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藤田さいきが11年ぶりVに号泣 夫の話には声詰まらせ「結婚してダメになったと言われ…」

<大王製紙エリエールレディス 最終日◇20日◇エリエールゴルフクラブ松山(愛媛県)◇6575ヤード・パー71>

6月の「宮里藍 サントリーレディス」でパットを外して18番グリーンで尻もちをついてから5か月。今度はその場から起き上がることができなくなった。だが、唯一違うことがある。今度は歓喜なのだ。藤田さいきはトータル21アンダーまで伸ばして、2011年の「富士通レディース」以来11年35日ぶりとなる美酒に酔った。

ウィニングパットを決めてうずくまる【写真】

3日目を終えて1打差の2位につけたが、首位を走るは名手・鈴木愛。前日の和気あいあいとした雰囲気が嘘のように、勝負師二人の戦いは張り詰めた緊張感の中での優勝争いとなった。そんななか、藤田は5番で最初のバーディ。さらに9番パー5では2打目をオーバーさせるほどのアグレッシブさで2つ目のバーディを奪って1打差のまま折り返す。

すると、折り返しての11番パー5で鈴木がまさかのボギー。首位で並ぶと13番でバーディを奪って頭一つ抜け出した。15番のチップインバーディで追いつかれたが、すぐさま3メートルを入れ返して並ばせず。

さらに16番ではパーパットを4メートル残したが、「これが入れば流れはいいだろうなと思った」とナイスセーブ。バーディが欲しい17番パー5では互いに奪えず首位のまま最終ホールへ。そして18番では1.2メートルで「どちらに切れるかわからない」という最後の試練が待っていたが、しっかりと沈めると、そのままうずくまった。

優勝の瞬間、スピーチと、そのたびに涙があふれた藤田だったが、優勝会見でも11年に結婚した夫・和晃さんの話になると再び声を詰まらせた。結婚したのは“いい夫婦の日”であり、藤田の誕生日でもある11月22日。前回の優勝は10月だったため、実はこれが結婚後、初めての勝利だった。

「感謝は言い表せないです。結婚してダメになったと直接言われているのも見ていたけど、そういうのを私に見せないで、ゴルフに集中させてくれていた。ずっと前向きなことしか言わない。二人で優勝を目指して頑張ろうとずっと言っていた。私が辛いときにも“大丈夫”と支えてくれた。本当に感謝しかないですね」

言葉通り、和晃さんは全身全霊で支えてきた。マネージャーとして、そして「身近な人がマッサージできないと戦えない」という話を聞けばケアの勉強もした。「昨日はほどよいハリがあったんです。今年優勝争いをしてきた時よりも良くて、あしたはいいプレーができるなって思っていました」。そんなことも容易に分かるほど、ずっとケアをして支えてきた。

普段、飄々としているように見える藤田だが、和晃さんの言葉を借りれば「人前でやるのが苦手なタイプ」。ずっとストイックに取り組む姿をずっと見守ってきた。藤田はあと一歩届かなかった勝利にもサラッと「悔しいですけど…」と言うに留まるが、実はオープンウィークにミニ合宿を張って、ミスをしたところを徹底的に洗い出し、1つ1つクリアしていった。そういったことがきょうのボギーフリーにつながったのは言うまでもない。

11年間、様々なことを乗り越えてつかんだカップ。「結婚してから長かったですね。険しく高い壁でしたけど、素晴らしい景色が待っていました」。照れくさそうに、でもうれしそうに。初めて2人でカップを持った。(文・秋田義和)

<ゴルフ情報ALBA.Net>