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イ・ボミがシード喪失で韓国に帰国 今後の出場は主催者推薦のみ「引退はありません」

<ヤマハレディースオープン葛城 2日目◇1日◇葛城ゴルフ倶楽部 山名コース(静岡県)◇6590ヤード・パー72>

救済制度で今シーズン開幕戦から5試合の出場権を得て、シード復活へ最後のチャンスにトライしていたイ・ボミ(韓国)が、2日間の予選を終えてトータル11オーバーで予選落ちとなった。これで2011年に日本ツアー参戦以来、9シーズン守ってきたシード権を喪失したこととなる。

ボミが受けていた救済制度とは、コロナ禍による入国制限で出場できなかった試合を保障する特別制度。2020-21年シーズンは賞金ランキング82位と低迷していた状態だけに、5試合での一発逆転は難しかった。

「シードについては、昨シーズン最後に出場した伊藤園レディスで終わったものと思っています。シードのことよりも、自分のプレーができるように頑張りました。応援してもらいましたが、応えることができず残念です。またトライします」と、ラウンド後に語ったボミ。

12年の「ヨコハマタイヤPRGRレディスカップ」で日本ツアー初優勝。15年にはシーズン7勝を挙げ賞金女王を獲得。翌16年も5勝を挙げて2年連続で賞金女王を戴冠したが、17年の「CAT Ladies」の優勝以降は勝利から遠ざかり調子を崩していった。“スマイルキャンディ”の愛称のとおり、いつも笑顔を絶やさない愛されるキャラクターで、ボミは常に誰よりも多くのギャラリーを引き連れてラウンドをしていた。

全盛期のボミのピンを射すショットは、右に出る者がいなかった。その精度は長くバッグを担いだ清水重憲キャディが「キャリーで何ヤード打ってくださいといえば、ぴったりその距離を打ってきます」と、いっていたほど。だがいつの間にか、そのショットが影を潜めた。きっかけは連戦の疲れからだったかもしれないし、トップに立ち続けることのプレッシャーがあったのかもしれない。

盛者必衰のことわりをあらわす。ボミは平家のように驕ったわけでは決してない。懸命にスイングを取り戻そうと、トライ&エラーを繰り返し続けた。「たくさんトライして、あきらめなかったのは良かった」と、この日のラウンド後にも行っていた。「流れが悪くなると、あっちがダメこっちがダメとなって迷ってしまうのですが、トライし続けます」と、決して立ち止まることを知らない。

「日本には応援してくれる大勢のファンや背中を押してくれるスポンサーがいるし、家族も応援してくれています。本当は少ししんどいけど、頑張らなくちゃいけないという気持ちがあります。でも早く家に帰って掃除をしたいし、旦那さんにご飯をつくってあげたいです。ショットが悪くて成績が出ないと、家で明るくできないし家族に申し訳ないです」と、本音を漏らす場面もあったが、この正直さがわれわれを魅了する。

今後は主催者推薦からの出場を目指すことになるが、ひとまず韓国に戻り5月に韓国ツアーで2試合に出場する予定だという。日本ツアーは6月の「宮里藍 サントリーレディス」の出場を希望しており、「そこから数試合に出られれば」と話した。

最後に、“引退”という考えはないのか?と問いかけると「正直、きょうみたいなゴルフをしていると、早く引退したいなって思います。でも応援してくれる人たちがいるから、私があります。引退が頭の中にあると、ゴルフにはいいことがありません。韓国ツアーでは永久シードを持っているので、引退はありません。日本ツアーでも、試合に出られるかぎりトライします」と答えた。

これからもボミの姿は、日本ツアーで見られるだろう。そのとき、トライするボミの背中を大きな声援で押してあげようじゃありませんか。必ず、笑顔で返してくれるから。(文・河合昌浩)

<ゴルフ情報ALBA.Net>