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ひとりの人間として人生を考え、プロの“仕事”を再確認する【原田香里のゴルフ未来会議】

ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。大きな台風の被害は、大丈夫だったでしょうか。被災された方には、心からお見舞い申し上げます。

台風の合間を縫うように行われた先週の「住友生命Vitalityレディスクラシック」では、19歳の尾関彩美悠さんが初優勝。その前の週の「日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯」の川崎春花さんに続くルーキーの優勝は、ツアーに吹く新しい風を感じさせるものでした。

一方で、何度か書いているように、ベテラン選手も存在感を示しているのが、層の厚さを示しています。余談ですが、男子ツアーでも、若手が頑張り、中堅、ベテランが踏ん張る様子が最近はよく見られて面白いですね。先週の「ANAオープン」のように、32歳の大槻智春選手が31歳の石川遼選手をプレーオフで下した決着は最高でしたね。あのバックスピンで直接カップインさせるイーグルは、男子ツアーならではだと思います。

女子でも男子でも、新しい選手が出てくることは、ツアーとしては歓迎すべきことです。一方で、そこでプレーする先輩プロたちにとって脅威であることもまた、事実です。今の10代、20代前半の選手は、ジュニア時代からプロを目指してゴルフをし、狭き門を通過してすぐに、トーナメントで活躍することも増えています。そうした道筋を、協会(JLPGA)側もつけてきたし、選手側もそこを目指してきているからこそ、できていることです。

ただ、ツアーに出場できる選手の枠は限られています。新しい選手が台頭すれば、当然、そこから外れてしまう選手が出てくることも確かなことで、押し出される格好になった選手たちは、復活の道を探ることになります。

勝負の世界ですから、仕方のないことです。それでも若い選手が台頭してきたときに、20代後半から30代で調子を落としている選手などは、気持ちが落ち込むこともあるでしょう。アスリートの宿命といってしまえばそれまでですが、故障しても不調になっても、保障はどこにもありません。

一度、調子が悪くなって第一線から離れたりすると、カムバックするにはそれなり以上の努力をしなければいけないからです。そのことは誰もが分かり過ぎるほど分かっているはずです。それでも、一度、もがき始めるとそこから抜け出すのは想像以上に大変です。

若手が次々に活躍するということは、思っているより短いサイクルで世代交代が起きているということです。若い子が頑張っていて、同世代が減っていくと気持ちが消極的になるのも無理のないことです。けれども、体力的な違いはあっても、ゴルフは年齢の影響を受けにくいスポーツです。経験がプラスに働くことも多いので(マイナスに働くこともありますが)年齢を気にせず、自分のペースで頑張って欲しいな、と思います。

また、考えて欲しいのはゴルフだけでなく、ひとりの人間としての自分の人生です。私も若い頃はそうでしたが、日々のゴルフのことしか考えられないという時期は確かにあるでしょう。けれども、競技人生が長いゴルフであっても、いつかはプレーだけではやっていけないときが来ます。

結果を出しているうちは注目されて、周囲にチヤホヤされますが、結果が出なくなれば驚くほど周囲に人がいなくなる。プロゴルファーのほとんどが、そんな経験をしています。そのとき、付き合っていける人がどれだけいるのか。それこそが人間としての財産なのではないでしょうか。後輩たちには、プロゴルファーとしてだけでなく、人間として目指すのがどこか、ということも折に触れて考えることを勧めたいです。

もうひとつ、以前から気になっていることがあります。クラブや用具・用品のメーカーさんとのコミュニケーションについてです。私が現役だった頃とは時代が違うということは重々承知しています。それでも、変わらないこともあると思うのです。

メーカーさんが、プロゴルファーと契約する大きな目的の一つが、提供したクラブや用具・用品を使用したプロが活躍することで”広告塔“となる、ということがあります。でも、ほかにも大事な仕事があるはずです。提供したクラブや用具・用品に関してプロの立場からの意見を聞く、というものです。

契約内容はそれぞれ違うと思いますが、それでも「もっとこういうクラブを使いたい」「このクラブのここをこうして欲しい」とか、「このウェアはスイングするときにここが邪魔になる」「シューズのソール形状が、グリーンに傷がつきやすい」などというプロからの意見は、メーカーにとっては大切な情報です。プロ側もそれをフィードバックするということは大切な契約の一部なのではないでしょうか。

スポンサーを大切にする気持ちは分かりますが「契約してもらっているのにそんなこと言えない」と話す選手がいることには、正直、驚いたことがありました。メーカーさんはプロを育て、プロは”広告塔“になると同時に商品についてアドバイスをする。時代は変わっても、お互いにとって有益なこの関係は、今も変わらないと思います。

確かに選手としては、優勝したり、いい成績を出していないのに言いにくい、ということはあるかもしれません。でも、双方コミュニケーションをとって意見交換をすることは、プロにとっても勉強をするチャンスでもあります。プロとしてのプライドや自覚は、プレーするときだけでなくそういうことも必要なのではないでしょうか。

<ゴルフ情報ALBA.Net>