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“観るゴルフ”としてのこれから【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】

女子ツアー開催への動きが、少しずつ見え始めてきている。正式発表はまだないが、前向きな話が多方面から漏れてくる。

アマチュアゴルファーの置かれた状況も変わってきた。6月に入り、我慢していたラウンドを”解禁“した人も多い。「ゴルフがしたかった」、「自然の中でのプレー、気持ちいい!」、「やっぱりゴルフはいいな」。ネット上にも、そんな声があふれている。

緊急事態宣言が出されている間、ゴルフを封印していた人も少なくない。「感染が怖い」、「移動することで感染を広げる可能性がある」、「白い目で見られそう」、「会社から止められている」、「家族に怒られる」など考え方は様々だが、いずれも我慢することを選んだ。

ゴルフを続けた人たちもいる。「ゴルフ場はソーシャルディスタンスが保てる」、「車で相乗りしなければ感染は広げない」などと、気を付けながら。ゴルフ場は、感染リスクを最小限にしながら営業したところが大半だった。緊急事態宣言が解除され、少し間を置いた6月に入り、ゴルファーもゴルフ場も様子を見ながら、少しずつ活動範囲を広げている。

リモートワークが増え、自宅にいることが増えた人の中には、ゴルフ場以外でゴルフを楽しむ様々な方法を工夫したゴルファーも多かった。パターマットを使ったり、ネットを使ったりしながら室内で練習する人は当然多かった。動画でのレッスンでイメージトレーニングをしたり、ジョギングや筋トレなどで基礎体力を維持したり。仲間とのネット飲み会やお茶会で、ゴルフの話題で盛り上がった人たちもいる。読書で改めてゴルフの良さを知った人もいる。

観るスポーツとしてのゴルフについてはどうだろうか。『Stay home』が合言葉になり、テレビやネットなどに楽しみを求める。ごく自然な流れだが、その間、世界中のツアーが開催中止に追い込まれており、ライブ映像は皆無に等しかった。ゴルフ中継が行われるはずだった時間には、過去の映像やゲストで出演した選手たちのトークなどが定番となった。日本では、選手個人や有志がSNSなどを通じてライブ映像や動画を掲載し、海外ではツアーが積極的にそれらを紹介していたところもある。

それでも“生の試合映像”に飢え始めた人は多かった。「試合が見たい」、「無観客でいいから早くやって」、「ネットだけでいいから試合流して」という声があふれた。

そんな風に多くのファンみんながライブの試合に飢えている最中に、ツアーが再開される(はず)。当面は、少なくとも無観客にはなるだろうが、パソコンやスマートフォン、テレビに釘づけになる人が多くなるのは容易に想像できる。まさにスポーツが持つ力の大きさが見られる機会でもある。

日常が理不尽に奪われる災害や戦争、今回のような疫病などに面した時、人は生きる力や勇気を与えてくれる拠り所を探したくなる。夢中になれる何か、感情移入できる相手…。“観るスポーツ”としてのゴルフも、その一つだ。待望される中、ツアーが再開された後も、その“力”が持続的に続くことこそ、ツアーがなすべきことだろう。人々に求められ、支えられること。

今回の新型コロナウイルス感染拡大と、それに伴うツアーの中断が、根本的にツアーの存在意義を考える機会となり、今後に生かすことができれば、その将来は明るいに違いない。逆に、それができず、内面だけに目が行くようでは、それまでのことになる。(文・小川淳子)

<ゴルフ情報ALBA.Net>