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どん底の春、全米敗退、五輪でメダル逸 畑岡奈紗を支えた強い思い

<ウォルマートNWアーカンソー選手権 最終日◇26日◇ピナクルCC(米アーカンソー州)◇6438ヤード・パー71>

未勝利となった2020年シーズンのぶんを取り返すように、畑岡奈紗が今シーズン2勝目を飾った。「複数回優勝できたのはよかった」と喜ぶその裏には、苦しかったこの1年の思いが詰まっていた。

昨年の開幕戦ではプレーオフで敗退。2戦目も自身のミスから勝利を逃し2戦連続2位。勝利こそないものの調子は上々だった。ところがコロナという目に見えない敵との戦いが始まると、ツアーは7月まで中断した。

子どもの頃から夢見た東京五輪も延期。苦しい期間を乗り越え、再開後は9月から3戦連続でトップ7を外さないプレーも見せたが、18年、19年と続いていたシーズン連勝記録は止まった。

年が明け21年はさらに窮地に追いやられた。2月からの参戦で初戦を52位タイで終えると、その後2戦連続で予選落ち。今年の海外メジャー初戦となった「ANAインスピレーション」でも67位タイと不振は続いた。5月中旬までに出場した8試合で3回の予選落ち。最高成績は予選落ちのない大会での31位タイだった。

転機は6月末。ツアー唯一のマッチプレーではグループステージを勝ち上がり決勝トーナメントに進出。光が差し込んだ。翌週の「全米女子オープン」では難コースで粘り強いプレーを展開。72ホールを終えて笹生優花と並んでトップタイに並んだ。悲願まであと一歩に迫ったが、プレーオフで惜しくも敗れ、海外メジャー制覇という大きな目標達成には至らなかった。

失意の敗戦後、「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」でも予選落ち。それでも前を向いて「マラソンLPGAクラシック」で2年4カ月ぶりの勝利を果たした。

そして迎えた東京五輪。金メダル獲得を大命題に掲げ臨んだ母国での大舞台。ここでも畑岡は悔しい思いをする。メダルに遠く及ばない9位タイ。「やっぱりオリンピックというのは今年の一大イベントでもあったんですけど、自分のプレーができなくて、長年の目標だった金メダルも達成できなくて、もう本当に悔しかったです」と振り返る。

そんな悔しい敗戦の連続を繰り返しながらも、「引きずっていてもしょうがないので、まだまだメジャー優勝とか目標はあるので、もうそれに向かって気持ちを切り替えてやるしかないなと思ってやっていました」と切り替えたかに見えたが、8月の「AIG女子オープン」(全英)では20位タイ。「その時もやっぱり悔しさはまだ残っていたので、やっぱり1カ月くらいはかかりました」。気持ちの沈みを感じながらの戦いが続いていた。

不振、悔しさの連続、そしてそれらを乗り越えての今季2勝目。「ひたすら練習するしかないですね。きっかけはないですけど、でもうまくいかなかったときもすぐ練習というよりは、少し気分転換じゃないですけど、1週間くらいクラブを握らなかったりとか。オフの切り替えも少しできるようにはなってきたかなと思います」。米ツアーで培った経験を力に変える術を手にした。

日本のエースと呼ばれ続け、米ツアーで奮闘してきた畑岡。期待を一身に背負い、ストイックに練習に励み、トレーニングで体をつくってきたその姿はエースにふさわしいもの。まだまだ22歳の畑岡にとっては、これから先、まだまだ栄光を勝ち取る時間が十分にある。

<ゴルフ情報ALBA.Net>