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ドライビングコンテストでみせた岩井姉妹の“ファンを楽しませたい”気持ち【記者の目】

「住友生命Vitalityレディス 東海クラシック」第2ラウンド終了後に行われた「ドライビング女王コンテスト」。日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が唯一公認しているドラコンコンテストであり、同大会の恒例行事は、302.3ヤードを記録した穴井詩が3年ぶり3度目の女王に輝いた。

持ち球は2球。1球目はそのとき暫定1位だった295.0ヤードを超えられず、ツアーNo.1の飛ばし屋は窮地に追い込まれていた。そして最後の1球でみせたこのビックドライブ。穴井が力強く振り抜きドローの球筋を描いた打球が、ティイングエリア横に設置されていた弾道追跡モニターで300ヤードを超えたことが分かると、見守っていたギャラリーは「おお!」という歓声とともに拍手を送った。

するとコンテストに参加したある選手の姿が目に入った。このとき椅子から立ち上がり手を高く上げてスタンディングオベーションを送っていたのは、岩井明愛(あきえ)・千怜(ちさと)のふたりだった。

コンテストを見守ったギャラリーも芝に座ったまま、そして他の選手も椅子に座ったままの拍手。だが、後列に座っていた岩井ツインズはすぐさま席を立ち、賞賛と興奮をまるで全身で表現していた。穴井がこぶしを突き上げて喜んでいるそばで、このふたりの姿が筆者の目に焼き付いた。

普段のプレーでも常に笑顔で、ギャラリーからの拍手には手を挙げて応えているふたり。モットーは“見ている人を笑顔にさせるプレー”だという。そのような“ギャラリーを楽しませたい”という気持ちが、自然とあふれているように見えた。スポットライトが当たる穴井のすぐそばで、一緒になってその場を盛り上げようと、そして優勝者への賛辞を精一杯表現していた。

もちろん、自身の“見せ場”でもその姿に楽しませてもらった。「みなさんに『岩井千怜は振ったら飛ぶかもしれない』と思わせたいです」と力強く宣言して臨んだ千怜は、力が入りすぎたのか1球目はややドロップ気味のミスショット。すると大げさにしゃがんで恥ずかしがってみせた。2球目も暫定トップ3に入ることができず、「あ〜!」と言わんばかりに背中をそらして笑いながら悔しがっていた。

千怜の次の打順だった明愛も「300ヤード超えを狙います」とやや冗談めいた様子で意気込むと、いきなり暫定1位となった295.0ヤードのビッグドライブ。自身でも驚いた様子で、両手を高くつき上げ、喜びを大爆発させていた。遠くからでもわかる大きなリアクションに、とびっきりの笑顔。この姿が見ている者をより一層楽しませていたことは間違いない。

プロのアスリートとしてファンを楽しませたい。そのようなプロ意識が自然と行動に表れ、実際にわたしも楽しませてもらったひとり。思わず、ふたりにスタンディングオベーションを送った。(文・笠井あかり)

<ゴルフ情報ALBA.Net>