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全体1位の“正確ティショット”でスコアメイク 稲見萌寧はメダル圏内浮上にも慢心なし「メダルというよりスコアをよくしたい」

<東京五輪ゴルフ競技(女子) 3日目◇6日◇霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県)◇6648ヤード・パー71>

トータル7アンダー・6位タイからスタートした稲見萌寧が、5バーディ・2ボギーの「68」と3つ伸ばし、メダル圏内の3位タイに浮上した。「楽しく回って、スコアも伸ばせている。いい位置にいるので明日もスコアを伸ばしていけたら」という気持ちで、最後の18ホールに臨んでいく。

好調を支える要因は、持ち味のショット力。稲見といえば切れ味鋭いアイアンというイメージがあるが、今週はドライバーも面白いようにフェアウェイをとらえ続けている。

「ミスショットをしてもあまり曲がっていない。ラフから打つ回数が少ないから、そこがスコアにつながっている」。霞ヶ関に生い茂る密度の濃いラフは、潜り込みかた次第では、パーオンすらままならない状態となる。ここまで男女ともに多くの選手が、スコアメイクのためフェアウェイキープの重要度が増すと話してきたが、それを証明する結果が出ている。

稲見の3日間のフェアウェイキープ率は83.33%(42ホール中35ホール)。これは並み居る強豪選手をおさえ、ここまで全体1位の数値だ。飛距離こそ3日間平均232.1ヤードで60選手中41位という成績だが、パーオン率をみると79.63%の3位タイとこちらも上位につける。もちろんベースのショット力の高さはあるが、いい位置からグリーンを狙えているのも、この数字につながっている。

「(ティショットは)すごくいい状態ではない」というのは、完璧主義者を自負する稲見らしい部分だが、その一方で何度も「楽しい」という言葉も出てくる。初めての五輪が、いかに充実しているのかが伝わってくる。3つ伸ばして迎えた13番パー4では4.6メートルのバーディパットを沈め、力強いガッツポーズも飛び出した。ここで一時的に2位まで浮上。「上位で戦えているので1つのバーディが大きい。“やったー”って感じでした(笑)」。ストレスの少ないゴルフを続けられていることが、その笑顔につながる。

首位を走るネリー・コルダ(米国)とは5打差で、2位のアディティ・アショク(インド)とは2打差。あしたは、必死に銅メダル獲得を目指すだけではなく、銀、さらに金を争う姿が見たい。ただ本人は「メダルというよりも、スコアをよくしたいという気持ちが大きい。力を出しきって順位を上げられたら」と、あくまでも一つひとつバーディを奪うことだけを考えている。

連日35度超と酷暑のコースで行われているが、日陰を歩くなど、できる限り体力を消耗しないことを心がけ調子を維持している。夏には体重が落ちる傾向があることを、以前から口にしていたが、「先週測ったら増えていたので、そこは安心。食べられる時にちゃんと食べることもできてます」と“バテ”も心配はなさそうだ。日本ツアー屈指のショット力をこの国際舞台で発揮し、表彰台に一歩ずつ近づいていってもらいたい。(文・間宮輝憲)

<ゴルフ情報ALBA.Net>