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驚いたプロテストのレベルの高さ そして受験者全員に贈る言葉【原田香里のゴルフ未来会議】

ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。山下美夢有選手が年間女王タイトルを早くも決めましたね。でも、シーズンはあと2試合残っているので、その話は後日に残しておきましょう。今回は先日行われた最終プロテストの話をさせてください。

ニュースでご覧になった方も多いかと思います(プロテスト関連の話題に興味を持たれるファンの方はとても多いと聞いています)が、大洗ゴルフ倶楽部(茨城県)を舞台に4日間72ホールで行われた最終プロテスト。20人が新たに日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)会員となることが決まりました。

合格ラインは72ホールを終えて20位タイまでと決まっているのですが、今年は通算3オーバー18位タイまでのちょうど20人でした。

それにしてもビックリしたのは合格した人たちのスコアです。大洗ゴルフ倶楽部は、大洗海岸のすぐ近く(10番ティに立つと波の音が大きく聞こえ、海も臨めるほどです)にある、黒松に囲まれた素晴らしいコースです。ただ、コースの下が砂地であることや、太平洋から吹きつける風が黒松林によって微妙に変わること。さらに林の上と下ではまったく風が違うことなどから、非常に難しいコースとして知られています。男子の日本オープンの舞台になったこともあります。

今回は、大洗名物の風がさほど強くなかったと聞いていますが、それでも「60台が1日くらいは出るかもしれないけど、うまくいった人で通算6〜8アンダーくらいかな」と思っていました。

ところが、あのコースでトップ合格の神谷そらさんは通算10アンダー。6アンダーまでに7人がいて、全部で12人がアンダーパーという結果には本当に驚きました。合格ラインが通算3オーバーまで、というのも同様です。

私は理事時代にはプロテスト担当だったこともあり、協会を離れてからも、受験生のみなさんのことはひそかに応援しています。

20位タイまでという厳しい合格ラインについては、多くの方から「何とかならんのか」と言われるのですが、トーナメントに出場できる人数が限られているという事情など諸々あり、議論の末にそこに落ち着いています。この先、どうなっていくかは分かりませんが、選手のみなさんとしてはその中で戦うしかないのが現実です。

現在、プロテストに挑んでいる人たちの多くは、子供の頃からプロを目指して、ゴルフにどっぷり浸っています。ゴルフの練習はもちろん大切ですが、学校に行ったり、同年代のゴルフ以外の友人たちとの時間を過ごすなど、ゴルフ以外の経験も、ぜひ、積んで欲しいと思っています。

一見、ゴルフとはまったく関係ない経験が、視野を広げてくれて、気が付けばゴルフに役立っている、ということも珍しくはないのですから。人生も豊かになるのはまちがいありません。

私が受験した頃(1989年春合格)は、現在とは違い3日間54ホールで通算12オーバーまでが合格ラインとなっていました。もちろん、テストの緊張感はありますが、それでもほかの選手を気にすることなく、自分のゴルフだけを考えていればいいという点で、今とはまったく違うものでした。

今のように順位が基準となっていると、試合とほとんど同じような感じになります。しかも、リーダーボードはありません。つまり、スコアがいくつまでか分からない20位タイに入っているかどうかを考えるのではなく、常に1打でも上を目指していくしかない状態です。

テストという名前はついていますが、賞金のない試合のようなもので、トップを取るくらいの気持ちで挑まないと難しいでしょう。

実力はそれなりにあるのに、何度も失敗してしまっている人は「テスト」を意識しすぎて、いつもと違うゴルフになってしまうのかもしれません。例えば、初日に6アンダーが出ると、その後は大事に守りに入ってうまくいかなくなり、そこで焦ってしまうようなことがあるのでしょう。

プロテストは最終目標ではありません。あくまでもトッププロへの通過点です。合格してもQTで上位に入らなければ試合に出られない。次は結果を出してシードを取り、毎年、職場を確保しなくてはいけない。終わりのないサバイバルゲームが永遠に続くのが、プロの世界なのです。

テスト合格を目標にしてしまうと、そのことを忘れがちになります。こうなると、ハードルはさらに高くなると私は考えています。

今回、合格したみなさんには、心からおめでとうの言葉を贈りたいと思います。この先も厳しい道が続きますが、どうか自分のペースでトッププロを目指してください。合格できなかった人たちのことも、応援したいと思っています。今回は残念な結果に終わりましたが、みなさんがこれまで努力してきたことは決して無駄にはなりません。再び、プロテストに挑戦するにしても、違う道を選ぶにしても、頑張った自分に誇りを持って、それを糧にしていっていただきたいと思っています。

■原田香里(はらだ・かおり)

1966年10月27日生まれ、山口県出身。名門・日大ゴルフ部にで腕を磨き1989年のプロテストに合格。92年の「ミズノオープンレディスゴルフトーナメント」でツアー初優勝。93年には「日本女子プロゴルフ選手権大会」、「JLPGA明治乳業カップ年度最優秀女子プロ決定戦」勝利で公式戦2冠を達成。通算7勝。その後は日本女子プロゴルフ協会の運営に尽力し21年3月まで理事を務めた。

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