらみ・出っ張りを指している。シャフトを垂直にし、リーディングエッジを基準に水平なラインを引いて、そこからふくらみ・出っ張りの頂点までの角度を測定すると、バンスの“角度”が分かる。
このバンスの角度が大きいほど『ハイバンス』、小さいほど『ローバンス』と呼ばれる。明確な基準はないが、一般的には4〜8度など1桁の角度なら『ローバンス』、10度以上なら『ハイバンス』と呼ばれることが多い。
最新モデルを見ていくと、いわゆる『ローバンス』のモデルはわずかで、ほとんどがバンスの角度が10度以上の『ハイバンス』が増えている。これはつまり、バンスが大きいほどミスに強く、ゴルファーにメリットがあると考えられているからだ。
では、バンスの役割とは何なのか?
バンスを英語表記にすると「Bounce」で、「跳ねる・弾む」といった意味を持っている。その意味の通り、地面でウェッジのソールを“跳ねさせる”ことがバンスの役割なのだ。
そもそもロフトの寝たウェッジは、リーディングエッジ(刃)が地面に刺さりやすくなっている。もし、ソール面が平らでバンス0度のウェッジを作ったなら、ほんのわずかな入射角のズレでチャックリを連発することになるだろう。ボールをクリーンに拾う卓越した技術が必要で、月イチゴルファーにはおそらく使いこなせない。そこで効果を発揮するのがバンスだ。
ソールに出っ張りがあることで、リーディングエッジが浮き、驚くほど地面に刺さりにくくなる。さらに、ボールの手前でダフるような打ち方をしてしまったような場合でも、バンスがあることでソールが“跳ねて”、ヘッドが前に動いてくれる。また、多くのアマチュアが苦手とするバンカーにおいても、砂ごとボールを弾き飛ばすのに威力を発揮する。つまり、バンスがあることでダフリやチャックリといったヘッドが地面に潜るミスを防ぐことができるのだ。
このダフリやチャックリを防ぐ効果は、バンスの角度が大きいほど強くなる。それゆえに
「ハイバンスのウェッジはやさしい」と言われ、多くの最新モデルがハイバンス化しているわけだ。もし、グリーン周りのアプローチに悩んでいるなら、バンスの角度を見直してみるのがおすすめだ。(文・田辺直喜)
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