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東京五輪会場の食事事情は「完全に海外向け」 試合では“熊手”でならすバンカーを警戒【奥嶋コーチの五輪現地レポ】

<東京五輪ゴルフ競技(女子) 初日◇4日◇霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県)◇6648ヤード・パー71>

いよいよ東京五輪の女子ゴルフ競技が開幕。日本代表の稲見萌寧は7時30分の第一組、畑岡奈紗は8時14分にティオフを迎える。稲見のコーチとして今年の躍進を支え、今週はキャディとしてバッグを担ぐ奥嶋誠昭氏が、コースの中から東京五輪をレポートする。

今回のテーマは食事。東京五輪に出場する選手やキャディはどんなものを食べているのか? 「朝ご飯も昼ご飯もコースで食べるんですけど、完全に海外向けのご飯です。サンドウィッチがあって、パンやスクランブルエッグ、シリアルが並んでいます。ごはんも一応ありますけど、日本のおかずはなくて、ごはんとキムチ、うどんも食べたくなりますね」。朝も昼もビュッフェ形式の食事で、意外にも日本食は出ないのだ。

日本チームには栄養士がついており、晩ご飯のみ日本食が出る。奥嶋氏は日曜日の夜はカレー、月曜日の夜は焼き鳥の串を抜いたものが出たという。栄養士が選手だけでなくそのキャディの栄養バランスも管理している。「オリンピックが始まる前に、栄養士さんに好きなものを書いてくださいといわれたので、『肉』って書いたんですよ。だから今晩も肉は肉だと思います」と奥嶋氏は笑う。五輪期間中は選手もキャディも外出が禁止されているため、コンビニに行ったり食事に出たりすることはできないのだ。

■熊手でならすバンカーは、ライによって硬さが変わる

先週の国内女子ツアー「楽天スーパーレディース」は、土曜日が最終日に設定されていたため、稲見と奥嶋氏は日曜日に会場入り。そのときに男子チームと情報交換を行った。「コースメモと実際が違うところがあって、『このヤーデージに気を付けたほうがいいよ』と(松山英樹のキャディを務めた)早藤君が教えてくれました。松山君とも情報交換をしています」。

その奥嶋氏が警戒しているのは風とバンカー。火曜日の練習ラウンドでは「けっこう風があってティイングエリアとグリーン上でかなり風が違いました」。さらに「451ヤードのパー4(9番)もあるので、萌寧ちゃんくらいの飛距離だと、アゲインストが吹くと、2つでピンまで届かないこともある」と考えている。

ではバンカーは何が難しいのか。「バンカーは通常のレーキではなくて、熊手で丸くならしてあるんです。だから砂が平らではなくギザギザ。男子でも同じ設定でしたよね。海の砂浜みたいな砂で重いし、ならしている順目に打つと硬くて、逆目とか横に打つと軟らかかったりする。難しいです」。このバンカーには世界トップの選手たちでも手を焼くかもしれない。

■同組の飛ばし屋のプレーを見て「力まなきゃいい」

稲見はきょうの第一組目でメキシコ代表のマリア・ファッシとティオフを迎える。ファッシは米国女子ツアーのドライビングディスタンスで278ヤードを記録し、ツアー全体で5位にランクインしている世界屈指の飛ばし屋だ。奥嶋氏にもその印象が強く残っている。「4年くらい前の全米女子オープンでほかの女子選手に帯同したとき、マリア・ファッシと一緒に練習ラウンドしたんです。そのとき考えられないくらい飛んでいた。萌寧ちゃんがそれを見て、力まなきゃいいなって思います」という。

きのう3日に、一緒に練習ラウンドを行った畑岡奈紗に関しては、「いい感じだと思います。奈紗ちゃんは『楽しみだけど緊張する』って言っていました」と奥嶋氏。それなら、初日第一組の第一打を打つ稲見はもっと緊張しそうだが。「本人はあまり気にしてないと思います。『そうだよ。一打目だよ』って言っていましたたから(笑)」となんだか頼もしい。どんな開幕ティショットになるのか楽しみだ。

それでも、スパイクでグリーンが荒れる後ろのスタートよりも、早いスタートのほうがスコアを伸ばしやすいのは間違いない。奥嶋氏も「初日はそこそこのスコアで回っておきたい」。目標スコアについては「いつも通りプレーする、です」と平常心で臨む。

奥嶋誠昭

おくしま・ともあき 1980年3月26日生まれ。神奈川県出身。ヒルトップ横浜クラブ内の「ノビテックゴルフスタジオ」で、体とクラブの動きを3次元で計測・解析する『GEARS』(ギアーズ)をはじめとする、世界最先端機器を駆使したレッスンを行っている。ツアープロコーチとして、稲見萌寧、高橋彩華、木下稜介らを指導。いずれの選手もツアー屈指のショットーメーカーとして活躍している。奥嶋氏のSNSにはゴルフの話題だけではなく、小学5年生の愛娘もときどき登場する。

<ゴルフ情報ALBA.Net>