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「一時期めっちゃ長く感じた」2022年 三ヶ島かなを最終戦まで支えた“家族愛”

<JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ 事前情報◇22日◇宮崎カントリークラブ(宮崎県)◇6487ヤード・パー72>

3月に開幕した国内女子ツアーもいよいよ最終戦。今季の“総決算”ともいえる今大会では、一年を振り返って多くの選手が「あっという間だった」と口をそろえるが、ディフェンディングチャンピオンとして迎える三ヶ島かなは「一時期めっちゃ長く感じました」と正直な気持ちを吐き出した。

昨年、三ヶ島に内緒で応援に訪れた父 最後は二人でトロフィーを持ってニッコリ【写真】

シーズン優勝者、メルセデス・ランキング上位者のみが集うこの“4つ目のメジャー”は、前年覇者が必ず出場できるわけではない。初優勝を飾った思い入れある地に立ち、連覇に挑むには、ほかの選手と同様に自力で出場権を掴まないといけないのだ。しかし、新型コロナに感染するなど序盤の不調に苦しみ、「15、6試合経ったときにすごくいきなり長く感じだして『まだシーズン終わらないのか』みたいな。そのときすごい調子が悪かった。良い時間は過ごせていたけど、一瞬長く感じました」。トップ10の回数も少ないわけではないが、悩む日々が続いていた。

特に“超高額賞金大会”としても知られる6月の「アース・モンダミンカップ」では、「あとひと転がりってところでそれが入らなくて」1打足らずに予選落ち。そんなとき、悔しがっていた三ヶ島を救ったのは、父・直(すなお)さんだった。

2016年にツアーに参戦してからは、親子鷹として二人三脚。かつては娘のキャディとしてともに戦っていた。しかし21年の「ほけんの窓口レディス」を最後にキャディバッグは担がず、それどころか会場にも来ることもめっきり減った。昨年のリコー杯でも「そっと見守ろうと思ってた」と話し、結局は同級生の誘いもあってコースに来るのだが、それでも余計なプレッシャーをかけたくないと来ることは、内緒にして陰から娘を見守ったほどだ。

父のもとを巣立ち、ひとりで遠征をするようになってから、ちょうど1年くらい経った頃に直さんが車で福岡から来てくれたという。そして『必要なのはこれだ』と日光東照宮の“見ざる聞かざる言わざる”のキーホルダーを手渡された。

そして『辛いときは頼っていいから。いつでも連絡していいから』と父からのひとこと。娘は「言葉にすごい救われましたね。やっぱり家族って大事だなと改めて感じた」と、たとえ隣にいなくても常に想い、見守ってくれる家族からの愛を、あらためて肌で実感した。

そして悩んでいる時間も、徐々に意味のあるものになった。「いろんなことに対して考えていたら、調子が悪いなりに自分の考えている時間というものが有意義に感じました。いろんなことをやりましたし、練習だったり自分を見つめ直したりした。それであっという間に一日過ぎたり、もう一週間終わっちゃったとか、来週はもっとこうしたいっていうのが生まれた日が多かったです」。つらさを抱えながらも、一歩一歩、着実に歩みを進めてきた。

アース・モンダミンカップ翌週の「資生堂レディス」はまたも予選落ちに終わったが、次戦の「ニッポンハムレディスクラシック」では4戦連続予選落ちからの“復活”ともいえる11位タイフィニッシュ。その際に「今シーズンの目標は最終戦のJLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップに出ること。昨年、初優勝した試合です。絶対に出なくちゃいけない。ディフェンディングチャンピオンがいないなんて恥ずかしいですから」と目標を明かしていた。そして、メルセデス・ランキング24位で連覇への挑戦権を手に入れた。

自己採点は「5、60点くらい」でツアー2勝目を目指した今季は「すごく大きなジャンプをするためにしゃがみ込んだ一年」と振り返る。思うようにはいかなかったことも多いが、先週の「大王製紙エリエールレディス」では2日目にホールインワンを達成。さらに最終日にはツアー自己ベストとなる「63」(パー71)を叩き出すなど、今大会への弾みは十分につけている。

月曜日には“ディフェンディングチャンピオン”として空港で歓迎セレモニーも行われた。「とにかく油断しないことだけ。ただそれだけです。自分らしいプレーを貫いてできたら、しっかり結果としてでてくると思います」。準備は整った。あとはより高く、より遠くに跳ぶだけだ。(文・笠井あかり)

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